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#読書感想文

だれかの話

知らないことを知れば知るほど、自分は何も知らないことを知る。そしてまた知れば、自分の無知を知り、、この無限ループだ。 私は一生、「自分はぜんぜん知らない」と途方に暮れながら、知ることをやめないのだと思う。 本を読む一つの理由が、想像できる範囲を引き伸ばすことにあるので、知らないことが増えれば、比例して積読も増える。 最近読んでよかった本の感想をいくつか書きます。知らない誰かの世界を知りたくなったとき、おすすめです。 『世界はフムフムで満ちている 達人観察図鑑 』金井真

「そして誰もゆとらなくなった」

ちょっと前に読んだ、朝井リョウさんの新刊エッセイ「そして誰もゆとらなくなった」がおもしろかった。 過去二作のエッセイも外で読んだことを後悔するくらいおもしろかったのだけど(尿道カテーテルの部分は病院の待合室で読んでいたのでドキドキした)、今回も畳みかけるおもしろさよ…。何度も声を出して爆笑&によによ。 久しぶりに趣味100%の本を読めて気持ちよかった。深く呼吸できる感じ。 終始おかしみ溢れるエッセイで、基本は何も考えずにあははと読んでるのだけど、時折「確かに!」となる含

「シソンから、」

もうすでに2022年のベスト10冊に入る予感。読み始めて100ページで、高まる〜〜〜〜!となっていた。「シソンから、」チョン・セラン著。 読み終えたのは2月だけどいろいろ考えちゃって感想をうまくまとめられず、今に至ります。 ハワイとアメリカについての内容に沖縄と日本の関係が重なったり、朝鮮戦争と沖縄戦のことが重なったり。そんな沖縄もまた加害者としての側面もある…辛いけどそこも向き合わなければいけないことだと考えたり。 それでもやっぱりチョン・セランさん。 社会や歴史を見

中村文則さん3冊

去年は中村文則さんの本を読み始めた。前に少し書いたけど、ずっと作家中村文則が気になっていた。作品とご本人のギャップがとてもあると言われている人、「自分が暗いことで人に迷惑かけるのやめようと思ったんだよね」と言った人。 読んだ本は『自由思考』『何もかも憂鬱な夜に』『去年の冬、きみと別れ』の三冊。 中村さんもまた、ポジティブでは救えないネガティブを救ってくれるような作家さんだと思う。弱さを知ってなお「生きよう」と言える強さは、読む側に響く。今の世の中に中村文則さんがいてくれて

「アンダー、サンダー、テンダー」

韓国文学にハマって1年と4か月が経ちますが、ちまちま読み進めて20冊になりました。 記念すべき20冊目はチョン・セランさんの「アンダー、サンダー、テンダー」でした。わたしが韓国文学にハマるきっかけとなった1冊目「フィフティ・ピープル」もまたチョン・セラン作品なので、ささやかな節目ですが、このタイミングで読めて嬉しい。そして、この読了をもって、日本語訳されているチョン・セランさんの書籍類は読破してしまった…。嬉しいような、惜しいような。でも、二作品が翻訳中らしいのでこれまた楽

「正欲」

朝井リョウさんの「正欲」を読んだ。 今まで感じたことのない感覚になったので、感想を書こうと思う。物語の内容にがっつり触れることは書いてないけど、ネタバレ敏感な方は注意です。 前評判を聞いていたのでおそるおそる読み始めたらあっという間だった。びっくりした。読んでる間中、自分の中にあるものを掬い取って差し出されているような感覚だった。私がだれにも言ってこなかった、言っても伝わらなかったことが、文字にして目の前に立ち上がっていた。自分の中で息をひそめて煮詰めていた言葉が、本の中で

子をもつこと

韓国文学にはまっている。 欧米や他の言語と比べて日本語と似ているからか、翻訳も違和感なく読めてとてもおもしろい。(もちろん、翻訳者の技術あってこそと思います) 中でもチョン・セランさんの文章がとても好きだ。 物腰は柔らかだけれど、社会をまっすぐ見て痛みを書くことから逃げないという印象。それはとても誠実で、公平さのようなものを感じる。 そんなチョン・セランさんの文章も載っていた、「韓国フェミニズムと私たち」を読んで、子をもつことについて考えさせられた。 彼女は、世の中