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中村文則さん3冊

去年は中村文則さんの本を読み始めた。前に少し書いたけど、ずっと作家中村文則が気になっていた。作品とご本人のギャップがとてもあると言われている人、「自分が暗いことで人に迷惑かけるのやめようと思ったんだよね」と言った人。


読んだ本は『自由思考』『何もかも憂鬱な夜に』『去年の冬、きみと別れ』の三冊。

中村さんもまた、ポジティブでは救えないネガティブを救ってくれるような作家さんだと思う。弱さを知ってなお「生きよう」と言える強さは、読む側に響く。今の世の中に中村文則さんがいてくれてよかった。

読んだ三冊どれもおもしろかったので、少し感想をば。

『自由思考』
社会問題や政治について深く勉強して、それを言語化できているところがすごい。そんな中村さんが例の事件と関わりのある出版社から本を出しているのはなぜだろうと思っていたけど、理由の断片を読めた気がする。そのあたりの考えをがっつり聞いてみたいなと思った。

『何もかも憂鬱な夜に』
タイトル通り憂鬱さを感じている人、生きることにしんどさを感じている人におすすめです。
私はたまたまラッキーが重なって、犯罪に手を染めることなく、なんとか生きてここにいるんだなと思う。人間はつくづく機会不平等だ。絶望と希望どちらも濃く描かれていて、暗闇にいるときに読むと気持ちが掬われる物語。又吉さんの文章も好きなので、解説も含めて特別な一冊になりました。

あと、この本を読んでバッハの「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」を聴くようになった。クラシック聴きながら晴れた日の朝に散歩すると気持ちいいね。中でも、パイプオルガンやチェンバロの音が好みかも。伸びやかで壮大な感じ。

『去年の冬、きみと別れ』
ミステリーとしておもしろかった。出てくる人全員どこか狂っていて、ずっと狂気と気味の悪さが漂う物語だったけど、パズルのピースがぱちぱちとはまるような快感がある小説。残酷さと快感が並立しているこの感じ、自分の中の狂気も刺激されたように錯覚してしまった。おそろしい。


『教団X』や『R帝国』などの長編は、まだ勇気がでなくて手を出せていない。『掏摸』『私の消滅』を積んであるので、闇落ちしたらそちらを読もう。最近は比較的元気なので、エッセイ・韓国文学と併せて人文科学系を読んでいる。

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