言葉でのやりとりが下手なせいで仕事が滞ってしまうことは、実は頻繁に起きている(CLR連載①)
こんにちは。ゴール・システム・コンサルティングの但田(たじた)です。今回のnoteから、「言葉のやりとり」が上手になるためのチェックポイントについてお話していきます。
皆さんは、仕事をしているうえで(あるいはプライベートの人間関係のなかでも)、言葉で何かを伝えることにしくじったな…と思った経験はありますか?あるいは、他の人を見ていて「あの人は言葉のやりとりで損をしているな」と思ったことはありますか?
言いたいことが伝わらないのはとてもしんどい
一生懸命伝えたのに、「何が言いたいのかわからない」と言われ、受け止めてもらえなかったり、上司の指示通りにやったはずなのに、後になってから違うと言われた経験がある方もいらっしゃるでしょう。
あるいは、相手が言っていることが、いまいち分からないと思いつつ、聞き返せなくてそのままにした結果、後で叱られてモヤモヤした方もいらっしゃるかもしれません。
私自身も経験があることですが、言葉がうまく伝わらないのはもどかしいし、その繰り返しのなかで「何を言っているのか分からない人」として認定されてしまうと、コミュニケーションの入口で拒絶されているようで、とても悲しい気持ちになります。
「怒られやすい人」の多くが、言葉のやりとりで損をしている
さらに、言葉でのやりとりが下手だと、気持ちのダメージだけでなく、仕事の実務上でもトラブルにつながりやすいです。私は以前、若者の就職支援に関わっていましたが、その際に様々な人の仕事ぶりを見ていたところ、仕事で怒られやすい人の多くが、言葉のやりとりで失敗していることに気付きました。
その典型的な例は「あいまいな言葉」をあいまいな理解のまま受け取って、仕事をしてしまうこと。たとえば、上司から「この仕事、急ぎでやっておいて」と言われたような時です。「急ぎ」という言葉には、人それぞれのニュアンスがあるので、そのまま鵜呑みにしてしまうと、後から「それじゃ遅いよ」と言われたり、「そんなに急がないで、先にXXの仕事を終わらせてからで良かったのに」と言われたりしてしまいます。
せっかく真面目で意欲もあるのに、言葉のやりとりが下手で怒られてばかりいるせいで、自信を失ったり、傷付いてしまう方を見掛けると、本当に気の毒だし、もったいないなという気持ちになります。
優秀な人が集うプロジェクトの場でも、同じようなことは起きている
今の例を読んで「自分はそんな初歩的なミスはしないよな…」と思った方もいらっしゃるでしょう。しかし、難しいプロジェクトの現場でも、実は似たようなことが起きています。
たとえば、みんなで取り組むプロジェクトの中で頻繁に出てくる「3文字英語などのビッグワード(例:E2Eなど)」や、「○○力(例:プロマネ力など)」についての理解が関係者それぞれに異なっている結果、〆切間際になったところで大きなヌケモレが明らかになったりするような場面に、遭遇したことがある人は多いのではないでしょうか。
「結論先出」とかではわからない、もっと手前の言葉の使い方
ビジネス上の文章のお作法として、「結論先出」とか「要点を明瞭に」などの知識を持っている方は多くいらっしゃるでしょう。また、ロジカルシンキングの勉強をして、MECEとかWHYSO/SOWHATなどのテクニックを習得した方もいらっしゃるでしょう。
けれども、前述のような、もっと基本的な「言葉でのやりとりを上手くやるためのコツ」については、意外と世の中に出回っていません。
そして、このような「言葉のやりとりを上手くやるためのコツ」として、押さえておくと便利なのが「CLR」と呼ばれる7つのチェックポイントです。
“考える道具”のひとつとして人気の「CLR」とは
CLR(シーエルアール)は、「TOC思考プロセス」という論理的な問題解決プロセスの知識体系の一部で、「Categories of Legitimate Reservations」という英語の略称です。「論理の正当性の検証」などと訳されています。
CLRとは、要するに「言っていることが妥当で、筋が通っているかどうか」を検証するための7種類のチェックポイントのことです。
CLRは「教育のためのTOC(TOCfE)」という、子供のためにアレンジされたTOC手法のなかでも紹介されており、子供だけでなく、大人にとっても実践的で役立つ考え方として人気があります。
日本では、日本各地でTOCfEの勉強会が開かれているので、TOCfEを通じて「CLR」を知ったという方も多いかと思います。なお、TOCfEで紹介しているのは、子供向けに選んだ4つのCLRですが、実際のCLRは7種類あります。
この7種類のCLRは、ビジネスパーソンにとって非常に有用です。TOC全体を学ばなくても、この「CLR」を押さえておくだけでも、日々の仕事で「考える」ためのヒントになることでしょう。
「CLR」を押さえておくと、できること
CLRの使い道は、主に2つあります。ひとつは、「自分が言葉にしようとしている内容が、わかりやすく、筋が通っているかどうか」をチェックすること。そして、もうひとつは「他の人が言っていることを、きちんと理解できているか」をチェックすることです。
ちょっと説明が長くなってしまいましたが、では、CLRを知っていると具体的にどんな役に立つのでしょうか?前半でお話した、「この仕事を急ぎで」と言われた時の場面で考えてみましょう。
前半の例では、「怒られやすい人」の多くは、あいまいな言葉をそのまま受け取っているというお話をしました。逆に、怒られにくい人の大半は「あいまいな言葉のやり取り」について、理解を確認するワンクッションを挟んでいます。
「この仕事、急ぎでやっておいて」と言われた時には、「何時までですか?」とか、「今、XXの作業中なので、それが終わってからで大丈夫ですか?」など、〆切の時間や、優先順位を確認しているのです。
上記はとてもシンプルな一例ですが、CLRを身に付けると、言葉をやりとりする上でのチェックポイントによく気付くようになり、誤解を減らすことができるようになります。
7つのCLR
7種類のCLRは、以下の通りです。日本での和訳については書籍や文献により様々なので、英語を併記します。
明瞭性についての懸念 ( clarity reservation )
エンティティ(事実・実体)の存在についての懸念
( entity existence reservation )因果関係の存在についての懸念 ( causality existence reservation )
原因不十分についての懸念 ( cause insufficiency reservation )
追加的な原因についての懸念 ( additional cause reservation )
原因と結果の逆転についての懸念 ( cause-effect reversal reservation )
予測される結果についての懸念 ( predicted effect reservation )
CLRの名前だけ見ても、あんまりピンと来ないですよね…。というわけで、これからの連載のなかで、7つのCLRについて1個ずつ例を挙げて説明していきます。
TOCfEのCLRで少しだけ誤解されていること
前述の通り、日本では、TOCfEを通してCLRを知った方が多いかと思います。TOCfEで学ぶ、前半4つのCLRはとても有用ですが、ちょっぴり誤解もされているように思います。それは、CLRは「読み上げてしっくり来るかのチェックポイント」として認識している方が多いのではないか、ということです。
私自身、CLRを初めて知ったのはTOCfEの認定コースで、すごく便利なツールだと感動したのですが、4つのCLRを学んだ私は長年、CLRとは、論理的にしっくり来るかをチェックするセンスを高めるようなものだと受け止めていました。
しかし、7つのCLRを改めて勉強していくと、CLRとは「読み上げてしっくり来るか」だけではない、リアリティに基づいた論理の検証に役立つものであり、ビジネスで日常使いする上でも、7種類全部を押さえておくことがとても役に立つと考えるようになりました。このようなことも、7つのCLRについてお伝えするなかで、皆様に実感しただければと思っています。
ここまでご覧いただきありがとうございました!今回は少し長くなってしまいました。これからの連載を通して、皆さんとも、7つのCLRの面白さを共有していきたいと思います。引き続きよろしくお願いいたします。
▼CLR総まとめ記事も作成しました!
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