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選挙に行かないと選挙そのものがなくなる

はじめに

 日本の投票率が年々下がっているという。それがこちらのデータ。

https://www.soumu.go.jp/senkyo/senkyo_s/news/sonota/ritu/index.html

 総務省による投票率を集計したデータだが、近年は投票率が50%を切ることもある。
 これに危機感を覚えない人間は民主主義の仕組みを理解できていない
 今回はなぜ投票に行かなければいけないのかという理由を簡単に紹介しようと思う。

権利の上に眠る者、保護に値せず

 「権利の上に眠る者は保護に値せず」という言葉をお聞きになったことはあるだろうか。権利を持っているのにそれを使わずあぐらをかいているものはいずれそれを失効する、という意味だ。恐らく高校現代文教科書の「である」ことと「する」こと(丸山真男)、という題材を読んだことがある方はご存じだろう。

https://www.youtube.com/watch?app=desktop&v=gXdEmUcQLhc

 そこには具体例として、借金を踏み倒されている場合、時効までに法的な取り立てを行わなければ取り立てる権利すら失ってしまうというものである。

借金の時効

 唐突だが、人や資源には限りがある。一定の期限を設けない場合、極端な話有史2000年分ほどの法的案件を処理する必要が生じる。それに対して配備する人員や経費等を考慮すると、とても現実的ではないため一定の時効を設けることで安定的に案件を処理する構造が維持できる。

 すなわち、その仕組みによって設置された期限内に権利を主張しないものは仕組みから排除されることを受け入れているとみなされる。よって権利が失われる

選挙は先人が獲得した権利

選挙

 そもそも選挙とは人類史的に元より存在するものではない。王国が盛んであった時代、国政をどうするかは王族が決めることであり、民衆が口を出す余地はなかった。
 どうしても王族の体制に納得のいかない民衆が多数存在した場合、一致団結して革命が起きる。

フランス革命(1789年)

 革命とは、わかりやすく言えばその時の王族を葬り去って新たな体制を作ろうとする行動のことである。日本にもこのような歴史がある。 

日本が選挙できるようになるまでの歴史

 まず、明治時代自体が倒幕によって生まれた時代である。倒幕が起こった理由はペリー等の外国からの圧力で日本が不平等条約を結び、このままの体制だと侵略されてしまうと危惧した尊王攘夷派という勢力によって、幕府システムは終焉を迎えた(大政奉還)。

大政奉還(1867年)

 それと同時に今こそ重い腰を上げて西洋に並び立たないといけないと思った伊藤博文らが現ドイツのプロイセン憲法を参考にして大日本帝国憲法が発布される。しかしそこには、「満25歳以上の男子で、直接国税15円以上を納税している者」という条件があった。

初期の選挙(1890年)

 当時で言う15円とは、どれだけ安く見積もっても現在の15万円程度であり、相当に余裕がなければ当時の時勢的に払えるものではなかった。国に金を納めなければ政治に口出す資格はないと言わんばかりの今となっては不公平なものだった(現在は税システムの進化で実質無料)。国としても参政者からの一定の収益は期待できるため、今でいう株主総会に近いものだと言える。

 そんな中、自分も税金を払っているのに女性だから参政できないのはおかしい、楠瀬喜多が高知県に抗議。

楠瀬喜多(1836年-1920年)

 認めない高知県を尻目に内務省に意見書を提出したところアメリカのワイオミング州に次ぐ世界2番目の女性参政権が日本で初めて認められた。
 しかし、4年後に政府が男性しか投票できないようまた改定してしまう。

 その逆戻りしたスタイルを打ち倒すべく登場したのが平塚らいてうである。

平塚らいてう(1886年-1971年)

 男女不平等の社会に異を唱え、女性の権利を男性と平等にするよう運動。直接的に女性参政権の獲得に結びついたとは言えないが、女性での集会を阻む法律の改正や、女性弁護士の認可など多数の権利獲得に貢献した。

 最終的には、1945年に衆議院議員選挙法の改正により男女平等の選挙ができるようになった。

女性初の選挙(1946年)

所詮1票なんて意味がない?

 ここまで御覧いただいた方は、選挙権というものが生来的に備わっているものではなく先人が運動をして、獲得したものだということは十分ご理解いただけただろう。

 近年の若者になぜ選挙に行かないのかと聞くと「自分の1票で何が変わるんだ」と口を揃えて言う。

 しかし、選挙の本質とは、自分の1票で議席を左右することではないともうお気づきだろう。選挙に参加し、選挙権を主張すること自体が民主主義において最も重要な活動なのである。

 選挙もタダで開催されているわけではない。選挙のためだけに紙を刷ったり投票所を運営するためにバイトを雇ったりしている。

 そんな中で投票数が下がり続ければ、選挙システムに維持費をかける意味がなくなる。そうなれば選挙そのものが廃止される日が来ないとは言い切れない。

 もちろん選挙がなくなって、自分でこういう政治であってほしいと選べなくなったとしても文句を言わない人間は好きにすればいいと思う。しかし、ほとんどの国民は現状のなんとなくうまくいっている風の政治に甘えているだけである。

おわりに

 どんな積み木も崩すのは簡単だ。しかし、積み上げるのには時間がかかる。ネットニュースを見て文句を言う前に、投票に行っていない人は一刻も早く投票に行くべきではないだろうか。参政する権利を失えば、もっと文句を言いたくなることになるというのは重々承知しておいたほうがいい。

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