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音楽室の記憶

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#恋愛

音楽室の記憶 前編(短編小説)

音楽室の記憶 前編(短編小説)

高校2年生という食べ盛りの時期だというのに、リョウの昼食は購買部で販売されているメロンパン1つだけだった。
昼休みには混み合う購買部に、リョウは朝礼前に立ち寄る。

昼休みの頃にはスクールバックで少し潰れて柔らかくなっているメロンパンの封を、クライスメイトと談笑しながらも素早く開き、どうにか焦っている素振りを見せずに急いで口へ運んでいく。
男子高生の会話などあってもなくても同じようなものばかりで、

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音楽室の記憶 後編(短編小説)

音楽室の記憶 後編(短編小説)

扉の明かり窓から中を覗くと、教卓前のグランドピアノの屋根が開かれていて、その隙間から微かに揺れる頭が見える。
防音扉であっても微かに漏れ出る音色にリョウは確信を持って重たい扉をゆっくりと開けた。

音楽室に入っても、その音色でリョウが出した雑音は上塗りされ、譜面台に視線を集中させる演奏者の女性は彼に気づいていない。

リョウは何も言わずに入り口に1番近い生徒用の椅子に腰掛け、奏でられる音色に身をを

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