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日課(短編小説)


今日はどうしてだろうか、上手くいかないことが続いて心が乱れていたからだろうか、どうも調子が悪かった。

どれだけ力を込めて振っても振り抜いても、掠れた高い音をあげてボールは後ろへ飛んだ。
もしくは低く鈍い音を出して、ボテボテと左へ転がるだけだ。

仕事にプライベートまで上手くいってないと、こんなところまでダメになるのか。

電光掲示板に移る男は、無表情なまま淡々とボールを放るだけだ。
こんな機会にまで舐められているのかと、なぜかムキになってしまった。

だから、少し挑発をしてみたくなったのだ。
左腕を前に突き出し、バットの先を無機質なピッチャーに向けた。

「気合い入ってんじゃんかよ」

俺の言葉ではなかった。
バットを構えたとき、いつも無表情な機械ピッチャーの口角が上がっているように見えた。

ワインドアップモーションから振り上げられた左脚は、いつもより大きく折りたたまれている。

くる。今までとは比べものにならない玉が。

ガガン___ベタン___!!

力強く振り抜いたバットは無情にも空を切って、硬いゴムマットの音が響いた。

バットを置いて、ジャケットを羽織ったところで、また声がした。

「口ほどにもねぇな。そんなもんか?」
「だまれ。明日みとけやこのやろ」

俺はもう何も映っていない電子版に笑いかけた。


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