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『10分で読み解く! 一流の営業マンになるための財務分析』第一章・無料全文公開

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1. 一流の営業マンが財務分析力を求められるワケ

これまでのビジネスマン経験の中で、たくさんの営業マンと出会ってきました。
「どんなお客さんですか?」「どういった商品を売っていますか?」という質問をすると、特に将来を期待されるような優秀な営業マンほど、クライアントの属性や特徴、業界の構造や最近の動向など、イキイキと話してくれます。

私が長く務めたリクルートにおいては、不動産会社・デベロッパーをクライアントとする住宅部門があります。その部門の営業マンと話をすると、「●●駅徒歩●分の新築マンションであれば、坪単価●万円くらいで売れている」「今業界大手の●●不動産は●●のマンションに力を入れている」など、業界の動向について恐るべき知識を持っています。

これは、何年にもわたってこの業界で根を張って一所懸命に努力してきた結果です。この知識を持って、クライアントの事業部長やプロジェクトリーダークラスの方に会うと、それはそれは重宝がられます。
そういった営業マンは、クライアントが悩むこと、つまりクライアントの担当者が自分の上司に伝えないといけない情報、上司と議論するときに必要な材料を提供してくれるからです。
たとえば、価格設定や周辺環境や競合の戦略など、痒い所に手が届くような情報を提供するので、クライアントから大変可愛がってもらうことができます。

しかしながら、BtoBのビジネス、特に限られたクライアントに対し、取引を深耕していくタイプの営業においては、個人vs個人の点の関係ではなく、それらを紡いでいった線と線の関係をクライアントと築いていく必要があります。
つまり、営業マンはクライアントの担当者の上司、そのまた上司の社長や役員陣と会って関係を築いていくことが必須であり、これまで築いてきた関係性を維持・拡大していくことが求められています。

前述の、将来を期待される優秀な営業マンは、クライアントの経営陣とよい関係が築けるでしょうか。

一流の営業マンとは、すなわちクライアントの悩み事を解決するソリューションを提供する人と定義できます。
少なくとも、自分・自社が解決できなくとも、その悩み事を聞き、共鳴して、一緒に悩んでいく姿勢を示すことが必要です。


クライアントの経営陣が悩んでいることは何でしょうか。
もちろん、事業のことも悩んでいるはずです。一つ一つの取引、プロジェクトの積み上げが会社の売上・利益になりますので、個別の案件に相当の興味を示すでしょう。

しかしながら、経営陣の悩みはそれだけはありません。

いい人が採用できない、後継者育成ができない、組織の不協和音を何とかしたいという人事組織面の悩みもあるでしょう。
会社の命綱である資金繰りについての悩みもあるでしょう。
リーマンショックの発生した2008年から2010年はたくさんの倒産が発生しました。相当な大企業でも、資金繰りに窮する事態に陥りました。
その時の記憶は、経営陣の頭に生々しく残っているでしょう。株主から配当や利益計画について強く申し入れされているかもしれません。
そういった経営陣の悩み事を知る、というのがこの本の目的です。

人は、相手の顔を見るだけで、驚くべき量の情報を得ています。表情を見て、「疲れているな」「今日は機嫌いいな」「明るい人だな」、相手の顔が赤ければ、「酔っ払っているのかしら?」「日焼け? 先週末はゴルフか海に行ったのかな?」などと、それだけで会話のきっかけになるような情報を得ています。

財務諸表を見るのも、それと同じです。財務諸表は企業の顔です。

クライアントの経営陣と会う前に、事前に財務諸表を見て分析するだけで、驚くべき量の情報を得ることができます。
「調子良い会社だな」「為替の影響を受ける会社だな」「営業戦略をここ数年で変えたのかな?」など、事前の情報収集をしてから面談に臨むことで、その面談で獲得できるものが増えてきます。

事前の情報収集により、充実した面談にする。そのことを積み上げていくと、クライアントの信頼を勝ち取ることができます。

これが、一流の営業マンの証拠であると言えます。

2. クライアントの4象限分析で情報を整理する

私の尊敬するある営業マンは、クライアントの4象限分析をしていました。
すなわち、クライアントのパブリック情報・シークレット情報、社長(またはこれから会う人)のパブリック情報・シークレット情報の4象限です。

概念としては極めて簡単なことで、普通の営業マンなら、頭の中に常時入っているようなものです。
この方の偉いところは、これを組織的に、長い時間をかけて、徹底的にやり抜いているところです。

では、この4象限分析について、一つずつ説明します。

企業のパブリック情報は、まさに企業が有価証券報告書やホームページ等で発表している情報です。上場企業であれば、相当量の情報がオープンになっています。

この本でお伝えする内容の財務分析も、まさにここに当たります。

非上場企業であれば、情報量は限定的ですが、決算書をクライアントからもらったり、普段の会話の中で情報を集めたりして情報収集していきます。

企業のシークレット情報は、企業としてオープンにしたくない情報です。どんな企業も、多かれ少なかれ、これがあります。
世間を騒がす不祥事を起こした会社の第三者委員会が作成したレポートを読んだことがありますが、企業がいかにシークレット情報をたくさん抱えていて、いかにそれを隠そう隠そうとしているか、非常に生々しく伝えていました。
表に出るパブリック情報は、あくまで建前で、裏には大っぴらには言えない本音がある、というのはよくある話です。
この象限に属する情報をいかにたくさん持っているかが、営業マンの一流の証だったりします。

個人のパブリック情報は、隠そうとしない個人の情報のことです。住んでいるところ、出身地、出身学校、学生時代にやっていたスポーツ、趣味、家族構成などです。
これは、上場企業の社長クラスであればある程度オープンになっていますし、普段の会話の中で情報をもらうこともできます。
大事なことは、それを忘れない、ということです。前回の面談で、出身地が同じであることで盛り上がったのに、次の面談で、「ご出身はどちらですか?」と聞いてしまうと先方は興醒めします。よって、面談時に得た情報はしっかりメモして蓄積していくことが大事です。

個人のシークレット情報は、先方が隠したい、言いたがらない情報です。家族のこと、キャリアのこと、健康のこと、異性関係など誰にでもあるはずです。

この情報を得るには、少なくとも「一対一で」「長時間ゆっくり」「継続的に会う関係」を築くことが必要です。
ディナーをご一緒するというのは、非常に有効です。隣と席が近いような騒がしいお店ではNGです。ゆっくりじっくり話ができ、食事を楽しむことができるような店であることが必要です。
そうやって、この個人のシークレット情報にアクセスできるようになれば、営業マンとしてはほぼ完成形と言えます。

この4象限分析をしていて常に思い浮かぶのが、高村薫氏の名著「レディジョーカー」です。
グリコ森永事件をモチーフとした、大手ビールメーカーを舞台とした犯罪を扱った小説です。過去の暴力団との関係などの企業のシークレット情報、それを隠そうとして泥をかぶる幹部の姿が描かれています。
経営幹部の異性関係という個人のシークレット情報も重なり、追い込まれていく経営陣の苦悩が手に取るようにわかります。企業の大きな意思決定が、実はシークレット情報がドライバーとなってなされていることがよくわかります。

この4象限を頭に置きながらこの小説を読んでいただくと、非常に面白いと思います。

ここまで4象限分析について述べてきましたが、まず初手として大事なのはクライアントの財務諸表を分析して、企業のパブリック情報から得られるメッセージをできるだけたくさん集めることです。
ここをできる限り充実させると、企業のシークレット情報や個人のパブリック情報、ひいては個人のシークレット情報にアクセスできるようになる可能性が高まります。

3. 財務分析力を武器にして一流の営業マンになる

勘違いしていただきたくないのは、この本で述べる手法を実行したところで、短期的な収益が上がるわけではない、ということです。

長期的に、こういった分析を地道に徹底的にやれる方だけが、大きな果実を得ることができます。
営業とは、あたかも砂漠に水を撒くような行為です。徒労感があります。途中で絶望することもあります。

でも、それにめげずに砂漠に水を撒き続けると、ひょっとすると大きな果実が得られるかもしれません。花も咲かず、果実も得られないかもしれません。

しかし、大きな果実を得たければ、やはりこれをやり続けるしかありません。

財務分析力は、銀行員や投資家の方々だけの専売特許ではありません。経理部や財務部の方々だけが身に付け、利用できるものでもありません。誰でも、一定の努力をすれば、ある程度はできるようになります。
財務分析は、これだけで飯を食っている人がいるくらい、深遠な世界です。ですが、営業マンの皆さんがそこまで詳しくなる必要はありません。そのクライアントのことがある程度分かるだけで十分です。

もう一つ、誤解いただきたくない点があります。財務分析をすることで、そのクライアントのすべてがわかるわけではない、ということです。

最も大事なことは、「何がわからないか、がわかる」ということです。「何がわからないか、がわかる」ので、クライアントに的確な質問ができるようになります。

一流の営業マンは、自社の商品説明能力が一流な人ではなく、一流のヒアリング能力の持ち主であると言えます。

以前、同じような業態の不動産会社3社を財務分析して、ある1社の営業利益率が高いことがわかりました。

「なぜ業界他社に比して利益率が高いのですか?」という質問を、リクルートの複数のベテラン営業マンにしてみました。すると、定性的な情報が山ほど出てきました。
「人件費が低いからだ」「素材の調達を一元化して安価で調達しているからだ」「デザインを統一していて、デザイン費用が低いからだ」などなど。

検証はしていませんが、おそらく、どれも正解なのでしょう。この質問をするだけで、その会社と比較対象の残りの2社について、驚くべき量の情報を一瞬にして得ることができました。

さらにでも、意地の悪い質問をしてみました。
「ではなぜ、他の2社はそれを真似ないのですか?」

この質問には、あまり有効な回答はありませんでした。
でも、まさに、この点こそが2社が悩んでいることだと思います。

クライアントは、かならず同業他社の財務諸表を見て分析しているはずです。その結果、同業他社より数字が悪い部分があれば、それの解決に向けて議論しているはずです。

皆さんにも、少なくとも、どの数字が良いか・悪いか、といった水準までは分析していただくようお願いします。
できれば、その悪い数字を他社並みにするには、どうすればよいかのソリューションを提供できれば最高ですが、そこまではすぐには難しいでしょうし、皆さんの会社の役割ではないかもしれません。

まずは、一緒になって考えるような立場になることが最初の目標です。一緒になって考えていると、前述の企業のシークレット情報が自然に入ってきます。この時点で、一流の営業マンになれた、と言えます。

著者プロフィール

大野 潔

1975年 京都府生まれ
1994年 ラ・サール高等学校卒業
1998年 京都大学経済学部卒業業
株式会社日本興業銀行入行(現みずほ銀行)
営業第4部、京都支店、新宿支店、営業第2部
2005年 株式会社リクルート入社
財務部、法務部
2015年 大野経営コンサルティング設立

新卒で株式会社日本興業銀行に入行し、大企業から中堅中小企業をクライアントとした営業を経験しました。その後、株式会社リクルートに入社し、財務・法務領域で大きな資本政策上の課題解決に尽力しました。株式公開という大プロジェクトも経験させていただきました。
これまでのキャリアを通じて、営業・財務(会計)・法務という専門領域において、幅広い経験をさせていただきました。一つの領域からの視点にとらわれることなく、より高い経営者視点から物事を判断することができるようになりました。
特に、リクルート社における資本政策の遂行を通じ、ビッグプロジェクトほど人と人との信頼関係が重要ということを学びました。Give、Give、Giveを繰り返し、最後にTakeするような関係性を、地道に根気強く構築していくことが大事であると信じ、またそれを行動に移せるよう日々精進してまいります。
また、営業マンやコーポレートスタッフ向けのセミナーを60回以上実施してまいりました。初心者に対して、財務諸表に対する興味関心を喚起し、楽しく学べる機会を提供してきました。

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第一章はここまで!
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