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手戻りなく効率的な上場準備を進めるためのTips

どうも、Asobicaのすとうです。(X⇒gomashiojr
先日のバレンタインで5歳の娘からチョコをもらいました。父としての至高の幸せに浸っていると、すかさず「はい、じゃあわたし食べるから返して。」と言われ、結局食べられませんでした。ジャイアン思想は少しづつ矯正する必要性を感じました。

さて、本日は、手戻りなく効率的な上場準備を進めるためのTips、早めに着手しておきたい論点についてつらつら書いていきたいと思います。
監査法人、証券会社、スタートアップの経験で改めて感じたこと、論点、Tips、おすすめのSaaSツール等を言語化していきます。少しでもスムーズな上場準備にお役立ちできれば幸いです。
※:わたしの経歴自己紹介は以下のnoteをご覧ください。

はじめに

スタートアップで上場準備を進めている企業は、フェーズに違いはあれどかなり多いと思います。上場準備を進めるにあたって、発生する論点や整理は会社にとって様々ですが、どの会社にも当てはまる論点は一定存在します。
そのあたりの論点を把握することで、業務プロセスの構築に前もって着手し、スムーズな上場準備を進めることができます。
逆に、論点を知らないだけで、前もっての準備や対応をせず、監査法人や証券会社が入って上場準備をある程度進めたうえで論点が発覚し、すごい手戻りが発生する。。。というケースもあります。
このあたり、単なる情報の非対称性(知っているか知らないかの知識問題)が、スタートアップの上場準備のボトルネックになるのも健全ではないなと感じています。そのあたりの課題を少しでも解消できればと思い、今回note記事を書くことにしました。
プロフェッショナルな知識ではなく、取引所が公表している上場準備ガイドブックや、Ⅱの部(グロース説明資料)の記載要領で必要になる論点を、自分が実務で感じたTipsを添えてご紹介できればと思います。
論点書きだしたら以外に多くなったので、ひとつひとつの内容はライトに記載していきます。

読んでもらいたい方

スタートアップの上場準備に携わる方全般に有用な情報をお届けできればよいなと思います。

本編

ワークフロー制度(稟議制度)

最初に紹介するのは、ワークフロー制度(稟議制度ともいいます。以下、WF。)です。業務プロセス構築の原点といってもいいくらい、重要論点です。
冒頭で各編はライトに記載すると言いましたが、ここだけ大事なことなので、文章厚めです。

WF制度については、先日LayerXさんのイベントに登壇した際に触れました。
WF導入のきっかけ、効果は下記記事をご覧ください。

上記記事に補足するものとして、イベントにおいては、上場準備体制整備を推進するきっかけになる点にも言及しています。


WF導入すること自体にしっかり意味があるのですが、WFを導入し、運用をスムーズにする際、だいたい以下のstepを踏むことになると思います。

Step1:WF導入してみた。何を誰に承認とればよいのか決めねば。
Step2:そのあたりを整理するために、各人の業務と職務と責任を明確にする必要ありそう。
Step3:そうなると組織図、職階の整理も必要になりそう。
Step4:職階を整備するので、しっかりとした人事制度もつくろうず。
Step5:そもそも人事制度や稟議制度を構築したけど、新しく入ってくる人もいるから規程という形で社内ルールとして明示しようず。
Step6:社内ルールが明確になり、運用もスムーズになると、監査法人や資金調達のDD、上場審査等の社外コミュニケーションも格段にやりやすくなる。

上記のとおり、WF導入はコーポレート部が全社にレバレッジをかけられる施策の一つであり、社内の管理体制を一気に整備するきっかけになります。(というかちゃんと整備しないと歪みが生じる。)
ここがしっかり運用に乗ると、社内の意思伝達やガバナンスが1段引きあがります。「全社にレバレッジをかけられる施策を推進できる」というのは、コーポレート部に属する人達が経験できる醍醐味ですよね。

ちなみに、体感ですが、組織が20~30人くらいのタイミングでWFを導入すべきだと思います。
WFは「全社にレバレッジをかけられる施策」であるため、人数が多くなると全社への影響が大きくなり、コミュニケーションコストも増えるので、導入のハードルがあがってしまいます。早めに導入して、事業・組織の成長に応じてチューニングする動きがよいでしょう。(情報システム・コーポレートITの体制整備も同じ思想ですね。)

WFツールに関しては、主に以下の観点を考慮するとよいでしょう。

①UI・UXがわかりやすいかどうか
└全社メンバーがスムーズに使えるかどうか
②カスタマイズ性の高い承認経路の設定が可能かどうか
└スタートアップは組織図変更が頻繁に起こるので、ちゃんと対応できるかどうか。
③他のSaaSツールとの相性
└会計システムとか経費精算とかクレカ機能とか
④プロダクトの拡張性
└欲しいと思った機能がちゃんと開発されていくかどうか。

会計システムでfreeeを使われているのであれば、バクラクシリーズとかなり相性がよいので、バクラクをおススメします。
ちなみに、上場審査において事後稟議が発生すると、審査NGになると巷で言われています。これ、たしかに重要な論点です。事後稟議があるから一発アウトではないですが、なぜ重要な論点となりやすいか、より踏み込んだ背景はまた機会があったら書きます、たぶん。
最初の編だけ長くなりました、後はライトに書いていきます、ほんとに。

取引先登録(反社チェックと与信審査取引先登録(反社チェックと与信審査)

この取引先、ちゃんと信用できるんだっけ?という確認をちゃんと行うフローとなります。
ざっくり以下の2点をしっかり確認できる体制整備が必要です。
①反社等の属性に該当しないかを確認する。
②与信枠を適切に設定する。
ミドル以降の企業であれば、割としっかり対応しているイメージです。
盲点になりやすいのは、確認した内容をちゃんとエビデンスで残しておく必要がある、ということです。
上場審査や資金調達DDで提出が求められる可能性があるので、しっかりチェックした証憑を残す運用としましょう。
ちなみに弊社はバクラクのWFで確認フローを組んで、チェックした内容を残すようにしています、ほんま助かる。

関連当事者(と、役員に準ずる者)

続きまして、会計基準にも記載されている関連当事者。
実は、上場審査において、関連当事者の範囲を記載して提出する必要があります。
関連当事者取引ではなく、関連当事者をすべて把握することが必要、すなわち有価証券報告で提出する情報より範囲が広いというところがポイントです。
なので、役員の場合、配偶者と2親等以内の血族と姻族の関係をしっかり把握して提出することが原則必要になります。
結構、この情報の収集に時間がかかるので、コーポレート担当者は早めに該当者とは頭出し含めてコミュニケーションをとっておきましょう。

あと、もう一つ大きなポイントとしては、上場審査時において、「役員に準ずる者」も審査対象となります。経営意思決定に関与する相談役、顧問、執行役員等が該当です。(関連当事者より広い概念で対応が必要ってことね。)
スタートアップの場合、執行役員制度を導入しているケースが多いと思いますが、執行役員の方も配偶者と2親等以内の血族と姻族の関係をしっかり把握して提出することが原則必要になる点は認識しておきましょう。

ちなみに地味にツラい実務的な留意事項として、審査期間中に役員等の方が結婚すると、配偶者の方の2親等以内の姻族の方も審査対象となり、急に審査対応が増えるケースがあります。おめでたいけど、実務部隊は結構対応に追われるので、社内における事前の情報の共有はスムーズにしておくとよいでしょう。

許認可、免許及び登録等の状況

ここから3編は主に法務対応です。
最初は、自社のビジネスが国や行政の許認可、免許、登録等が必要な場合にちゃんと対応しているかどうかです。
さすがに上場審査の際には対応できていると思いますが、アーリーフェーズや、新規事業を行う上で登録漏れが発生するケースも散見されます。
結構大きな手戻りや事業スタックが発生するので、法務機能をしっかり構築し、顧問弁護士との連携も深める対応が必要です。

契約書管理

絶対しっかり管理すべきなのに、なぜか対応が軽視され後回しになり、結局後で大きな手戻りが発生している典型論点が契約書管理です。
監査法人対応、上場審査でも、契約書管理台帳の提出が求められるので、しっかり作成、管理しましょう。
その際、WFで適切な承認が取られているかもセットで確認されるので、承認エビデンスもしっかり残す必要があります。

ちなみにイケてるスタートアップは初期フェーズから、全社レベルで契約書締結と管理の意識が高く、管理するための仕組化がなされています。
最近はいろいろな契約書管理のSaaSがでてきているので、素直にどこかのSaaSツールをいれて、クラウド管理した方がよいでしょう。
(さすがに紙の契約書も減ってきたし。)

ちなみに弊社ではHubbleを入れています。契約書締結までのバージョン管理と承認までのコミュニケーション、電子サインとの連携、台帳機能が一連で管理することができ、運用がスムーズになりました。法務メンバーが感激しているツールでして、おススメです。

トラブル・クレーム管理

意外に管理されていない論点として、トラブル・クレーム管理があります。
正確にはクレーム等が発生した場合、経緯書とかは作成・管理しているけど、台帳の一元管理までされていないケースが多いと感じます。
クレームも台帳で一元管理して、上場審査で提出する必要があるので、早めに作成・管理しましょう。

労務管理

このあたりは最近は結構しっかり管理する必要性が認知されてきた印象です。
入退社含めた人員推移の把握、今後の人員計画、残業時間の管理等、結構しっかりとした管理体制の構築が求められます。(上場目指すんだからそりゃそうだという話。)
このあたり、様々なツールが出てきていて、対応のプラクティスが年々更新されるので、できれば皆さんと積極的に情報交換したいです。

株主総会や取締役会運営管理

株主総会や取締役会の運営はさすがにしっかり行っているケースが多いと思います。
Tipsは以下の2つです。
議事録ファイルのネームラベリングは時系列にソートできる形にした方がよいです。「20240301_取締役会議事録_サイン済」みたいなかんじですね。あとで抜け漏れがないか確認しやすいので、おススメです。
②取締役会における役員の出席情報を提出する必要があります。やむを得ない事情(体調不良とか)を除き、出席率100%が求められるので、各役員の方に対しては取締役会は何事にも最優先で出席してもらいましょう。

あと、株主総会での対応はsmartroundを利用することをおススメします。
決議漏れを防ぎ、決議まで議決権計算、回収ステータスの管理がスムーズに行えて、非常に助かっています、ほんとに。

M&Aを実施する場合

上場審査上、M&Aを実施する場合は留意が必要です。
一応、グロース市場においては、M&Aを行ってはいけないと明確に規定されているわけではありません。
M&Aが審査上留意が必要な理由は、ざっくりいうと、PLの連続性が失われるため、成長可能性や、事業計画の進捗を慎重に見極める必要があることに起因します。
(ちなみにプライム市場とか、スタンダート市場の場合、一定規模以上のM&Aは買収される側の企業の財務諸表に監査法人のレビュー報告書相当の意見書が必要になるケースもあり、相応の制約が明記されています。)
あとは、買収先の企業が上場に足りうるガバナンスを有しているかどうかも確認されます。
実務的にはスムーズなPMIの実施を行う必要があり、このあたりはM&A責任者の腕の見せ所ですね。ツラいと思うけど。
ちなみに、私はM&Aを実際に経験したことはないので、詳しい方はいろいろ情報交換したいです、はい。

さいごに

いかがでしたでしょうか。
全体通して、情報の一元管理、リスト化を早めに進めることが重要で、そのためには、WF等のSaaSツールを早めに入れることが肝要です。

最後に、Asobicaは絶賛仲間を募集中です。
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