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定年後フリーランス☆講演会講師のリアル(3)・展開①

 講演会講師としての、それなりに体裁のついたプロフィールが幾つかの講演会エージェントのサイトに掲載された。が、講演会エージェント経由で案件の引合いが初めてあったのは、ほぼ2年後であった。カルチャースクール講師の仕事が順調に増えて回っていたので、それほど期待して待っていたわけではないのだが、それにしても随分とかかったなあ、というのが率直な感想であった。

 まっとうな講演会エージェントならばそれ相応の審査基準があって、そこを通過するのも容易ではないが、案件の獲得は〈その他大勢の講師〉においては登録審査通過よりもはるかに難しい。講演会講師にもランクがある。案件がコンスタントに入ってくるのは、まずは名前をきいただけでほぼすぐに顔が浮かぶ、言うところの〈各界著名人〉である。あと注目されている社会事象に関係する専門家など。講演会エージェントに登録されている大部分が〈その他大勢〉の講師にあたる。大手の講演会エージェントにはプロフィール未掲載のひとを含めて、7000〜9000人登録されているようであるから、〈その他大勢〉の部類に入る講師に声がかかる確率はきわめて低い。当然のことだが、エージェントも案件獲得の可能性の高い講師についてしか積極的には営業をかけない。

そんな状況下で、〈その他大勢〉の部類に入る私に案件の引合いが来たのは大袈裟ではなく奇蹟に近い。ただこの案件もちょっとおもしろい経緯で私のところに来ている。というのも私が講師登録した講演会エージェント以外の、聞いたことのない講演会エージェントからやってきた。講師登録していない旨はこちらから伝えたが承知しているようであった。なぜ講師登録していないエージェントからオファーがかかったのか是非とも知りたかったのだが、うるさそうな講師だと思われて話がたち切れになるのが厭だったから聞かなかった。あくまでも想像だが、各講演会エージェント間、繋がりがあるのではないかと。たとえば依頼主(主催者)から提示された予算(講演料)で、自分のところに該当する講師がいなかった場合、他の講演会エージェントに照会をかけているのではないかと。

主催者からの依頼の概要と講演料は最初にこちらに伝えられた。依頼概要は、俳句を絡めた話をして欲しい、ただ俳句そのものに踏み込んだ難しい話は避けて欲しい、楽しくためになるような話を等々だった。例月のカルチャースクールの俳句教室では、けっこう俳句表現に踏み込んだものが多かったから、俳句周縁のはなし、たとえば俳句をする効用など少し工夫は要るかと思った。

講演会の主催者は、静岡のさる納税推進団体の女性部会。まさしくこれぞ絶景という景観の素晴らしいホテルが会場であった。主催者はじめ関係団体の方々が講師控室に挨拶に来られ、大変丁寧に遇していただいて恐縮した。主催者である納税推進団体の女性の方々は、みなさんはつらつとしておられた。中小企業の奥様方ゆえ当然かもしれなかった。(ご主人より経営を引き継いでおられる方もいらした。)
演題は「日常を楽しく季節を生きる」。日常生活のなかに、もっと季節を実感する機会をつくって、楽しく充実した日々を過ごしていきましょうという話。1時間半ほど。レジュメはしっかりと作った。皆さんたいへん真剣に聴いていただき話しやすかった。
講演会のあとの懇親会では、地元のおいしいお魚をいただき、即興で箸袋の裏に俳句を所望されたりもして、たいへん楽しいひとときを過ごさせていただいた。

この講演会ののち、また別の講演会エージェントから二、三の引合いをいただいたが、翌年(2020年)の、かの疫病感染拡大により話は全てたち切れとなった。




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