見出し画像

日記 12/6~12 2021

6日。
スタジオでひとり作業。映画『Get Back』でウダウダするメンバーに向かって、ポール・マッカートニーが「僕は仕切りたいわけじゃないし、君たちを責め立ててるわけじゃない」と言っていた。頚椎が軋むほど肯いた。I Me Mineの場面ではジョージが憂鬱そうだった。齟齬の連続、孤独との対話。ふと足元に目をやると何かが動く。百足!ギャー!!この密室にどうやって入り込んだのか。恐ろしい。

7日。
ライブのリハーサル。ギターを弾くのは楽しい。曲が良いと尚更。そのあとはD-RADIOの収録。誰にも責められず、誰も責めずに話し合うことができるのは、とても素敵なことだと思う。吊し上げることが目的ではなく、話し合いのなかから、自分が鮮やかに更新されるような瞬間を見つけること。自分が変わってしまう可能性を否定するならば、それは対話というよりは対決だろう。柔らかくありたい。

8日。
Moment Joonのワンマンライブに参加。素晴らしい時間だった。何かを続ける動機は、本人が見つける以外にない。こればっかりは、どんなに仲が良い友人でも、その人が大好きでも、用意することができない。だから「やめないで」とは言えなかった。自分にも引退を決意する日が来るだろうか。彼の新しいアルバムを楽しみに待つ。その先に、続けるための新しい動機が彼を待っていることを願う。

9日。
AKGの新作のレコーディング。スタジオに置いてあったレコーディング機材の雑誌のプライベートスタジオ特集を見ながら、「うわぁ、凄いこだわりだなぁ」「こんな機材を持ってて凄いなぁ」と独りごちていると、『凍った脳みそ』でお馴染みのエンジニアKがやってきて、「ゴッチさんのほうが大概ですよ」と笑われた。ふと我に返り、思いを巡らして、自分が深い機材沼の底にいることに気がついた。

10日。
レコーディング。バンド結成25周年という節目にあって、音源制作は順調そのもの。しかし、順調でないこともたくさんある。なかなか上手くいかないこと、先送りにしてきた些細な掛け違えが、表面化していることもある。すべてをひっくるめて、バンドの歴史であり、人生なんだと思う。ただひとつ言えるのは、関わっている人たちに幸せになってほしいということだ。ポジティブな筋道だと考える。

11日。
スーパーでカワハギのお刺身を買ってきた直後に、のはら農研塾の野原さんから鮮魚が届いた。よって、巨大なお刺身の盛り合わせが完成し、大名のような夕食になった。天草のウニが抜群に美味しかった。ボイルされた烏賊も最高。自然と切り離された暮らしをして久しい。時折、こうして自然の恵みを口にして、ある種の人間らしさを回復する。滅多に食べられないご馳走。ありがたや、ありがたや。

12日。
毎年恒例のoid年間ベストの記事用に、今年聴いた音楽を振り返った。アルバム単位ではじっくり鑑賞する時間が足りなかったと感じる。創作をしているときは、作ったものを聴きかえすことに耳を奪われる。当たり前だけれど、「ながら聞き」ができない。一年の間に発表される音楽を網羅することは不可能だ。けれども、年末に、今年何がよかったんだろうと振り返る時間はとても楽しい。