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博士がゆく 第19話「寒いと実験がうまくいかない③」

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前回のつづきから)

共用の実験スペースは、使い終わったら片付けておくのがマナーだ。などとまじめな学生を気取ってみるが、研究室に配属されたばかりのころはどうでもよかった。博士が実験スペースをキレイにするようになったのは実験が楽しくなってからだ。

片付けや考え事をしていると1時間はあっという間に経ってしまう。器具からポリアクリルアミドゲルを取り出してタンパク質を染色するクマシブルー溶液に浸漬する。クマシブルーはタンパク質に含まれるアミンやカルボキシ基にイオン結合するため、タンパク質を青色に染めて可視化することができる。

クマシブルー溶液に浸漬した直後はゲル全体が真っ青だが、そこから脱色液に浸漬することでタンパク質がないエリアを脱色していく。この染色の過程に約2時間ほどかかる。

脱色液に1時間ほど浸漬したゲルを取り出して観察する。バンドが3本見えれば成功なんだが、バンドは2本。

失敗だ。

「プロトコル通りやっているのになんでなんだろうなぁ」

ここまでさんざん失敗を繰り返してきた博士(ひろし)はこんなことではもう動じない。もう1度プロトコルを初めからやり直す。反応液を再調整してインキュベーターにセットしようと扉を開けると、アイツがいた。

「はぁ、はぁ。やぁ、ひろし君。調子はどうだい?」

インキュベーターを確認すると、50℃に設定してある。サウナというほどの温度でもないと思うが、こぶし大の青いぷよぷよとした細胞くんと名乗る物体が汗(?)をかいて座っていた。水分が蒸発しているからか、いつもより心なしか小さい気がする。

「わるいんだけどひろし君、タッパーに水を入れて来てくれないかい?これ以上水分を失うと細胞膜の構造を保てなくて死んでてしまいそうだ」

細胞くんは真剣な顔でそう伝える。博士(ひろし)は急いでメスシリンダーに水を1リットルはかり取りタッパーに流し込む。NaClを9グラムを加えて混ぜれば生理食塩水の完成だ。タッパーをインキュベーターにもっていくと細胞くんはタッパーをよじ登り生理食塩水の水風呂につかる。

「はぁ~。生き返る~」

細胞くんはあっという間に元のサイズに戻った。

「とっさに生理食塩水を作ってくるとはさすがひろし君だね」

「まぁな」

細胞をただの水にいれては、細胞質内の浸透圧が高すぎて、水を取り込みすぎて破裂してしまう。実験で細胞を扱っていたころの知識が役にたってよかった。どうやら細胞くんは名前の通り本当に細胞らしい。

「今日も何かお困りなのかい?」

(つづく)

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