見出し画像

【読書】西加奈子著『くもをさがす』

以前から西さんの小説が好きです。また、数年前にある芸人さんのラジオに出演されており、キャラクターも面白いなと思っていました。

今回は、初のノンフィクション作品ということで興味を持ち、手に取りました。


あらすじ

カナダでがんになった。
あなたに、これを読んでほしいと思った。

これは、たったひとりの「あなた」への物語ーー
祈りと決意に満ちた、西加奈子初のノンフィクション

『くもをさがす』は、2021年コロナ禍の最中、滞在先のカナダで浸潤性乳管がんを宣告された著者が、乳がん発覚から治療を終えるまでの約8 ヶ月間を克明に描いたノンフィクション作品。

カナダでの闘病中に抱いた病、治療への恐怖と絶望、家族や友人たちへの溢れる思いと、時折訪れる幸福と歓喜の瞬間――。

切なく、時に可笑しい、「あなた」に向けて綴られた、誰もが心を揺さぶられる傑作です。

河出書房新社HPより


感想

①ピンチの時こそ、カジュアルかつ対等に接してもらえると楽


深刻そうに色々と気を遣われるより、本著で登場するカナダ人看護師の方々のように、ラフな感じで接してもらえた方が楽かもしれません。

自分自身が、その様子を見て「どうってことない」「自分が思うほど深刻ではない?」と思えやすそうだからです。

カナコのがんはトリプルネガティブなんや、オッケー! 早よ治そう!

p. 46 カナダの看護師のセリフ

カジュアルなだけでは、ただ馴れ馴れしいだけになってしまうと思う。相手をリスペクトして、対等に接することがセットなのかなと感じました。

以下は、止めてほしいと言われた漢方について、飲み続けたいという意向を看護師さんに伝えたシーン。

もちろん。決めるのはカナコやで。サラは、私の目をまっすぐ見つめていた。「あなたの体のボスは、あなたやねんから」

p. 98


②運動は大事

筋トレやジョギングの話がよく出てきました。柔術までされていたとは驚きでした・・・

「術後の回復のため」と、医師から運動を勧められているシーンもあったかと思います。

やっぱり「動く」ことや、基礎的な「体力」って、何事においても基盤なのでしょうね。

バンクーバーの人たちは、身体が強い人が多いとのこと。専門医にすぐアクセスできなかったり、救急で何時間も待たされるケースがあると経験から理解しているからだそうです。

食にルーズな人は多い一方で、エクササイズに力を入れていて、身体をメンテナンスすることを大事にしていると書かれていました。

西さん自身の、「身体が健康であれば、自然と精神も上向く」という言葉。説得力がすごい。

③書き方のテイストが好き

闘病の様子が描かれていたこともあり、やはり文章のトーンって大事だなと感じました。

1つ目。「振り返って、客観的に書かれている」ことで読みやすかったです。

西さん自身、闘病中に起きたことや思ったことを日記に「書くこと」が支えになっていたそうです。そして、後で日記を追うようにして、自分の気持ちを客観的に打ち込んだのが本著とのこと。

2つ目。たまに出てくる、少し "おちゃらけた" やり取りが好きでした。そもそも、外国人の方のセリフを関西弁で書いているのって、斬新ですよね。

一番好きだった、何気ないシーンがコチラ・・・

PET検査の時の看護師は、「待っている間Spotify聞く?」と聞いてきた。
「私ので良かったら!」
いや、ええよ、と断った。あなたは優しいね、と言うと、彼女は何故か爆笑した。

pp. 35-36

この記事が参加している募集

読書感想文