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勝負を分ける「無敵のスポーツメンタル」

オリンピックの開催が危ぶまれていますが、悪いのは新型コロナ感染症であって、スポーツを行うことではありません。そんな当たり前のことを忘れそうになるぐらいモヤモヤしている昨今ですが、こんな時期だからこそ少し視点を変えて、メンタルトレーニングの重要性について考えてみませんか。
今回はメンタルトレーナーの加藤史子氏による『奇跡を呼ぶ! 無敵のスポーツメンタル どんなスポーツシーンでも成果をあげるメンタルトレーニング』から、「無敵のスポーツメンタル」を獲得する術を学びたいと思います。


信じぬく力が鍵になる

勝利の頂を目指し、日々ハードなトレーニングを積んでいるアスリートが2人いたとしましょう。その2人は共に才能に恵まれ、実力も努力の度合いも拮抗していた場合、勝負を分けるポイントはどこにあるのでしょうか。
「試合当日にピークを合わせる調整力」、「コーチング」、そしてある意味残酷な「時の運」もあるでしょう。ただ、他人事と思って好き勝手を言わせてもらうと、「勝利に賭ける思いの強さ」こそが、最後の力を振り絞って勝利を手繰り寄せる最大の武器ではないかと思うわけです。皆さんもそこは同意していただけるのではないでしょうか。
ただ、その最後に振り絞って出てくる力って、いわゆるスタミナとはまた異なるものですよね。一言で言うなら「気力」ということになるでしょうか。まぁ、トップアスリートでもない私にそこまでの力は出ない。なんて、諦めてはいませんか? 加藤史子氏は、「100%に近い確率で、《必ず上手くなって一流の選手になる》と信じて練習した人のほうが上手くなります」と明言します。
しかも、この強い思いを胸にプレイすることで結果を出せるのは、トップアスリートに限らないというのです。

メンタルトレーニングというと、一流のアスリートだけに必要なものだと思っていませんか? 実はメンタルは、どのレベルの人にとっても大きな違いをもたらす鍵なのです。

自分を信じる力《ビリーフ》

スポーツだけに限らないで考えてみましょう。あなたは自分の力をどれぐらい信じていますか? 目指すべき目標を高く、遠くに置いて、必ずや実現するぞと強く願いを込めて手繰り寄せることができるでしょうか。
その時重要になるのが、《ビリーフ》なのだと加藤氏は語ります。


何を信じているのかは、自分でも気づいていないかもしれませんが、心の深いところでは自分の能力はこれぐらいで、どこまでの試合で勝てそうかなど、思い込んでいるものがあります。このように自分が何を信じているのかを《ビリーフ》と呼んでいます。

上手くなるためには、自分が何を信じているのかに気づくことが大事です。そして、何を信じるとさらに上手くなることができるのかを知ることが重要だというのです。
つまり、自分を信じる力、自分が信じている力《ビリーフ》をどのように高めていくことができるかが、ギリギリの勝敗を分ける指標となるのです。

脳の認識を変え、現実を二度つくる

現実は二度作られるといいます。最初は頭の中で、そして次に、実際に現実として作られるというのです。
山﨑拓巳さんの著書『人生はピクニック』(サンクチュアリ出版)の中にある、陸上の短距離選手に、ストップウォッチを少しだけ早めに押して、新記録が出たと思い込ませると、本当にその記録で走ることができるようになるというエピソードを孫引きしながら、加藤氏はさらに解説します。
ここで起きていることはまさに脳の認識を変えることで(一度目の現実)、現実の結果を変えていくことができた(二度目の現実)例なのだといいます。「自分はこのタイムで走ることができたんだ!」と思い込むと、本当にそのタイムで走ることができるようになる可能性を高めることができるというわけです。

私たちは、「ここまではできる」「ここからは無理」という領域を持っています。その境界線を変えていくことが、現実をも変える力を持っています。

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スイッチを一気に押す「チェンジ・ザ・ラベル」

自分がもう一歩高く、遠くまで跳べる。そう信じられるよう《ビリーフ》、つまり信じる力自身をレベルアップすることが、そのまま実力アップに直結する原動力になるということを説明してきました。
一方で、この新しいビリーフを持つこと以外にも、自意識を効果的に切り替えてスイッチを押してくれる方法があります。それが、以前にもご紹介した一瞬で自信をつけて、自己肯定感を上げる方法「チェンジ・ザ・ラベル」です。


例えば、自分が尊敬する憧れのプレイヤーをイメージし、自分自身にそのラベルを貼ってあげるのです。圧倒的なドリブルとシュート力を身につけたいなら、「僕は今日から日本のメッシだ!」とラベルを貼ってあげましょう。あるいは、華麗なスケーティングとジャンプ力を身につけたいなら、「私は紀平梨花のように舞う」と、具体的に思い描いたラベルを貼ってみましょう。一つ上のステージへ《ビリーフ》を押し上げることができるというものです。

メソッド公開!「モデリング」を実践

また、この「チェンジ・ザ・ラベル」で行ったラベルの貼り替えをより具体的にした、「モデリング」という手法も紹介しています。
こちらは書籍よりそのまま引用しますので、イメージトレーニングの材料にしてみてください。

《実践の手順》
【1】こんな場面でこんなふうに上手くできたらいいなぁと、思っている場面と行動を一つ選ぶ
【2】そのことを上手くできるモデルを選ぶ。モデルは自分でも自分以外の誰か(尊敬する選手や映画の中の登場人物など)でもよい
【3】心の中で映画やドラマの監督のように、その場面でモデルとなる人がとても上手くやっている様子をイメージする。目に見える行動だけでなく、そのときの言葉や音の要素も確認する
①必要があれば、自分にとって満足できる行動になるようにモデルの振る舞いを演出・修正する
②その場面で、自分以外の人たちが登場しているのであれば、その人たちのモデルに対する反応も観察し、必要があれば修正を加える
③満足できる結果と一致するまでこの作業を繰り返す
【4】モデルと自分を入れ替えてその行動を確認し、必要があれば、自分の振る舞いを確認する
【5】モデルの中に入り込む
この場面をモデルに入り込んで当事者として最初から体験する。そのとき、自分の身体の感じや周りの人たちの反応に注意を払う。上手くいかなかったり、気に入らない感じがあるときは、もう一度3のステップに戻って修正してから、再びモデルの中に入り込む
【6】この新しい行動に入るきっかけにする鍵を見つける
鍵となるものは、視覚的に見えるものや自分の声や心の声など
【7】新しい行動をしている未来の自分をイメージする。
近い将来この体験が必要になるであろう状況を思い浮かべ、6で見つけた鍵を意識して、新しい行動に切り替えているところをイメージする


いかがでしょうか。加藤氏は、すべての手順を踏まなくても、誰かになりきるイメージをするだけでも効果があるといいます。自分には無理と思えることも、自分のアイデンティティの枠を超えてパフォーマンスできるように、力を貸してくれる手法というわけです。

受験も変える!メンタルトレーニング

ここで紹介しているのは、実力のない人がいきなりスーパーマン&ウーマンになる話ではありません。一にも二にもハードなトレーニング(あるいは勉強)に励み、日々のたゆまぬ努力を惜しまぬ人が、さらにステージを上げるためのメンタルトレーニングです。
ですが、ここが逆転の発想かもしれません。まずはじめに「わたしはできる!」と思えるから、ハードなトレーニングを乗り越えることができると考えることもできるでしょう。人によってハードルの高さはそれぞれでいいと思うのです。重要なことは、「理想の自分になる!」だったり、「何が大事なのか」に気づけたりすることで、緊張が高まるシーンの中でも実力を発揮できるようになることなのです。そう考えると、「あ、それ受験も一緒だな」と思ったりもするのですが、いかがでしょうか。受験生のみなさんにはいろんな意味で厳しい受験シーズンがやってきましたが、気持ちで負けないよう、《ビリーフ》をグイッと持ち上げて、がんばっていただきたいと願うばかりです。

書籍『奇跡を呼ぶ! 無敵のスポーツメンタル どんなスポーツシーンでも成果をあげるメンタルトレーニング』では、さまざまなワークを交えてメンタルトレーニングの手法を紹介しています。気になった方はご覧になってみてください。


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