映像制作って楽曲制作とよく似てる!?
プロ御用達のPremiere ProやDaVinci Resolveからアマチュアの方にも人気のiMovieやFilmoraまで動画編集ソフトの教則本は色々あれど、映像制作の進め方や考え方を説明した、書物や記事って意外と少ないもの。
おそらくクリエイターごとにそれぞれ独自の進め方やノウハウがあって統一的にまとめづらいからではないでしょうか。また作る映像作品のジャンルによってワークフローって変わってくるのでそこも理由かもしれません。
いかがお過ごしでしょうか。ぐっでぃテレビのモーリーです。
私自身、音楽が好きで、学生時代は気の合う仲間と趣味で音楽活動をしていたこともあり、映像制作のワークフローって曲作りのワークフローとよく似ているんじゃないのってよく思います。
曲作りで、曲先(きょくせん:曲を先に作って、その曲に合わせて歌詞を作る方法)、詩先(しせん:歌詞を先に作って、詩のイメージから曲を作る方法)という言葉があります。
どちらの方法で作っても、素敵な曲が出来ればOKですし、両者とも名曲があります。曲先が得意な方もいれば、詩先が得意な方もいると思います。
(ちなみに趣味の範疇ですが、私が音楽をしていた時は100%曲先で作曲をしていました。)
映像制作も曲作りと同じように色々な考え方で色々な作り方があると思います。
今回は意外と知られていない、映像制作における私なりのワークフローを紹介したいと思います。映像クリエイターごとに、それぞれ十人十色のやり方や考え方があると思いますので、私の考え方やワークフローが全てではありませんが、こんな感じで映像を作っているんだぁって少しでも映像制作の考え方や流れを感じて頂けましたら幸いです。
映像制作は楽曲制作と似ている!!
冒頭でもお話ししましたが映像制作って楽曲制作と共通した部分が結構あると思います。
楽曲制作の場合、まずは作りたい曲のテイストを決めて、ギターやピアノのコードに合わせメロディを作り、その後ドラムやギター、ベース、キーボードなどの楽器を組み合わせて編曲を行うといった流れです。
ちなみに私が友人たちとバンドをしていた頃の曲の作る流れはこんな感じ。
楽曲制作の流れ(趣味レベルですが私の場合のワークフロー)
⓪曲の分析
曲作りをするにおいて、日ごろから色々な聴きまくりコード進行やメロディラインを分析していました。
そしてどういう構成で様々な曲が成り立っているか可視化します。(私は譜面を書いたり読んだりする力が低かったので、Aメロ、Bメロ、Cメロ・・・と曲の構成とコード進行をメモり曲の構造を可視化していました。)
人によっては『芸術系に勉強(分析)なんて感性を凝り固めるだけで、必要ない』って考えられる方もおられますが、分析して構造を知ることで、『この部分がこうなっているから心地よく聴こえるのかぁ』など自分が良いと思う部分の理由が分かるので、私は絶対プラスになると思っています。
①テイスト設定
「景気のいいドライブ感のあるライブのオープニングナンバーを作ろうぜ!!」「冬に聴きたい暖かめのミディアムテンポなバラードを作ろう!!」といった感じでまずは作りたい曲のイメージやその曲を演奏したいシチュエーションを想像しながらをテイストを膨らませます。
②メロディやコード進行など曲のアウトラインづくり
私の場合、作った曲の8割くらいはギターで作っていましたので、ギターを弾きながら、訳のわからない鼻歌英語で曲の輪郭を作っていきます。
リフを全面的に出した曲の場合、この段階でリフもある程度作ってました。
③ドラム・ベースパートでリズムの土台を作る
メロディやコード進行が出来たら最初は単純なドラムパターンに合わせて曲全体のリズムスタイルを決めます。
私の場合、最初は単純な8ビートや16ビートを当て込んでおいて、その後ベースパートを作っていました。ベースパートがある程度できたら、再度ドラムパートに戻って、フィル(おかず)を色々入れたり、一部リズムを変えてみたりしてリズムを色付けしていきます。
④ギターやキーボードパートで色付け
③までで曲の方向性は結構固まっているので、あとは曲のデコレーションとなるギターやキーボードパートを作ります。ピアノやキーボードがメインの曲の場合③の段階で、キーボードパートはある程度作っていますが、そうでない場合は、この段階で作ります。
私の場合、キーボードの演奏スキルが高くなかったのでどちらかというとリズム楽器としてキーボードを使うことが多かったです。(ギターでリズムを刻むようにキーボードでリズムを刻むことが多かった。)
リフやリズムギター的なギターパートは③の段階である程度方向性が決まっているのでここでは、味付け的なギターとソロパートが中心です。私はリードギターを担当していたので、ソロパートをギターを使ってボーカルのように歌わせてもらえる部分として作っていました。
楽曲制作の場合⓪が基礎研究、①がアイディア出し、②が作曲、③・④が編曲
私の場合曲作りはざっくりとこんな感じでした。
①がアイディア出し、②が作曲、③・④が編曲といったところでしょうか。
①の部分はバンドの仲間で設定し、それぞれ②をして曲を持ち寄ることもありました。②~④まで自分一人で考えた上でバンド仲間に披露することが多かったですが、時には②が終えた段階で披露し、③・④をスタジオでそれぞれのパート担当者にお任せして色々演奏した中から作ることもありました。
ちなみに歌詞は②の後で作ることが多かったです。そして④が出来た段階で最終的にみんなで歌詞を微調整って感じでした。
ちなみに⓪は曲作りをするにあたって引き出しを増やすための基礎研究にあたります。こうすることで徐々に色々な曲調を作れるようになりました。(もちミュージシャンレベルではなく素人レベルですが(笑))
映像制作でも⓪は基礎的な引き出しとして日ごろからしておくことが大切
曲作りの場合も日ごろから色々な曲の分析をしておくことで、アイディア帳になるのと同じように、映像制作においても日ごろから素敵な映像は、どこが素敵か、どの要素がそう感じさせるかなど、自分の気持ちの部分の分析から、実際の映像的な構造的な分析まで行います。
そうすることで確実に自分の引き出しの数は増え、提案力が増します。この時、自分があまり作らないテイストの映像も積極的にたくさん見ることが意外と大切だ感じています。
曲作りでも同じなのですが、ロックだけでなく、ジャズやソウル、歌謡曲から演歌まで聞くことでそれぞれの世界観や味を知ることが出来ます。それら異ジャンルを広く知ることで新しい世界観や引き出しが生まれるんじゃないかなぁって思ってたりします。
勉強(分析)だと思って音楽を聴いたり映像を見たりしたもなかなか身にならないので、やっぱり音楽でも映像でも好きなものからだんだんとジャンルを広げていくことが重要なのかもしれませんね。(もし10個映像を見るなら8個は好きなジャンル、2個は好きなジャンルの派生的なものみたいな感じでいいんじゃないかなぁ。)
映像制作の場合①はデレクション
映像制作の場合、①はデレクション部分となります。クライアント様の表現したい内容ヒアリングし、ヒアリング内容をもとにテイストを設定します。いわゆるペルソナ設定を行いターゲットに最も刺さる表現方法を設定します。これが曲作りにおける①であるテイスト設定に当たります。
(ちなみに私の場合、テイスト設定の段階で、いくつかBGMの候補を上げておきます。)
そして今回の制作の場合、どういった構成で映像の流れ作るかを考えます。起承転結ってやつです。映像における起承転結は曲作りにおけるAメロ→Bメロ→Cメロ・・・によく似ています。
映像制作の場合クライアント様の依頼で制作を行いますので、①が出来れば『こんなテイストでこんな構成の映像はいかがですか?』といった提案を行います。これがいわゆるざっくりとした映像の設計図となります。
映像制作の場合②(作曲部分)は撮影
映像制作の場合、②の作曲部分は撮影になります。
作曲でテイストに合った、心地よい音を探し組み立てていくのと同じように、映像制作の場合はテイストに合った必要とする映像をどんどん収録していきます。
例えばしっとりとしたテイストで表現したいのなら、比較的カメラの動きはゆっくり目になります。被写体の収め方も落ち着いたやや広めの画角に収めることも多いです。
逆にアクティブなテイストに仕上げたいのなら、積極的にカメラ自身に動きをつけ躍動感を持たせます。
カメラ自身の動きや画角、絵作りなどの味付けは、撮影時にしかできないことも多いのでデレクション時に、テイストを固めておくことが大切です。
映像でテイストを左右する大きな要素がBGMです。BGM一つで映像のテイストをガラッと変えることだってできます。そのため私は撮影前までにある程度BGMの候補は挙げておきます。少なくともBGMのテイスト、テンポ感だけでも設定しておくことが大切です。BGMをイメージしながら撮影することでテイストに合わせた絵(映像)を収録しやすくなります。
ドラムパートはBGM、ベースパートはカット編集
曲作りで編曲に当たる③・④は映像制作では編集にあたります。
なかでも③部分のドラム・ベースパートでリズムの土台を作る部分は編集でも最初にする工程で、ドラムパートはBGM、ベースパートはカット編集にあたります。
まず基本リズムとなるのがBGMです。楽曲制作の際、ドラムのリズムに合わせメロディーを載せていくように、BGMの基本リズムに合わせ撮影した映像をタイムラインにのせていきます。
そして私はカット編集を映像のノリ(音楽用語ではグルーブ”groove”とも言います。)を作るベースパートだと思っています。
BGMに合わせて、時にゆったりと滑らかに、時にリズミカルにカットした映像をつなげていきます。カット編集こそ編集の基本で、カット編集が心地よければココロオドルような表現もできますし、琴線に触れるような表現も可能になると考えています。
曲にとってベースがリズム隊でもありながら、メロディ隊でもあるように、カット編集もリズムを刻む役割もありながら、映像の絵作りにも関連するパートでもある大変重要なパートとなります。
ギターやキーボードパートはカラーグレーディングやテロップ!?
ドラム・ベースがBGM・カット編集なら、ギターやキーボードパートは映像作りにおいてカラーグレーディングやタイトルロゴを含むテロップなどにあたるんじゃないでしょうか。
曲作りでもギターやキーボードって花形のように見えて、曲の実は色付けを的な要素が強いです。(リードギターリストがいなくても曲は成り立ちますが、ベースやドラムが居なければ曲として成り立たないことが多いです。)
映像でも同じで、カラーグレーディングやテロップは色付け(デコレーション)要素の強いパートとなります。
映像制作において、より視覚的に琴線に触れるものにしたい場合、カラーグレーディング(※)でテイストに合わせた色味に映像全体を統一します。
※カラーグレーディングとカラーコレクションについて
カラーグレーディングとは、積極的に色味をテイストに合わせ加工していくこと。
(例えばノスタルジックなテイストにまとめたいので、少し色あせた色味に加工していくことなどはカラーグレーディングにあたります。)
また同じような言葉でカラーコレクションという言葉がありますが、こちらの方はどちらかといえば、色補正といった意味合いで使われます。
(例えば少し露出低めに収録された映像を、他の映像クリップに合わせ、適正露出に補正する場合はカラーコレクションにあたります。)
またより分かりやすく物事を伝えたい、視聴者に一目で伝えたいことを表現したい場合、テロップにて補足の色付けを行います。
こちらは説明的な要素も強いですが、実は映像内のデザイン的にとっても重要なポジションとなっていて、映像の雰囲気やテイストを活かすも台無しにするのもテロップデザインにかかっているといっても過言ではないような気がしています。
曲作りにおいても、ギター音作りがダサかったり、キーボードのフレーズがもっさりしていると一気に曲の良さが半減してしまうのとよく似ています。
テロップには説明的要素に特化したものもありますが、映像作品の世界観に合わせたデザイン性のあるものにすることで、映像全体のデザイン性をアップさせる効果を持たせることもできます。
まとめ
いかがだったでしょうか。曲作りと映像制作って本当に似ています。
アイディアを出して世界観を設定し、曲作りの場合、世界観に合わせた音(メロディ)を、映像制作の場合、世界観に合わせた絵(映像)をピックアップします。
ピックアップした音(メロディ)や絵(映像)をリズムに合わせノリ(グルーブ)を作ります。その作ったノリをより引き立つように音楽の場合、ギターやキーボードなどによるメロディ楽器によってデコレーションを行い、映像制作の場合、カラーグレーディングやテロップ等の画面デザインにより色付けして完成となります。
わたしの映像制作ってこんな感じ。
◆ 【曲作り】テイスト設定=【映像作り】デレクション
◆ 【曲作り】作曲=【映像作り】撮影
◆ 【曲作り】編曲=【映像作り】編集
◆ 【曲作り】ドラム=【映像作り】BGM
◆ 【曲作り】ベース=【映像作り】カット編集
◆ 【曲作り】ギター・キーボード=【映像作り】カラーグレーディング・テロップ
自分の引き出し作りに、映像も音楽も普段から好きなものを中心に派生したジャンルなども積極的に見てたり聴いたりして、自分なりに分析し良いところを可視化しています。(継続は力なり!一歩ずつでも引き出しを増やしたい!)
ざっくりと私の中での映像制作におけるワークフローを曲作りを例にとって表現してみました。映像や音楽のみならず、創作活動をしてみたい方に少しでも参考になればいいなぁと思いnoteにまとめてみました。
また今回このnoteを書いてみて他のジャンルの創作をしている人はどんな流れで、どんな進め方をしているんだろうって興味を持ちました。イラストや、詩・文章を書いておられる方、デザインをされている方や陶芸などモノづくりをされている方もどんな手順で、どんな進め方をしているのかなぁ。
ユーザーは完成したものしか触れ合う機会がほどんどないですが、そのプロセスって作り手により様々で、聞いてみるときっと面白いだろうなぁ。
というわけで今回はこんな進め方で映像を作っている人もいるんだぁと軽い気持ちで読んでいただけましたら幸いです。
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読んで頂きありがとうございます。 『映像制作をもっと身近に、もっと気軽に』という思いでnoteを始めました。 noteでは映像制作に関するtipsや話題をはじめ、ぐっでぃテレビの中の人たちによる他愛のないお話まで幅広く綴っていきたいと思います。