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僕色百景

100
とりあえずやる気と勢いだけで100日継続して綴った風景です。
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#競馬

第十七景 現実を知る話④

第十七景 現実を知る話④

適当におにぎりを選び、なんとかその日は飢えをしのぐことが出来た。この先どうなってしまうのか?ということが頭をよぎった。

数日は同じことの繰り返しだった。朝早く起き、うんこを片付ける日々が続いた。

うんこ拾いにも慣れた、ある日のことだった。掃除を終え、俯きながら馬房から出た。顔を上げると、僕の教育係の男の子が隣の隣の隣の馬房の前で、正座をしているのだ。

その前には、牧場長が立っている。そしても

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第十二景 現実を知る話③

第十二景 現実を知る話③

同じ作業を繰り返す。なんと辛い事か。僕も馬に乗りたいと思いながら、もくもくと作業を繰り返す。ぞくぞくと運動を終えた馬が戻ってくる。

「ジョーー」という音がし、振り返るとおしっこをしている。僕が苦労して、きれいにした場所で放尿しているのだ。すこし落ち込んだ。

入れ替わり、立ち代わりで行ったり来たりを繰り返している内に全ての馬房の掃除を終えた。

そんな事をしていたらアッという間に昼になった。思い

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第十一景 現実を知る話②

第十一景 現実を知る話②

翌朝、僕は言われた3時に間に合うように起き、共用スペースの洗面所で顔を洗い、集合場所の厩舎前に向かった。そこには6人の顔があった。

牧場長、おじさんの他に、髭のお兄さん、小汚い年齢不詳の男、僕よりも若い男の子、眼鏡の女の子だ。

ひとりずつ紹介はしてくれなかったので、誰が誰なのか分からない。分かったのは、教育係が若い男の子という事だけだった。

仕事の事は若い男の子に聞いてくれと言って、他の人た

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第九景 現実を知る話①

第九景 現実を知る話①

僕は馬に携わる仕事がしたかった。小学生の頃、馬を育てるシミュレーションゲームにハマった。そして中学生の頃、「ディープインパクト」という馬をテレビ越しに見たことが始まりだった。

高校生の頃は部活のバスケを真剣にやっていたため、馬からは一時離れていて進学の選択肢は大学進学しか思い浮かばなかった。

大学2年の終わり頃、就活の準備が始まった。ひとつの選択肢として、馬に関わる仕事がしたかった事を思い出し

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