劇場入場ルールに関するTwitter投稿 その後(2) ~コメントに回答してみました~
この記事は2019年4月11日「劇場入場ルールに関するTwitter投稿」の後に想ったこと・感じたことを書いています。
話の流れをご存じない方はまずこちらをご覧ください。
BuzzFeedNews
城田優の“神対応“が世界を変えた。車椅子のファンの願いにとった行動とは…
https://www.buzzfeed.com/jp/reonahisamatsu/shirotayu-pipin
ウォーカープラス
城田優、「全ての方が平等に…」SNSで訴え、出演舞台の「車いすヘルパー入場不可」を覆す
https://www.walkerplus.com/article/187203/
元ツイ
https://twitter.com/calinosa/status/1116305279014989824
城田優さんのツイ
https://twitter.com/U_and_YOU/status/1117663331563655168
https://twitter.com/U_and_YOU/status/1118526475475357699
私のTwitterへの投稿が広がり劇場入場ルールの変化に繋がった話が記事になり、Twitter以外でもコメントが寄せられています。
いくつか気になったコメントに回答してみました。
ただしあくまでも私のケース、演劇のケースに限ります。
Twitterにも投稿しましたが、一口に障害者といっても人それぞれ皆違います。
また演劇とコンサート、その規模によっても違います。
ですから狭い範囲でのお答えであって、私が障害者を代表しているわけではないことをあらかじめお断りしておきます。
◆なぜ現場に相談せずSNSに頼ろうとするんですか?◆
相談窓口がなかったんです。
窓口は電話オペレーターだから、その方にいくら説明しても仕方がないので相談できる部署はないかと尋ねました。
残念ながらそれもなかったのでやむを得ずSNSを使いました。
◆介助者がタダで観られるってこと?◆
残念ながら記事をきちんと読めてない方がわりといらっしゃいました。
様々なケースを想定しており、表現があいまいにならざるを得ないため、斜め読みされた方がいらしたのでしょう。
現在までのところ、入退場及び休憩時間のみ「会場」に入れます。
「会場」とは客席、ロビーを含めた劇場全体です。物販エリア、お手洗いなども含まれますから、会場のお手洗いだけ介助者に手伝ってもらいたい場合であってもチケットが必要だったわけです。
当然立ち見もできません。
ただ個々のケースによりけりですので、場合によっては「ロビーはOK」ということもあるかと思います。いずれにしてもチケットのない介助者は観劇することはできません。
◆介助が必要な状態の人なんだから観劇中に介助者必要でしょう?◆
これは人によって違います。常に介助が必要な人、あるいは自身が心配だから傍にいて欲しい人などは今のところチケットが必要です。
私の場合、席(車椅子スペースor自席)につきさえすれば何もしてもらうことはないのです。発作もないし、それなりの準備をしますから困ることはありません。一人で不安ということもないです。
こういったことは障害者当事者やご家族、ヘルパーさんなど関わった人でないとわからないことかもしれませんが、介助者が必要だからといって生活の全てに介助が必要なわけではないんです。
◆本人が観劇している間、介助者が待ちぼうけでかわいそう◆
私と介助者との間の取り決めですので、それは問題ありません。
観劇に限らず、出先で用事を済ませている最中に待っていていただく場面は多々あります。
たとえばコスメカウンターで接客していただいているとき介助はいらないんです。むしろ一人でのんびり気兼ねなくお買い物がしたい。それと同じです。
◆「悪用」について◆
今回のルール変更に関して悪用はできません。
何故なら観劇する場合は介助者であってもチケットが必要だからです。
演劇の場合規模にもよりますが、私が行くようなものは全席指定です。
介助者のふりして隣の座席に着席することは不可能です。
車椅子スペースの隣にパイプ椅子を置く場合、これは先のルールによってチケットが必要です。
では車椅子のふりをしてあるいは障碍者手帳を偽造して、これは全く意味がありません。
特別に良い席なんてことはないですし、特別に出演者から何かをしてもらうこともないからです。
◆何かがあったらどうする?◆
「何か」というのは火災・事故・災害・発作等の急変などが考えられるでしょうか。
私の中でルールというほどではないけれど決めていることがあります。
最前列でない限り、一人で観劇するときは車椅子スペースを使おう、誰か一緒の時は場所によって席に座ろうと思っています。
それは緊急時できる限りスムーズに退場できるように考えたことです。
車椅子申請をする際にオペレーターから「万一の避難の際に立てますか?」と尋ねられます。おそらくそれによって誘導の仕方が変わるのだろうと思います。
では有り難いことに最前列が取れて座ったとしましょう、当然リスクは高くなります。
私自身はそれは自己責任で良いと思っています。これは人それぞれ考え方があるかもしれませんが、公演側が最大限できることをしてくださった上での万一のことならば、それは仕方がないと思っています。
好きな人を、好きな作品を観て死ねるなら本望だ!(笑)
そして、それを誰かのせいにするつもりはありません。
その人の身体状況に合わせて、何が一人ででき、何ができないかはまちまちなんです。
仮に障害を持つ方が「防災上付き添いについてもらわないと困るから入れて欲しい」と言ってきた場合、運営側でそれは断れないのではないかという意見がありました。
この場合はチケットが必要です。
また急変の可能性がある人は付き添いがつくべきでしょう。
つまり私自身は「覚悟の上」であって、それは私の選択、誰に責任を持たせるわけではないということなんです。
◆「申請の手間が面倒」って言うのは横柄ではないか?◆
そんなことは一言も言ってないです(笑)
車椅子で観劇をする時の手順を述べただけのことです。
「先に連絡しておくって"常識"でしょ」っておっしゃるコメントを時々他所でみかけます。
"常識"って誰が決めたのかな、"常識"って一人一人違うものではないかな。
そして申請は「決まっている」わけでも「強制されている」わけでもないのです。
私の場合、時間に余裕があまりありません。
電車に乗るまでにかなり待たされることは普通ですし、乗り換えも遠回りをしなくてはならない、お手洗いにも時間がかかる、そんな中で自分の目的を達成し、ヘルパーさんをお返ししなくてはなりません。
だから当日の時間的ロスを防ぐためには事前にお知らせしておいた方がスムーズに事が運ぶんです。
でも本来は誰がどんなところへいつ出掛けても対応がとれるというのが理想なんです。
◆介助者分のチケット買えば済む話なんじゃないの?◆
これも記事に書いてあるんですが、演劇のチケットは最低でも5千円、高い席は1万5千円くらいします。目安的には1万3千円くらい。
私の場合はこれを3人分用意しなくてはなりません。働いていますが、経済的負担は大きいですし、2名以上のチケットが取れない公演もあります。
それなら3人分出す代わりに2回、3回と観に行きたい。
というと、そんなのわがままだ、出せないなら1回でいいじゃないかと言う人がいるんですよね(笑)
「私も車椅子だけど私ならチケット代を出す」というご意見もありました。
でももう一歩考えてみてください。私がそれをできたとしても、必ずしも皆が2名3名分のチケット代を出せるわけではないのですよ。
もし1人分のチケット代なら出せて、1人で観劇できるという人が他にもいるとしたら、このルール変更はとても画期的なことではないでしょうか。
◆総括すると◆
未だに「障害者とはこうあるべきもの」という意識が人々の間にあるのも感じました。
人に迷惑をかけるんだから控える「べき」、黙ってルールに従う「べき」、1人でできないんだから諦める「べき」…
そういう人達ってたぶん当事者ではないし、当事者であっても私のような障害者を「わがままな人」と捉えているのかなという気がします。
今は障害者であろうとなかろうと、選択肢の中から自分で決めて自分で責任を持つ時代です。そして誰にとっても選択肢は多くあるべきです。
この殺伐とした時代に障害者が声を上げると、「健常者の権利が侵される」とか「障害者様」とかバッシングを受けがちです。
買ってきた商品が使いにくく改善してほしいと企業に要望を出すように、実際にその商品を使う消費者が声を上げて企業に改善してもらう、今はそういう時代です。
それで不便がひとつでもなくなるなら、そこに障害があるとかないとかは関係がないと思うんです。
今回、入場ルールが変更されたことで、劇場に行ってみようかなと思ってくださる方、行ってみたら快適だった、また次も行ってみたいなと思ってくださる人が一人でも増えれば本当に嬉しい。
それが最終的な私の願いです。
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