言っていることが妥当で、筋が通っているかを確認するための3つのレベル(CLR連載④)
こんにちは。ゴール・システム・コンサルティングの但田(たじた)です。言葉で意思疎通するための「7つのCLR(※)」の、考え方と使い方についての連載4回目です。このシリーズは、TOC(制約理論)の知識の有無に関係なく、お仕事や日頃のコミュニケーションに役立つ内容なので、多くの方にお読みいただけたら嬉しいです。
はじめに
今回は、CLRの3つのレベルについてお話します。また、CLRと切っても切り離せない「因果関係」についても、軽くおさらいしておきます。
※CLR(シーエルアール)とは…「Categories of Legitimate Reservations」という英語の略称で「言っていることが妥当で、筋が通っているかどうか」を検証するための7種類のチェックポイントのことです。
詳しくは連載1回目をご覧ください。
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CLRには順番がある
これまでに「明瞭性のCLR」と「存在のCLR」の回でもお話してきた通り、CLRには順番があります。CLRは全部で7つありますが、使う順番に合わせて3つのレベルに分類されています。
今日のメインは「CLRの3つのレベル」についでですが、その前に、CLRを語る上で、避けては通れない「因果関係」について確認しておきたいと思います。
何かを言葉で説明する時に、なくてはならない「因果関係」
これまでに連載で取り扱ってきた「明瞭性(どういう意味ですか)」と「存在(本当にそうですか)」のCLRは、単独の文章に使えるCLRでした。しかし、現実に私たちが誰かと意思疎通する時には、単文で完結することはほとんどありません。
このように、私たちは複数の文章を組み合わせて言葉のコミュニケーションをしています。そして、上記の例にあるような、原因と結果の関係のことを「因果関係」と言います。
「○○だから、××しておいて」など、因果関係をふまえて指示や主張をされると、もっともらしく聞こえます。しかし、時には「え?それってつながってるの?」と、聞いていてモヤッとするような因果関係を耳にすることもあります。
たとえば、私の知り合いのおばちゃんは、私からすると、いつも因果関係がよくわからない喋り方をするので、私はいつも困惑していました。
私には、このおばちゃんが言っている因果関係っぽいことの意味がサッパリわかりませんでした。後でよく聞いてみると、その地域では、農業機械の展示会で、野菜を特売したり、豚汁を振る舞うのが恒例になっていたのです。おばちゃんは、機械の展示会に立ち寄って、豚汁をもらって、それが美味しかったということが言いたかったのでした。
このように「提示された因果関係がよくわからない」ということは、ビジネスシーンでも頻繁に起きています。そのため、CLRは、単文だけではなく、因果関係に対しても設定されています。
CLRの3つのレベル
前置きが長くなりました。ここからはCLRの3つのレベルを見ていきましょう。TOC思考プロセスに登場する様々な用語について解説している『TOCICOディクショナリー』では、CLRの3つのレベルを以下のように区分しています。
ここからはそれぞれのレベルについて見ていきましょう。
レベル1のCLR:意味がわかるか?
レベル1のCLRに含まれるのは「明瞭性のCLR」だけです。連載2回目(明瞭性のCLR)でお話したように「相手が言っていることをちゃんと理解する」ことが、CLRで最初にやることです。
レベル2のCLR:本当にそうか?
レベル2のCLRに含まれるのは「存在のCLR」と「因果関係のCLR」です。ここでは、言われた内容や、そこで示された因果関係が「本当にそうか?」という妥当性を確認します。「存在のCLR」については連載3回目で詳しくお話しましたが、「因果関係のCLR」については次回とりあげます。
レベル3のCLR:表現をどうやって改善するか?
レベル3のCLRに含まれるのは、「原因不十分」「追加的な原因」「因果の逆転」「予想される他の結果の存在」という4つのCLRです。こちらも、これからの連載でひとつずつ詳しく見ていきます。
レベル1とレベル2のCLRは、「表現を精査する」ためのCLRですが、レベル3は少し位置付けが違います。レベル3のCLRでは、精査が不十分な表現を手直しするために、言葉を変更したり、不足していたり省略されている要素を補うなどの提案をします。つまり、レベル3のCLRは、「表現をより良くするサポートをする」ためのCLRです。
なお、CLRについて「表現を精査する」という説明をすると、「言葉(だけ)を整える」という意味合いが強く聞こえるかもしれないので少し補足しておきます。
CLRでは、言葉や文章の表現だけではなくて「表現しようとしている内容そのもの」についても検証しています。
「表現を精査する」ことを通じて、「表現しようとしている内容そのもの」の正しさや、必要十分性を検証し、気になることがあれば立ち止まって再検討する…そのための「ちょうど良いチェックの観点」であることが、CLRの大きな魅力です。このあたりの具体的なケースは、今後連載していく「CLRのレベル3」のところで詳しく見ていきます。
ちょっと説明が長くなりました…。まとめると、レベル1と、レベル2は、言葉で表された内容がしっくり来るかをチェックするためのCLRで、レベル3は、そこで示された内容を検証し、より適切にするためのCLRです。
CLRの3つのレベルのお作法
『TOCICOディクショナリー』では、CLRを使って、相手の表現を精査する時の手順についても説明しています。
精査する人は、気になっていることが解消されるまで、レベル1・2・3のCLRを順番に進めて行きます。つまり、最初は意味が理解できるかをチェックし、次に、書かれている内容や因果関係が妥当かどうかを確かめ、最後に、より的確な表現に改善するための提案をします。
一方で、精査される側の人もまた、指摘されたCLRを受け容れるかどうかを、選ぶ自由があることも、ディクショナリーでは示されています。
なお、上記はあくまでも、誰かが作ったロジックツリーを、他の人が精査する際の手順です。
前回・前々回でもお話しましたが、実際の会話のなかでCLRを活用するときは「片方が相手を精査する」ような場面はあまり出てこないと思います。そのため、日常生活のなかでは、もう少し場面に合わせた活用が柔軟な使い方をする必要が出てきます。このあたりは、引き続き、各CLRの回のなかで考えていきます。
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ここまでご覧いただきありがとうございました!
次回は「因果関係のCLR」を取り上げます。引き続きよろしくお願いいたします。
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