見出し画像

なぜ大阪在住のITエンジニアが「アジア」のトレイルレース沼にハマったのか?

以下の Yahoo の記事に触発されて、この記事を記載しています。この記事の主人公である鈴木ゆうりさんが「海外マラソンコレクター」と名乗っているので、私もこれの「アジアトレイル版」といった感じでしょうか。

アジアを走り始めたきっかけ

初めて海外のトレイルを走った(2015年10月 台湾/平溪)

トレイルランニングは2009年頃からずっと走っているのですが、海外のトレイルを初めて走ったのは2015年10月の台湾です。

海外を走りたいと思ったのは、友人が世界最高峰のトレイルランニングレース・UTMB(Ultra-Trail Du Mont-Blanc、フランス)を走ってその魅力を語られたのがきっかけです。その時は、いきなり欧米は渡航が時間的都合で厳しかったので、まずは近場のアジアで無いのかなと探して見つけたのが台湾です。

当初は「ULTRA TAIWAN」という台北近郊のレースにエントリーしていたのですが、数ヶ月前の台風でコースが崩落してレース自体が中止。しかし、主催者が「せっかく応募してくれたので、台湾の別の場所で走ろう」というイベントを開催してくれたので、行くことにしました。

2015年10月のイベントでの一面

台湾へ行くこと自体が今回が初めてであったりもしたので、海外の山を走ると加えて2つの初めてが重なって、ワクワクもあったが、不安もあった渡航でした。しかし、実際行ってみると非常に楽しめたのと、台湾の魅力にもハマったので、それ以降頻繁に台湾に行くことになります。

実際走ってみると、トレイルの雰囲気は台湾の島が日本列島の延長上にあることもあってよく似ていたのですが、そこに日本語の通じない人たちと一緒に走ること自体が魅力だったので、ところどころ中華的な建物とかがあったりとかなどがいい刺激になりました。

ここから、香港、韓国、中国、あとスイスの山を走ることになります。

2019年4月 大連100(中国/遼寧省大連市)

2020年以降は東南アジアにも進出する予定ではあったのですが、例の感染症で渡航できず仕舞いになってしまいます。

日本と海外のトレイルランナーの違い

日本人は競技志向で、数字にこだわる

鈴木ゆうりさんの記事にも書いてあるとおり、「日本は『速く走る』ことへのこだわりがズバ抜けている」、これはトレイルランニングの世界でも同じだと思います。

日本国内のレースを走っていると、いい意味で表現すると「平均走力が全体的に高い」、悪い意味で表現すると「レース全体がせかせかしている」と私は感じています。エイドステーションの滞在時間も短めだし、結構黙々と走っている人が多いように感じます。

もちろん、これはレースによって変わってくるのですが、例えば「草レース」と呼ばれるものだと、もう少しカジュアルな雰囲気になります(例:六甲縦走キャノンボールラン)。

また、距離に対しても日本人は長い距離のレースを好む傾向にあります。トレイルランニングの世界ですと、100kmや100マイル(約166km)という超長距離な競技もグローバルで盛んではあるのですが、距離が長くなれば長くなるほど日本人の参加率が上がります。

下記テーブルは2018年の台湾の「フォルモサトレイル」の全体のエントリー数に対する日本人の参加者を距離別にまとめたものなのですが、最長の104kmですと参加者全体の30%が日本人となっております。ちなみに現地の台湾人は80名程度。

2018 Formosa Trail における日本人と全体の参加者

海外にわざわざ走りに来ている日本人のランナーは、どちらかというと UTMB への出場のためにポイント(※1)を稼ぎに来ている方が割と多いと思います。もちろん、UTMB に拘らず、日本以外の超長距離のレースを走りたいといったニーズもあって、走りっている人もよく遭遇します。

※1 トレイルランニングの世界を知らない方のために解説しておくと、世界最高峰のレースである UTMB を走るには、世界各地のレースを走って ITRA ポイントなどを積み上げる必要があります。また、日本で最大のレースである Ultra-Trail Mt.Fuji も ITRA ポイントの数で参加資格が得られるので、そのために走っている方もいらっしゃいます。

アジアのランナーはカジュアルに走っている人が多い

香港のレースの一幕(エイドステーションではなく、コース上にある商店で休憩)

対するアジアのトレイルレースはもう少しカジュアルな雰囲気になります。もちろん海外にもゴールタイムにこだわるガチ勢は居るのですが、どちらかというと完走目的であったり、イベントそのものを楽しんでいる方が多いように感じます(もちろん、日本人ランナーにもカジュアルに楽しんでいる人もいます)。

友人同士で喋りながら走ったり、カップル同士が手を繋ぎながら参加などの光景が見られます。特に後者に関しては、日本のレースでは正直観たことがないです。

また、エイドステーションでの滞在時間も比較的に長めでエイドステーションで友人同士で喋りながら食事をしたり飲んだりしてたりします。アジアは日本よりも暑い地域が多いので、暑くてすぐに再スタートができないこともあるのですが、日本でも暑い時期のレースもあるので条件は同じ。

あと、国や地域にもよるのですが、香港のレースは、お金さえあればレース公式のエイドステーション以外での補給もOKで、例えば商店や小さなレストラン、はたまた自動販売機が近くにあれば、皆さんそこでコーラを買ったり、飯を食べたりしています。この辺が結構緩いところが面白いです。

年齢層もアジアのほうが10歳ぐらい若い

2022 Formosa Trail レース後

あと、私がもう一つ特徴があるなと感じたのは、年齢層です。

日本のトレイルランニングの年齢層は他のスポーツに比べると比較的高く、30〜50代が中心となっており、そのボリュームゾーンは40代と言われています。20代に至っては少数派で、日本のトレイルレースを走っていてもあまり20代のランナーを見かけません。

参考:https://www.jstage.jst.go.jp/article/jila/81/5/81_533/_pdf

対してアジアにおけるトレイルレースでは、20代のランナーもよく見かけます。年齢層も全体的に日本よりも若く、私が見る限り20後半〜30代が中心ではないかと思います(私の主観です)。

アジアの山を走り続けている理由

韓国最高峰の漢拏山(済州島)


わざわざ海外まで行って走ってい理由は、旅をしながら走れるというとこですね。走りに行くついでに観光する、旅ランといった感じで楽しんでます。

その国/地域の文化、風習、グルメ、街並みなどを触れながら、そして走るというのがハマっています。もちろん、日本国内でも旅ランという形で走ることはあるのですが、やっぱり海外に行くと言語も違うし、文化も違うのでより刺激的に感じます。非日常をどっぷり味わう。

台湾式居酒屋(熱炒)での現地台湾料理
香港の飲茶

また、レースの雰囲気も日本の競技志向の強い雰囲気で走力を上げるというのもありですが、やはりアジアの緩い感じのほうが好きなので、アジアを走っています。タイムも、アジアを走り始めてからはあまり拘りがなくなり、「いい走りができたら結果はあとから付いてくる」というイメージで走ってます。

私は大阪府在住ということもあり、アジアへのアクセスは東京よりは1時間短い。大阪から長野や北関東、静岡の山奥に行くよりかは、韓国、台湾、香港、中国(大連あたり)に行くほうが移動時間が短く、旅費もLCCを使えば国内のレースに参加するよりも安くなることもあります。

あとは、よく海外の人とも仲良くなったりします。レース中でも仲良くなるのですが、滞在先のホテルなどでも全然ランナーとは関係ない人とも仲良うなったりするので、国籍を超えて友人が増えるというのも魅力の一つ!2022年11月にも、3年ぶりに台湾に行ってきましたが、現地のランナーさんとも仲良くなって Instagram や Strava 上でも時々絡んでます。

アジアのトレイルレースをきっかけに、中国語の理解も必要だと感じて、中国語の勉強もし始めたし、割とカタコトの中国語でなんとかやっていけるという経験も積めました。

海外を走っていると、日本の良さもわかる

平尾台(福岡県北九州市)

海外を走っているので、逆に日本のトレイルの良さも際立って認識出来るようになりました。これは、ずっと日本にいていると今の現状が当たり前だと認識してしまうのですが、外の世界に出ることと、改めて日本の良さも際立って気づきます。

列挙するとキリがないのですが、ぱっと思いついたのは以下です。

  • 木々が生い茂っていて、木陰で直射日光を避けて走れる

  • 土が柔らかいので、体への負担が軽減される(海外ランナーからすると、滑りやすいとのことです)

  • トレイル(登山道)が他国よりも整備されている

  • 各エイドで大概トイレがある(アジアだと、無いところもある)

  • 途中棄権しても大会側の送迎がある(海外だと自力で帰る必要がある)

  • 修験道といった、霊験あらたかなトレイルも存在する

  • 四季がはっきりしていて、1年でいろんな姿の山を走れる(南方にいくと、基本的に雪は積もらないし、平均的に暑い)

  • 野良犬が居ない(海外トレイルだとコース上でちょくちょく遭遇する)

日本って、国土の7割は山で、あちらこちらに山があります。たいていの山は、木々に覆われていて林だったり森だったりします。木があると景色が楽しめないということにもなるのですが、逆に言うと直射日光を避けられるし、多少雨が振っても木が守ってくれる。日本にいるとこれが当たり前だと感じるが、海外に出ると山にあまり木がなかったりします。

あと、最近 NewsPick の動画で日本の山に関する独特な文化に関して、YAMAP 創業者の春山さんの以下の動画が結構私も共感する部分もあったので、紹介しておきます。

総括

アジアの山を走り始めて、本来なら8年と語りたいのですが、2020年〜2022年の秋の約3年間は例の流行り病で渡航ができなかったので、実質5年ぐらいになります。2022年10月に台湾の水際対策が大幅に緩和されて、隔離なしで入国できるようになったので、速攻で2022年11月にアジアトレイルの活動を再開しました。

そして、実は昨日(2023年2月26日)は、地元の大阪マラソンを走りました。日本人はもちろんですが、台湾や香港、韓国、マレーシアなどから多数の国からも参加されていたので、この光景がようやく復活したんだなーと実感しました。

2023年は本格的に活動再開するので、よろしくおねがいします!


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?