コルブの経験学習サイクル(リフレクション/内省フレームワークの紹介)
最近、マネージメントの世界において、経験学習サイクルというフレームワークが注目されています。経験学習サイクルは、アメリカの心理学者、教育理論家であったデービッド・コルブ氏によって、1984年に、Experiential Learning: Experience As The Source Of Learning And Development の論文において、最初に紹介されたとされています。
コルブの経験学習サイクルとは?
上記の論文の中で、過去に、経験およびリフレクションは、学びを得るために重要であると説いた、カート・ルーウェン氏、ジョン・デューイ氏、ジャン・ピアジェ氏の例を挙げ、そこから、経験学習には、以下の4つのようなサイクルの要素があると述べました。
コルブの経験学習サイクルでは、最初の「確固たる経験」にて、対象者が、新しい経験に対して、何の偏見も持たず、オープンかつコミットする形で関与することが必要としています。そして、「内省的観察」において、多面的に観察し、振り返る必要があり、「抽象的なコンセプト化」において、観察から導き出された、論理的に感じられる理論をまとめ、コンセプトを作り上げることができなければいけないとしています。さらに、「積極的実験」において、コンセプトとしてまとめられた理論が、実際の意思決定および問題解決において、有効でなければいけないとしています。
経験から導き出された一般化できる法則を、次の機会に検証し、その経験を元に、その法則が正しいのか、もしくは、別に一般化できる法則があるのかといった、経験からの学び(法則)を実証しながら、ナレッジを蓄積するというものが、コルブの経験学習サイクルとなります。
また、この論文の最後において、コルブ氏は、「学びとは、経験が変化することによって得られるナレッジ(知見)の蓄積プロセス」であるというように結論付けています。
コルブの経験学習サイクルの簡単な実践例
さて、簡単なコルブの経験学習サイクル実践例をウェビナーを開催することを例にして考えてみたいと思います。
確固たる経験
まずは、実際に実施し、経験したことを列挙します。
ウェビナーを開催し、30名が参加した。
ウェビナー後の質問は、2件だった。
開始時には、30名参加者がいたが、終了時には20名に減っていた。
内省的観察
そして、その後、色々な角度から、気づいた事などを列挙します。
セミナーの開催に比べ、質問数が少なかった。ウェビナーの場合、オンライン会議システムを使っているため、大勢の前で、マイクをオンにして、質問するには、心理的敷居が高いと思われる。
簡単に退室できるため、途中退室者が多かった。これは、セミナーの場合、途中退席するのは、心理的敷居が高いが、ウェビナーの場合は、心理的敷居が低いからではないか。
抽象的なコンセプト化
その後、観察したことから、法則等を見つけだします。
ウェビナーでは、気軽に質問できるツールが必要。
ウェビナーでは、最後まで、聴講してもらうための、施策が必要。
積極的実験
導きだされた法則を検証するために、次回はどうするかを考えます。
次回のウェビナーでは、オンライン会議ツールのチャットに質問を投稿してもらうことをご案内する。
ウェビナー最後のアンケート回答者に対して、ノベルティを送る
上記のサイクルを回し、次回にウェビナーを実施した際に、質問数が増えていたり、途中退室者数が減ったりしていれば、導き出された法則が正しいということになります。もちろん、場合によっては、1回だけの検証では足りないために、複数回実施することもあると思います。しかし、一般化された法則を導き出し、それを次回に試し、結果を再度検証するということを繰り返すことによって、この例で言えば、より効果的なウェビナーの運営方法を学ぶことができるようになります
ただ、一般化された法則を導きだせ、学びが得られたとしても、その学びが普遍であるとは限りません。例えば、ウェビナーは、COVID-19の感染が広がったため、セミナーが開催できなくなったから多く利用されるようになったという環境要因があります。そのため、COVID-19が落ち着いた後は、セミナーの方が好まれ、そもそもウェビナーへの集客が難しくなるといったような状況が起きないとも限りません。よって、コルブの経験学習サイクルで導き出された法則も、常に陳腐化していないか積極的に検証を続けていくことが大事だと考えます。
現在、GROWモデルといったコーチングおよび内省や経験学習のフレームワークを活用した、目標およびアクションマネージメントシステムを開発しております。製品に関するご意見を募集しておりますので、何かございましたら、以下よりお気軽にご意見お寄せください。
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