枯れた花束を大切に抱える男
車の中にいた男は花束を抱えていた。
その花束は見事に枯れている。水分は抜けきって、乾いている。
男は枯れた花束を大切そうに両の腕で包みこんでいる。
私は我慢ができなくて、車の窓ガラスをコンコンコンと叩いた。
男はこちらに気づいたようで、ゆっくりと窓ガラスがさがっていく。
「はて」
「ご主人、わたしはいてもたってもいられなくなってしまって、大変失礼だとは承知の上でね、こうやって貴方の車の窓ガラスを叩かせてもらいました。
どうしてもね、知りたいと思っているのです。なぜ貴方は枯れた