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第参話「売らない、梅は」+おまけ

前回,自家製の梅干しの作り方を紹介した.

しかし今年は状況が一転し,梅が手に入らないどころか,手作りの漬物そのものが撲滅の危機に瀕している.
本記事では,2024 年に連発した

  1. 梅の凶作

  2. 小林製薬の紅麹

  3. 食品衛生法の改正

などの問題が,日本食の象徴である梅干しひいては漬物全体に与える影響について述べる.


※本文は無料で,おまけのみ限定公開.

1. 梅の凶作

今年は,梅の開花が全国的に2〜3週間も早かった
開花直後の写真は下記にうpしたので,ぜひどうぞ.

本記事の見出し画像も,今年の梅だ.
よくなっているところを撮ったが,木の全体で見れば,生理落果こそあれほぼ実になっていない.
梅花は綺麗に咲き誇っていたのに,どうしてこんな事になったんだ?
しかも,うちの近所だけでなく日本中で大不作となっている.

不作の原因は明らかでないが,次に示すような説が複合的に影響したと考えられている.

  1. 暖冬:積算気温が高かったため開花が早まり,つぼみが不完全な状態で開花し,実が激減した.

  2. ミツバチによる受粉の失敗

    • 南高梅は自家受粉できないため,ミツバチに他家受粉してもらう必要がある.ところが異品種の木と開花時期がずれ,受粉できなかった.

    • 開花は早まったが,ミツバチが活発に働きだすにはまだ寒く,虫媒花である梅花は受粉期に花粉の運び手を十分におびきよせられなかった.

    • 天候不順のため,ミツバチの働きが鈍った.

  3. ひょう害:梅の主産地である和歌山県では,3/20 に降った雹によって,梅の果実が打撲・裂傷・落果した.

  4. カメムシの大量発生:カメムシは果実の汁を吸うため,ただでさえ少ない梅の実のできに追い打ちをかけた.

カメムシに吸われたのか,果汁が吹き出てしまっている実が多い

このように,梅にとっての悪条件がこれでもかと重なったようだ.
したがって今年の梅は,ただでさえ物価が高いのに不作で特に高騰し,さらに傷物だらけ,という壊滅的な状況になりそうだ.

2. 小林製薬の紅麹

話は変わり,2024.3 には,小林製薬の紅麹サプリ事件が社会問題となった.
被害の原因は,紅麹の培養段階で混入した青カビが生成したプベルル酸だとされている.

しかし,プベルル酸はほぼ未知の物質であり,本当にこれが影響したかは不明である.
さらに,紅麹コレステヘルプは「悪玉コレステロールを下げる」と謳っており,服用者には腎不全を患った高齢者も多かったと推測できる.
当該サプリメントのメインのターゲットは健康でない人だから,サプリが原因で死亡・入院したと断定することはできないはずだ.
私はこれらの点から,メディアが喧伝している紅麹問題に,新型コロナと同様のきなくささを感じる.
その意味は,下記スレッドを参照されたい.

閑話休題,これはあくまで小林製薬の独自製法である「コメバイオ紅麹」の問題であり,一般の紅麹とは無関係だ.
ベニコウジカビ自体の安全性は歴史が証明しており,いわんやコウジカビをや.
しかし,メディアが形成した「紅麹」問題のエコーチェンバーは,米麹そのものへの風評被害を生ずる.
塩麹や醤油麹,小豆麹など,様々な発酵食品のタネとなる万能な米麹は,日本食における縁の下の力持ちだ.

この問題は,梅干しともあながち無関係ではない.

3. 食品衛生法の改正

2024.6.1 から,改正食品衛生法が完全施行された.
これにより,梅干しを含む漬物の製造・販売に,保健所の許可が必要になった.
許可を得るには,製造施設が一定の衛生基準を満たすと認定される必要があるため,多額の設備投資が必要となる.

その結果,これまで手作りの漬物を売っていた個人農家や小規模な店舗の多くが,漬物の販売を断念せざるを得なくなった.
ただでさえ生産者は高齢者ばかりなのに,さらに伝統的な製法が取り締まられては,実質的に廃業しか選択肢がないのだろう.
加藤純一の雑談でおなじみの三芳村(みよしむら)は,道の駅で販売していた地元の漬物が販売終了に追い込まれたことを X 上で報告し,ネット上で話題となった.

ことの発端は,10 年以上前に起きた食品会社製造の浅漬けによる食中毒にまでさかのぼるという.

法改正のきっかけは、12年8月に北海道・札幌市で発生した、食品会社製造の白菜の浅漬による食中毒事件で、患者数169人、死者8人の惨事となった。

千葉の道の駅「残念」法改正で「かーちゃんの漬物」に感謝「多くの生産者が販売終了」

対策としては遅すぎるし,梅干しは完全にとばっちりを受けた形だ.
しかも,これは会社大量生産した浅漬による食中毒である.
ところが,なぜか対象が会社から個人にすり替わり,日本の歴史がその安全性を証明している漬物の伝統的な製法の方を,不衛生で危険だとして根絶やしにしようとしている.

なぜそんな倒錯が起きているのか?
その理由について私は,自家製の漬物には人工の食品添加物が不要で,販売から規制しないと工業化された漬物製品に対する優位性を崩せないためだと考える.
日本の食卓を発がん性物質で埋め尽くして高齢者を現代病にし,病院による生涯つづく対症療法のお世話になってもらうためには,最も支配的なご飯のおかずである梅干しを含むお漬物を,工業製品で置き換えてしまうのが手っ取り早い.

さらに国民からの反発を抑えるため,法改正は段階的に進められている.
2021.6,1 の改正ですでに,漬物製造業には届出が必要となっていた.

それが 3 年後の今年,届出だけでは許可しないというように厳格化した.
将来的には,漬物の製造そのものが規制されるのだろうか?
もしそうなれば,我々は細々と梅干しを作る楽しみさえも奪われてしまう.

ところで,2023.11 には,デザフェスにおける糸ひき「デスマフィン」による食中毒も話題となった.
これは 100% 製造者個人の問題だが,メディアが大々的に報じたことで,手作り全体への風評被害になったことは間違いない.

このように 2020 年以降,コロナウイルスによるの消毒の強制に加え,回転寿司などの飲食店における迷惑行為の炎上,手作りデスマフィンによる食中毒,食品衛生法の改正による手作り漬物の規制などが続発し,過剰な衛生観念が形成された.

その影響で,日本の食文化に深く根付いている菌や発酵食品,さらには梅干しを始めとした発酵を伴わない塩の漬物までもが(メディアによって)危険視されている.

私は,「健康食品」というものは存在せず,体にとって薬となるか毒となるかの閾値が,食べ物によって異なると考えている.
すなわち,食べれば食べるだけ健康になるものはないが,食べれば食べるだけ病気になるものはあるという意見だ.

手作りの梅干し・漬物には,人間が消化できない人工物が含まれないため,いくら食べても現代病の原因にはなはず,体に悪くなさすぎる.
医産複合体にとって,このような自然の食品は都合が悪い.
そこで資本家たちは,手作りではなく,しっかり添加物の入った「安全な」食品を皆さんに食べていただきたいという一心で,梅干し潰し・漬物潰し・発酵食品潰しと言われるような報道・法改正を行なっているのだろうか?

梅仕事もろくにできないほどの凶作に見舞われた上に,改正食品衛生法が施行されたことで,手作りの梅干しは非常に希少となるだろう.
この流れのまま,伝統的な梅干し文化が失われないことを祈るばかりだ.

寒さを克服できず、受粉からも逃げ出すミツバチ。
だがカメムシは果汁をあっさりと吸い尽くす。そこにほとんどウメはなかった。
次回「雨、ウメ干した後」。この次も、サービス、サービスゥ!

おまけ

スマホ/PC 壁紙用に,梅の写真を用意しているので,お代を出してもいいという方はぜひご覧ください.

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