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クォーツは言った(2)
彼はおしゃべりだった。わたしが裁縫をしていても、草刈りをしていても、テレビを見ていても、ずっとしゃべっている。それが、返答を期待した言葉の投げかけだったのかは今になっては分からないが、ただ彼が言葉を発することを好んでいた事実は動かない。
そういえば、彼が静かになる場所がひとつだけあった。台所である。
台所、といってもそれはシンクの上とか、食卓の上ではない。台所にある窓のへり。窓の向こうには、
プレートの観測 《果てしない道のりと証言のまとめ》
**夏に ** 木陰に入ると小人が倒れていた。どうやら強い日差しに当てられたらしい。丁度凍らせたペットボトルを持っていたので、それを背に寝かせてやった。しばらくすると寝息を立て始めた。僕も疲れたので少し眠ることにしよう。緑に透ける太陽が眩しい。まぶたにかよう血液が高鳴っている。
**黒豆 ** その小人は夕食の卓袱台の下に突然現れたのでした。台の脚に身を隠し、こちらをじっと見つめてい
枯れた花束を大切に抱える男
車の中にいた男は花束を抱えていた。
その花束は見事に枯れている。水分は抜けきって、乾いている。
男は枯れた花束を大切そうに両の腕で包みこんでいる。
私は我慢ができなくて、車の窓ガラスをコンコンコンと叩いた。
男はこちらに気づいたようで、ゆっくりと窓ガラスがさがっていく。
「はて」
「ご主人、わたしはいてもたってもいられなくなってしまって、大変失礼だとは承知の上でね、こうやって貴方の車の窓ガラスを叩