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誠実な太陽

「おくりもののうた」3曲目はずっと夫の顔色を伺いながら暮らしてきました。
という女性からのエピソード。

ドロドロした感情も否定せず、弱った心を援護してもらいながら自分の光で自分を癒すような涙が流せる歌を自分に贈りたいというメッセージをいただきました。

※はじめ送っていただいていたものがかなり踏み込んだものだったため、その文面から曲を作りましたが、エピソードの公開内容をご本人との相談のもと決めさせていただきました。

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エピソード

とてつもない理不尽を前に涙を流しました。

ここは俺の家だ。俺の名義だ。誰が食わせてやっているのか。あなたの稼ぎは俺より少ない。文句があるなら子どもを連れて出ていけ!

そんなセリフは家長なんだし当たり前だと思っていました。
育児も家事もほぼワンオペでしたが、日ごろ子どもたちと長く過ごすのは私だし、外で働いてきてくれるんだから…と思ってきました。
愚痴を聞いてもらった友に「その考えはおかしいよ」と何度も諭されても、「私の選んだ道だから…」と、ヌルッと元の生活に戻る。

とある事件をきっかけに「貴女はモラハラを受けています。麻痺しています。今すぐ逃げてください!」と周囲に言われ、友の言葉や、夫がいわゆる「ソフトモラ」であったことをやっと理解でき、子どもたちを連れて逃げるように家を出ました。
その時になって目が覚めたように、私はずっと夫が怖かったんだなと気が付きました。
第三者を挟んだ話し合いの場では私の思いは上手く届かず、夫の子どもたちへの誠意も感じられない。
あの人も必死に自分を守っているのだろうと頭で解っていても、理不尽さで息苦しく吐き気をもよおし身体が震えるのを必死に拳を握って押し殺していました。

こらえきれずに拳に涙が落ちる。

泣いても何一つ変わらずそこには理不尽があるだけ。
そして魂が抜けたような脱力と疲労を感じ、
ドロドロした感情は熱を増しました。
こんな涙は、初めて体験しました。

恨みとか悲しいとか怒りとか、そんな言葉がしっくり来ないドロドロした感情は、マグマのようで。
あの人にだけ向けられているんじゃなく、あの人を選んだ自分にも向けられてる

離れれば無くなる感情ではなく、
自分で癒して行かなきゃと思ってはいても、今はまだ苦しくて飲み込まれそうで。
私はかつて、とある男性と一度だけ不貞行為をしました。

結婚、出産、家の購入、2人目の出産を経て。
思えばその辺から夫のモラハラは強くなって行きました。

夜のお誘いも、子育てに疲れたり体調に関わらず、私の準備は整っていないのに私の体を使って性欲を処理する。
喧嘩や言い争いの後も決まってそうする。
激痛と虚しさを隠して笑う。
夜になるのが怖かった。

愛されていない。夫が愛しいのは自分だけだ…
そう思ってしまう心を「自分が至らないからだ。愛嬌がないからだ。優しくすれば優しさで帰ってくる。」
そう言い聞かせて暮らしていました。
でも愛されたかった。壊れ物のように大切に触れられたかった。

今となってはもう言い訳で、今の自分ならなんて馬鹿なことをしたんだと思えるのですが、
あの時の私には自分の心を守る最善の選択に思えた。
そして、そんなことをしても心の穴は埋まらないんだと痛いほど知った。

それは夫の知るところとなり、お酒を飲んだ夫に心も身体も乱暴に責められる。

私はダメなやつだ。
私は罪人だ。
裏切り者だ。
自業自得。
当然の報いだ。
至らぬ嫁だ。

ずっと自分を嫌って生きてきました。

怖いと思う心にフタをするというのは、自分も人も大切にできない。後に家を出てからそう気が付きました。
繰り返される話し合いの中ではもちろん、かつての私の不貞行為についても鋭くついてきました。

事前に相談をした方に、何も証拠がないならしらばっくれなさい。やってないと言いなさい。
と言われました。でも、それはできなかった。
自分のしたことはキチンと認めることが、夫に対して誠実であることだと思った。
それと同時に、自分にも誠実であることだと思った。

この結婚生活は、いい事ばかりではなかった。
でも腐らずに、笑顔を 感謝を 忘れずに居たいと思ってきた。
この家の太陽で居たいと。

そしてこの結婚を終わらせることは、自分の選んだ人を、自分の選んだ道を、授かった息子たちを、否定することになるんじゃないかと思っていた。

意地を張っていたんです。

逃げることは卑怯なことじゃない。
逃げた方向を正解にする覚悟で逆の方向へ攻める。

そんな後藤大さんの言葉や生き方に、勇気を貰いながら今があります。

今の自分は、あの人も影響している。
でも今の自分を、私は気に入っている。
だから、あの人を恨んだり憎んだりするのはなんだかしっくり来ない。
あの人にも、これからの自分を幸せにして行って欲しいと思う気持ちも本当。
でも、このドロドロした感情は気持ちのいい感情じゃない。

わからないのか、わかりたくないのか、苦しくても今は静かに内包している感覚です。

このドロドロした感情も受け入れて、
未熟者なりに、未来の自分に誇れるように毎日を丁寧に生きていきたい。

マグマの様なドロドロの涙で
瞼の裏が灼き爛れていく

ダンボール詰めのダッチワイフ
お届け先は理不尽の処理場
湯船で溺れて息ができない
Fragile Fragile Fragile

裏切りの夜駆け抜けて
刃物で出来た影を振り切れ
罪人よ腐らず笑え
選んだ行末 夜明けで照らせ
誠実な太陽

絶対零度の激痛の後に
躰を射抜く乱暴な虚しさ

あなた名義なら What’s my life?
朧気な出口なら So dungeon
悲しみの中で倫理の審議は
Fragile Fragile Fragile

偽りの愛脱ぎ捨てて
茨だらけの道へ踏み込め
不細工な意地はいらない
強く助走をつけて 明日天気に
信じていたいよ

裏切りの夜駆け抜けて
刃物で出来た影を振り切れ
罪人よ腐らず笑え
選んだ行末 夜明けで照らせ

暁の空 駆け上がれ
茨だらけの道へ踏み込め
不細工な意地はいらない
強く助走をつけて 明日天気に
信じていたいよ 誠実な太陽

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