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世界一わかりやすいGRP解説|テレビCMの裏側

テレビCMの用語として耳にするGRP(ジーアールピー)とは何なのか。

ネットで検索すると様々な解説記事がヒットしますが、
大事な部分に触れていなかったりして、不十分なものも多いと感じます。
そこで、元テレビ局員として、忖度なしに
”どこよりもわかりやすい!”を目指して説明してみたいと思います。

まず日本語訳ですが、GRPとはGross Rating Pointの略です。
Grossは合計、Rating Pointはこの場合、視聴率を意味するので、
つまり、GRPとは視聴率の合計ということになります。

どゆこと?

例を出します。

あなたの会社が来週の1週間で3回分のテレビCM枠を購入したとします。
具体的な放送予定枠は下記に決まりました。

(月) 6:00~「月曜から早起き」 平均視聴率3%
(水)12:00~「ワロていいとも」 平均視聴率5%
(金)23:00~「ハレトーーーク」 平均視聴率4%

このときのGRPは、
3%+5%+4%で12となります。

GRPの単位としては%でもいいですし、G(ジー)と言ったりもします。
12GRPと表記されることもあります。

ここまでは小学生でもわかる算数なのですが、
なんで足すの?って話ですよね。

これはテレビCM枠の売買に関するルールと関係しています。

テレビCMの買い方にはスポットCMとタイムCMの2種類があるという話を
別の記事で解説していますが、多くはスポットCMです。
●回分の放送枠を予約型で購入するというもの。

このときの料金は、
1本単価●●円×●回分
という単純な計算で決まるわけではありません。

なぜなら、上の例に示したように、
3回分それぞれの放送枠で視聴率が異なるので
価値(リーチ)にも差があるわけです。

そこで、じゃあ何を基準にテレビCM枠の料金が決まるかというと、
視聴率1%あたりの価格なのです。

番組が違っても視聴率1%は同じ1%です。
ちなみに関東地方だと視聴率1%は約40万リーチの価値となります。

この視聴率1%分の価格さえ固定されていれば、
様々な番組でCMが放送されたとしても
公平性のある料金が提示できるであろう、という理屈です。
この視聴率1%あたりの価格のことを
業界用語で %コスト(パーコスト) と呼びます。

仮に%コストが15万円だったとして、先の例の料金を算出してみます。
このときに必要となるのがGRPという考え方です。

月 6:00~「月曜から早起き」 平均視聴率3%
水 12:00~「ワロていいとも」 平均視聴率5%
金 23:00~「ハレトーーーク」 平均視聴率4%

15万円×12GRP(3+5+4)=180万円となります。

公式っぽく示すなら、

CM料金=%コスト×GRP

ということになります。

もちろん、
3つの番組のうち1つしか見ない人もいれば
3番組すべて見ている人もいるので、
GRP(合計視聴率)は重複を含む指標だということには注意してください。

つまり、GRPというのは
スポットCMの売買において必ず必要となる数字(概念)
なのです。


さて、ここまでは同じような解説をしている記事もあるかと思います。
ある程度、理解できた方も多いのではないでしょうか。

しかーーーし!

ほとんどの記事はここで終わっていることが多い印象です!

でも、そうなると絶対に気になりますよね?

じゃあ、%コストって実際いくらぐらいなの?って

じゃないと結局、費用感わかんないじゃん!って

そこで、なぜ%コストに関する情報があまり表に出ていないかも含めて
少し深堀りしていきたいと思います。

まず、この%コストというのは誰が決めるものなのか
それはCM枠を所有するテレビ局です。
CM枠という商品を作っているメーカーがテレビ局です。

テレビ局は放送エリアごとに全国32エリアに分かれているという話は
別の記事でさせていただきましたが、
それぞれのエリアに1~5のテレビ局が存在していますので、
地上波放送局は全国に128局もあります。

なので、128局それぞれ%コストは違うわけです。

また、%コストはメーカー小売希望価格です。
テレビ局にも営業部門があります。
バイヤー(広告主や広告代理店)との折衝も存在します。

その結果、同じテレビ局の中でも
実際には様々な%コストが溢れかえっているのが現状です。

メーカー小売希望価格が上限なのだとしたら、ホームページに公開しては?
と思うかもしれませんが、それもなかなかできない事情があります。

テレビCM枠は総量が決まっています。
需要があるからといって追加で大量生産することができない商品です。
なので、売上を伸ばすために、テレビ局は
市場動向(需給)に応じて価格(%コスト)を逐一変動させています

なので、定価を公開するのが難しいという側面もあります。
(他にも理由はありますが書ききれないので)

余談ですが、
番組(本編)の尺を削ってCM枠を増やしたりはできないの?
と考えた人は鋭いです。

実際、そのような措置をすることもあります。
ただし、CMの総量には業界規制がありますので、
上限を超えて増やすことはできないことになっています。

ちなみに、%コストはエリアによる差が大きいです。

日本の人口の1/3である約4000万人をカバーする関東は
最も%コストが高いエリアです。
関西、東海、福岡と続きます。
田舎になればなるほど安くなると思ってオーケーです。
カバー人口に比例します。

同じエリア内のテレビ局による差は誤差程度です。
日テレとフジテレビの%コストに大きな差はありません。

私は業界に長くいましたので、
全国32エリアのおおよその%コストは把握しています。

ただし、メーカーであるテレビ局が取扱注意にしている情報を
ここでペラペラと喋ってしまうのはさすがに気が引けますので
自粛させていただきます。

しかし、%コストを使わずに大体のCM費用を算出できる方法
別の記事で提示させていただいていますので、
気になる方はこちらをご参照ください!
少し数学が得意な方なら、
ぞれぞれのエリアの%コストを逆算することも可能かと思います!


▼まとめ
・GRPとは視聴率を足しあげた数字のことでCM売買の際に必要となる
・CM放送料金は%コスト(視聴率1%あたりの価格)で決まる
・%コストはエリアごとテレビ局ごとに異なり、人口にほぼ比例する
・%コストは公開されていないが、CM費用を概算で見積もる方法はある

【余談】
ちなみに、GRPと似た言葉でPRPという言葉も存在しますが、
多くの文脈では同じ意味で使われることが多いです。
こちらもいずれ解説できればと思っています。


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