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だれかの話

知らないことを知れば知るほど、自分は何も知らないことを知る。そしてまた知れば、自分の無知を知り、、この無限ループだ。

私は一生、「自分はぜんぜん知らない」と途方に暮れながら、知ることをやめないのだと思う。

本を読む一つの理由が、想像できる範囲を引き伸ばすことにあるので、知らないことが増えれば、比例して積読も増える。

最近読んでよかった本の感想をいくつか書きます。知らない誰かの世界を知りたくなったとき、おすすめです。

『世界はフムフムで満ちている 達人観察図鑑 』金井真紀

こんなにも読みやすく滋味深い文章にはなかなか出会えない。矜持のような、信念のような、心意気のような、時には悟りのようなそれに触れたとき、なぜか泣きたくなる。

無意識のうちに、そこに辿り着くまでの道を見てしまうからかもしれない。


『とりあえずお湯わかせ』柚木麻子

今よりもっと社会構造を知らないころは、いろんな問題を自分のせいだと思っていたし、他人に関しても不用意な干渉をして傷つけていたなと思う。

「次の世代はいつの時代も前の世代よりずっと優れている」とあるように、私たちは間違った価値観を浴びて育ってきたけど、次へ持ち越さないことはできる。

自分の今世の課題は"適切に"怒ること。
いつか、すっと立ち上がって「そんな質問、答えなくていいよ。」と言える人間になりたい。

コロナはそれぞれの辛さがあるね。
何が正しいのか私にはわからない。
ただえさえ、生きてたらしんどい瞬間もくる。
そんなときはお湯をわかそう。

『「米留組」と沖縄 米軍統治下のアメリカ留学 』山里絹子

読んで本当によかった。学術書と思って読み始めたけど、読みやすいし、得られるものは学術的な情報だけじゃない。同世代におすすめしたい一冊。

ライフヒストリーを聞くと、読むと、私が生まれる前の出来事と今の自分は地続きという当たり前のことをしひしひと感じる。

そして、時代の波を乗り越えてきた人たちの話は、殺伐とした今を生きる上で、勇気をもらえる。


『水上バス浅草行き』岡本真帆

岡本さんの短歌は初めて読んだ。
短歌はいい。短い言葉で、頭の中にぐんっとイメージが広がる。

短歌はもちろん、章のタイトルとそこに収録された短歌の結びつきを見ると、また違う感覚を味わえるのも楽しみのひとつ。味変みたいに二度美味しい。

例えば「こんにちはーいちおう声をかけてから土足で部屋に押し入っていく」の章タイトルは「無垢」、「レントゲンには写らないものだけど君のたましいそのものだった」はタイトルが「ポニーテール」などなど。

歌集は、会ったことない作者の多彩な断片がぎゅっと凝縮されていて、尊さすら感じる。


自己啓発本やハウツー本を読むよりも、それ以外の本を読んで、誰かの経験や知見、物語から答えに辿り着くほうが性に合っているし、心地いい。

ゆらゆら揺られて、考えたり、時には立ち止まりながら。そして、時間をかけて得た答えは、より深みをもって感じる。

最近はフィクションを読む体力がない。
年末休みには久しぶりに小説読もうかな。

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