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ウォーキングとワーキングの違いからわかる仕事のムダの減らし方~モノグサ生産改善術その1~

モノづくりの使命って早く、安く、そして顧客が満足する品質で製品をお客様に届けることですよね。

「仕事の本分は改善である」という会社も多いかと思います。生産性改善、と聞くと作業を変更する、工程を見直すなどすごく大変そう、トヨタ生産方式の導入なんか神の領域で、専門家の指導がなければとても私なんかはできない、って考えてしまう。ましてや私の職場は生産現場じゃないし。無理!無理!無理!と思われている人も多いんじゃないかと。

そんなあなたに朗報です!実は誰でもできる、しかも一人でできる自分も周囲も楽になる現場改善があったら試してみたいと思いませんか?

仕事中に歩いていませんか?

あなたは、職場の中で一日何歩、歩いていますか?

「1万歩です」と答えたあなた、歩き過ぎです。
ウォーキングは仕事でありません。歩行を分析してみましょう。
やり方は簡単です。歩数を数えればよいのです。スマホでもできます。

あなたの歩幅は、何cmですか?
平均すると1歩は75cmです。1万歩だと7.5km歩いていることになります。

あなたは、秒速何mで歩いていますか?
職場内では経験則から秒速1mで歩きます。つまり、1分で60m、1時間で3.6kmです。すると、1万歩では7500秒、つまり、125分になります。約2時間、歩いていることになります。もし8時間勤務だとしたら、25%が歩いていることになります。1日の1/4が、歩行なのです。歩いている時は仕事ができません。

時間がもったいないって思いませんか?

なぜならとても忙しい毎日でも、働く時間って8時間しかないから。「あと1時間あればもっと楽なのに」「1時間を捻出できたなら残業ナシで帰れるのに」と思ったことはきっとあるんじゃないでしょうか?

一日の働くことができる時間が制約だとすると、その時間を無価値の歩行時間から創り出せたら人生がより豊かになると思うのです。

お客様にとって、あなたの歩行には全く価値がない。

仕事をしている時は、そんなに歩かないでしょう。
1台の生産の中で、仮に3歩の歩行があるとします。たった3歩です。これが1000台の生産では3000歩になります。つまり1時間近くが歩き時間。

現場での歩行は、材料や工具が離れた場所に置かれている時に発生します。つまり、棚や床置きのパレットなどから部品を取ったりする場合です。

興味深いのは組織とか、機械のレイアウトが先に決まっていてその間を人が歩き回ることには割と無頓着な会社が多いのです。

仕事をしている間は、歩行ゼロが理想です。という事は作業台の材料や工具の置き方、プリンターや書庫の配置に工夫が重要になります。

機械だって歩行を中心に考えてレイアウトすることで歩数を減らすことができます。

歩行を1歩でも少なくすることを目指しましょう。

工場の現場では「改善」が浸透しているところが多いと思います。1%の生産性改善だって大変なことです。でも歩数を減らすのはあなたの工夫次第で今日からでもできます。職場全体で取り組めば大きな成果も期待できます。

人は忙しく動き回っていることで「たくさん仕事をしている!」と、つい勘違いしてしまいがちです。歩数を数えてみましょう。もし、たくさん歩いていたら減らす工夫を考えて試してみましょう。歩数が減ればモチベーションが上がります。

生産性を上げることを難しく捉えずに、まずは一人ひとりでできるところから取り組むことで「チリ積も」で大きな成果につながる可能性があります。歩数の削減をお金にも換算するのも楽しいですよ。


【注意】
歩数を減らすため、と理由を付けて大量の書類や材料をまとめて一回で次の職場や工程に渡すのは本末転倒です。流れを悪くします。この点は注意してくださいね。

【知恵袋】
「駅から徒歩○○分」という広告を見たことはありませんか?この計算の基準は1分を80mで換算しています。前述の計算だと1分60m、つまり80m÷60m=職場の歩行速度の1.3倍の速さで計算しています。少し早歩きの前提なんです。しかも敷地の端からなので「駅から5分」は実は5分では到達できないことも多々あります。ご参考まで。

執筆者プロフィール:
尾関 克己(おぜき かつみ)
ゴールドラットジャパン グローバルパートナー

元ソニー株式会社本社生産戦略統括部長、ソニーエリクソン(現ソニーモバイル)中国総経理。ずば抜けた発想力と行動力で社内の問題を次々と解決し倒産の危機にあった英国工場を立て直す。のちに台湾で携帯電話事業の立て直し、北京では携帯電話工場の総経理として最悪の成績だった工場をわずか半年で世界一の地位を実現させた。
「日本のものづくりを全体最適で改革する」という現ゴールドラットジャパン代表の岸良裕司氏の理念に共感。ゴールドラット博士の誘いで、2009年から活動を本格的に開始しオムロンヘルスケア、千寿製薬、ダイワハウスをはじめさまざまな業種で全体最適のマネジメントを導入し数々の目覚ましい事例を出し続けている。