第十二景 現実を知る話③
同じ作業を繰り返す。なんと辛い事か。僕も馬に乗りたいと思いながら、もくもくと作業を繰り返す。ぞくぞくと運動を終えた馬が戻ってくる。
「ジョーー」という音がし、振り返るとおしっこをしている。僕が苦労して、きれいにした場所で放尿しているのだ。すこし落ち込んだ。
入れ替わり、立ち代わりで行ったり来たりを繰り返している内に全ての馬房の掃除を終えた。
そんな事をしていたらアッという間に昼になった。思い出してみても、昼に何を食べていたのか全く記憶にない。確か昼の休憩時間が長かったような気がする。
昼からは、ごはんと水の補充作業と馬が馬房にいる状態でのうんこの回収作業だ。またうんこだ。うんこの回収作業しかしていない。
馬にも色んなタイプの馬がいる。おとなしいやつ、落ち着きのないやつ、寝てるやつ、お茶目なやつ、みんな違ってみんなかわいい。
一番大変なのはお茶目なやつだ。うんこの回収作業をしていると耳をかじってこようとする。マジで怖い。かまれたら最後、耳が無くなる。もうあいつの馬房は掃除しないと誓う。
あらかた回り終える。次は運動場の掃除だ。何をするのかというとうんこの回収作業だ。ここでもうんこを拾い続ける。
うんこを拾い続けていると、やっと一日の仕事が終わりを迎える。終礼だ。特に連絡事項もなく、その日は解散となる。
部屋に戻る途中に小汚い男に話かけられたが、何を言っているのかほとんど分からなかった。おそらく東北の方の訛りがきつかったのだろう。本当に聞き取れなかった。
うんこをすくう作業でくたくたになった。体中が痛かったが、夜ごはんを作ろうと思い立ち、共用スペースに向かう。炊飯器は使える事になっていたのでレトルトのカレーでも食べようと思っていた。
白米とパスタ、レトルトのカレーやパスタソースを持参していた。下に着き、炊飯器を開ける。茶色い米が現れ、すかさず閉じた。
この炊飯器でご飯を炊くのはもう無理だと諦め、パスタに切り替える事にした。きれいに見える鍋を精査し、水を沸かす。とにかくお腹が減っていたので、200グラムを投入した。
別の鍋でパスタソース用の水も沸かす。ドンキで買ったキノコのパスタソースだった。
両方良い感じになったので、お湯を切り皿にパスタを盛りつけ、ソースをかけた。アツアツでとてもおいしそうだ。
頭の中でおいしそうなイメージを作り、パスタを口に運ぶ。
酸っぱい。
酸っぱいのだ。なぜか分からないがパスタソースが酸っぱい。ドンキクオリティなのか、食えるレベルの酸っぱさではなかった。
半べそをかきながら、二口目を口に運ぶ。
酸っぱい。
どうしても食べれないと思い、すべてゴミ箱に入れてしまった。本当に申し訳ないと思った。
仕方なく、近くにあるコンビニに向かうことにした。自由に使えるチャリンコに乗り、暗闇の中、自転車を走らせるのだった。
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