スターリンと綿花栽培-生物多様性とエコシステムの重要性
生物多様性-アラル海の悲劇
今私が読み進めているBiodiersity (バイオダイバシティ)の本の中に、
カザフスタンとウズベキスタンにまたがる塩湖アラル海についての話が出てきます。この塩湖は1960年代まで生命に満ち溢れた湖で、その周辺では人間が豊かな社会文化を築いていたと記されています。過去には世界第4位の湖として多くの命を育んできた場所が、なぜ半世紀という時をかけて5分の1にまで縮小してしまったのでしょうか?
元ソ連最高指導者スターリンとエコシステムの関係とは?
1940年代にソビエト連邦は自然改造計画のもと綿花栽培のために大規模な灌漑(かんがい)用水路の計画を企てます。
この決断を下した人物こそが元ソ連最高指導者スターリンだったと言うのですから驚きですよね。
あのスターリンと農業なんて接点が全くないように思えますから。
環境破壊のはじまり
アラル海はウズベキスタンとカザフスタンに流れるアムダリア川とシルダリア川を水源にした湖。アラル海に水が流れる前に2つの河川の付近に灌漑(かんがい)用水を作ることで、大規模な綿花や稲作栽培を
益々発展させていったのです。
実は農業用水として価値の低い塩湖アラル海は最初から消滅することが織り込み済みだったと言うことなんですね。
こうしてアラル海のエコシムテム崩壊と引き換えに、ウズベキスタンの綿花の生産量は増大し、華々しく共産主義の強みを西洋文化や遊牧社会に示すカタチになったのです。
そしてアラル海周辺の風土や自然環境を無視した“スターリンの決断”による灌漑水路の計画は、
結果的に塩害の進行と共に放棄せざるを得なくなりました。
たかが湖、されど湖。
失ったものがあまりにも大きすぎます。
国の繁栄と共に完全に破壊された生物多様性、一度失ったエコシステムは
そうは簡単に復元できません。
「アラル海はむしろ美しく死ぬべきである」と言う俄かに信じがたい非科学的な神話が一部で信じられてきたようですが、
どの時代においても自然界を脅威におとしめているのは、我々人間界における軍事的、政治的、イデオロギー的な側面が抱える問題そのものとも言えるのです。
土地と風土を脅かさない素材選び-綿花の問題点
さて最後にタイトルでもお伝えした、綿花(コットン)に少し触れてみたいのですが、現在はオーガニック綿花などサスティナブルを意識したテキスタイルもかなり増えてきています。
けれども綿花の栽培には通常大量の水が使われているのも事実。
そしてオーガニックコットンが世界の全綿花生産量に占める割合は
なんと1%以下と言われています。
この現状を踏まえた上で、自分が選ぶ服の素材がどんな物から出来ているのか?関心を持つ良い機会だと私は思っています。
また循環型繊維や麻を普段着に取り入れてみたり、そもそも服を買う回数を大幅に減らすなど、
ファッションやコスメの製造にかかる水の量にも意識を向けてみると、本当に様々なエシカルな風景(企業体質など)が垣間見えます。
「安くても高見え」はそこに何も学びの哲学がありませんが、
ブランドバリュー(ハイブランドなど)以外のところで正直に「素材勝負」で高い服を作るメーカーさんや個人を、これからはもっと応援していくべきなんじゃないかなと思うのは私だけでしょうか?
生物多様性とは人間を含めた命あるもの全てが、
バランスよく直接的、間接的に支え合う世界を意味します。
ですから人間活動が活発になるにつれ、何かが誰かの犠牲になるのは本来おかしいことなのです。
また私自身が自然環境とエコシステムを積極的に学ぶ意味は、
こうしてみなさんに必要な情報を共有できるエコ活動の一部でもあります。
今回の記事がどなたかの気づきになれば嬉しいです。
グレイス
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