蟻と豆腐 第2号(2024年3月14日発行)
初夢の/中田剛
雨脚のつよき時雨となりきたる
冬の空端切れのやうな虹なると
ひたひたとひたひたと猫底冷えを
しぐるるや昼間はくらき豆腐店
寒暁鴉が騒ぎ立ててゐる
正月を鴉は鴉だけで居る
轟轟と松わたる風初夢の
真冬とてバナナの皮は黒ずみぬ
残りたる餅ことごとく安倍川に
冬晴や乾布摩擦ひさしぶり
そこいらぢゆう元気に蒲団叩く音
鳰まんまるまなこ瞬かず
こんこんと落葉の底にねむる猫
くさむらに猫吐きかへす時雨かな
寒鴉ずつと乗つかるゴミ袋
冴え返るなりゴミ袋ふたつ提げ
いきなりの