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ショートステイ利用のすすめ|前編【障がいのある子のショートステイってなに?どんなときに利用できるの?】


こんにちは。子ども運動教室LUMO(ルーモ)の後藤です。

夏休みの前後は、林間学校や修学旅行など、お泊りを伴う行事が多いですね。今年は、ほとんどの自治体や学校で、コロナ禍以前の実施形態に戻ったようです。

子どもたちの楽しい行事にも、心配や不安を感じる方は多いようです。
「うちの子、一人で平気?」「家族と離れて泊まった経験はないんだけど…」など、障がいのあるお子さんのママパパからご相談いただくこともあります。

そんな方は、ショートステイ(短期入所)でお泊りの練習をしてみてはいかがでしょうか?何らかの障がいのあるお子さんこそ、少し長いスパンで経験を重ねることが大切です。


ショートステイ(短期入所)って何?

ショートステイ(短期入所)と聞いても、
「高齢者のサービスでしょ?」
「“ショート”と付くから、短時間の預かりサービスなのかな?」
など、イメージのできない方がほとんどかもしれませんね。

ショートステイ(短期入所)とは、障害者総合支援法に基づいたサービスで、障がい者支援施設や児童福祉施設に短期間“お泊り”し、食事や入浴、排泄など、ご本人が必要とする支援を受けることができるサービスです。

ショートステイ(短期入所)を利用するためには、「障害福祉サービス受給者証」(いわゆる受給者証)が必要です。受給者証をお持ちであれば、「短期入所」の給付申請などは必要ですが、ショートステイを利用できるかもれません。

※自治体や施設によって利用できる条件が異なるので、詳細は各自治体や利用したい施設へおたずねください。

「ママパパも元気だし、家で生活できているから必要ない」と思っている方や、お子さんを預けることにためらいのある方も多いことでしょう。

確かに、ショートステイを利用しなくても、いますぐに困ることはないかもしれません。しかし私は「お子さんの将来の可能性を広げるため」という視点から、ショートステイの利用をすすめたいのです。

どんなときに利用できる? ショートステイのケースと実態。

ショートステイを利用する背景には、いくつかのパターンがあります。主なシーンは以下です。

①緊急事態
:ご家族の急な病気や入院、出産、冠婚葬祭などで一時的に養育が困難

②レスパイト
:ご家族のレスパイト(心身の休息)のため、一時的または定期利用したい


しかし、急な利用は本人の負担です。“将来への備え”という目的で利用することもできます。

③宿泊学習
:自然学校や修学旅行などに参加する準備

④“もしも”の備え
:①のような状況にむけて家族と離れての生活や対象施設に慣れる準備

⑤“いつか”の備え
:自立した生活を送るための練習(一人暮らしやグループホームでの生活)

このように、ショートステイの利用には、将来にむけた切実なニーズがあることがわかります。では、利用施設の現状はどうなっているのでしょうか?

実際のところ、身体障がいを有する方をはじめ、子どもを預かる施設、さらには医療的ケアが受けられる環境がある医療型ショートステイについても施設数はまだまだ少ない状況です。

LUMO富松校のある尼崎市を例にしてみましょう。「尼崎市障害福祉計画(案)と障害者計画の進み具合」によれば、福祉サービス全体における子どもの利用者数は2023年で2,620人です。

そして、短期入所の事業所は25か所。うち児童が利用できる施設は20か所、身体障がいのある方が利用できる施設は16か所です(尼崎市HP「障害福祉サービス等指定事業所等一覧表」)。

上記のような事業所では、一日に利用できる人数は6~12名程度と決まっています。そもそもの受け入れ数が多いとは言えないなか、個々に異なるニーズをカバーしようとすれば、いっそうの難しさがあるでしょう。

それでも、ショートステイをすすめたい理由。

それでも私は、ショートステイをすすめたいと思います。それは、お子さまとご家族にとって「“いま”の負担を軽減するため」そして、「“将来”の不安を軽減し、可能性や選択肢を広げるため」です。

お子さんを一人でお泊りさせることには不安が伴います。まだ幼い、あるいは特性があるお子さん本人にとってはもちろん、送り出すママやパパにも大変なチャレンジですよね。以前勤務したショートステイの実施事業所では、主にこういった相談がありました。

「一人で眠れるかな?」
「環境の変化に弱いんだけど…」
「偏食がひどいけれど大丈夫?」
「職員やほかの子に迷惑をかけないかな?」

また、ご利用経験のあるご家族からは、「本人に合った施設を探すのに苦労した」「緊急時に初めてショートステイを利用したが、本人のストレスも大きかった」という感想をお聞きしました。

だからこそ、「うちの子にはまだまだ先」とお思いの方も多いと思います。しかし、「親なきあと問題」について、不安を感じない方はいないでしょう。

最近では、「8050問題」という言葉を耳にするようになりました。親が80代、お子さんが50代になっても、親がお子さんの生活をサポートし続ける状態を指します。社会問題化している老老介護のかたちも、障がいをもつ子の家庭では、逆転化しているのです。

ご家族との面談では以下の4点のお悩みや不安が多く聞かれます。

・生活の場をどうするか
・金銭面をどうするか
・困ったときに誰に助けてもらうのか、その相手はいるのか
・本人の気持ちはどうか

これらはどれも、優先順位をつけがたい問題です。方々への手続きさえすれば解決、とはいきません。

しかし私は特に、「本人の気持ちの準備」に焦点を当てたいと思います。その理由は、お子さんの人生が豊かであってほしいと願うご家族の思いに触れたことが一つ。もう一つは、前職で出会った20代や30代といった当事者の方の本音をお聞きしたからです。

「ずっと家族と住みたい。親と離れるなんて考えたことがない」
「友だちとなら一緒に暮らしたい」
「一人暮らしにあこがれはあるけれど、自信がない」
「親からいつかは離れて暮らすと言われたけれど、絶対いやだ」

将来的に「一人暮らしは難しいから」とグループホームや施設入所を検討する可能性もあります。その際、家族と離れてのお泊りに慣れていれば、ご本人がすんなり納得してくれるケースもあります。

お泊りの練習をきっかけに、将来の選択肢、可能性を増やすという意味合いも含め、ショートステイの利用をぜひ検討してみてください。

次回の後編では、私が実際に前職のショートステイで出会ったお子さんのケースをお伝えし、「ショートステイをより良くする方法」について考えていきます。

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