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本は僕に自由だけをくれた。

-なんで本を読むの?

・・・無論、面白いからである。それ以外にない。

-じゃあ、どこが面白いの?何が面白いの?

・・・面白い。なぜ面白いのだろうか。「○○だから面白い」が成り立つのだろうけど、この「○○だから」の部分を表現できてしまうと、本を読む行為が他の何かで代用可能になってしまう気がする。

でも少なくとも、自分のためになるとか、自己投資だとか、教養を身に付けるためだとか、論理的思考を獲得するためだとか、そんな陳腐な理由が読書において先行してたまるものか!!!とは常日頃思うところである。


ひたすら面白くて、読んでいて幸せだから読んでいるのだ。


ただその結果、いつか自分の役に立つ瞬間が来るかもしれないし、見方によれば自己投資のようなものでもあるし、気づいたら論理的な人間になっている可能性はある。

ただ僕に言わせれば、読書においてそんなものはただのおまけで、そもそもつまらければ読まない。


ただ、「読書のどこが面白いのか」について、強いて理由を一つ上げるとするならば、こう言う。

著者や作者の「思い」は時代を超えて、伝えたくて、教えたくて、時には啓蒙したくて言葉にした物語が、本にはあるから面白い。

人は、誰か自分以外の他の人へと「思い」を託し、繋ぎ、紡いでしまう生き物だから、必ず今あるものには、誰かが誰かに託し、その誰かがまた違う誰かへと繋いできた「思い」が込められている。

本を読んでいてそんな「思い」を背負った言葉と出会うと、会ったこともない遠く昔を生きた誰かの言葉なのに、なぜか刺さる。その言葉を編み出した著者だって、僕を刺そうとなんて思ってもいなかったのに。

しかも刺さる言葉とはたいていの場合、「顔を上げろ」と言わずに空を向くよう仕向けてくれて、「元気出せよ」と言わずに笑顔にさせてくれるように、まるで強制感がない。

つまり自由なのだ。決して本からこちらへ歩み寄ってくることはない。けれどもこちらからニコニコして近づくものならば、本も何かを与えてくれる。それがいわゆる「教養」なのか、「論理的思考」なのか、はたまた別の何かなのかは分からない。そこを読者の受け取り方に委ねてくれているという意味でも、本とは自由なのだ。

もちろん著者・作者それぞれは、「思い」があって書いているから、伝えたいことがあったのだろう。その「思い」を読者が書き手の願いに沿って読み取っても良し、自分勝手に読み取っても良し。前者を強制する評論家のような人もいるけれど、著者もその本も全く強制せず、ただただ自由である。

当然書き手が今は亡き昔の人ならば、その人の言葉に今を生きている自分が触れることができるだけで、その尊さが分かろう。文字通り、人生の大先輩の言葉なのだから。


本とは、自由である。


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これからは記事の最後に、適当に本の紹介を一冊しようと思います。

「正義と微笑」 太宰治


16歳の学生の視点から見える世の中を日記形式で綴り、主人公の進(すすむ)が感じたままを書いている作品。

物凄い量を書く日もあれば、2,3行で終わる日もあり、人間味に溢れた主人公です。特に笑ったのが、誕生日を迎えた進が「さて、明日からは高邁な精神と新鮮な希望を持って前進だ。十七歳になったのだ。僕は神さまに誓います。明日は、六時に起きて、きっと勉強いたします」と書いた次の日の日記の最初の文が、「曇天。風強し。きょうは何もしなかった。風の強い日は、どうもいけない。御起床が、すでに午後一時であった」と、言い訳たっぷりで、まさに若い人間味を感じる好きなシーンです。日記って書き始めの時期はやる気満々ですごく楽しいんだけど、日常をそのまま記すものだから、生活自体が楽しくないと、「なんで日記なんて書いているんだろう?」って時期が必ず来て、ドイツにいるとき日記を書いていた自分もまさしく同じ気持ちだったので、「いつの時代も人は同じだな」と感じました。

またこの作品の一番の名言があるのですが、それは是非読んで探してみて下さい。おそらく読めば分かると思います。僕はそのセリフが大好きです。キーワードは「勉強」と「カルチベート」です。因みに今回の僕が書いた記事は、若干この作品に影響を受けてます。言葉選びとか勢いとか。笑

この作品の日記と同じで、僕の本の紹介も「なんでおれはやっているんだ?」となる日が来ると思いますが、楽しい間はやるつもりなので、是非これをきっかけに読んでもらえれば嬉しいです。読んでもらえなくても平気です。本とは、自由ですから。

この作品自体は「パンドラの匣」というタイトルの文庫本に収録されています。

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Shingo


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