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博士がゆく 第32話「はじめての学会発表-いそいで実験編⑤」

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前回のつづきから)

「わかった。もう変なことは考えないようにする」

「やっぱりデータ誤植を本気で考えていたんだね?」

細胞くんにそう言われてギクリとした。思わず口がすべった。細胞くんを見ると心なしか笑っているようだ。

「でももう心配はなさそうだね。僕はそろそろ行くよ」

「また他の学生のところに行くのか?」

「その予定さ。学会が近くなっているから、もう何人か研究室に残っているみたいだからね」

「そんなヤツいるんだな」

他の研究室の学生が夜遅くまで実験しているかどうかなんて気にしたこともなかった。

「女の子もいるから、研究の話が合えば仲良くなれるかもしれないね」

一瞬気分が高揚したが、それを細胞くんには悟られたくない。

「かもしれないな。さて、プレッシャーに負けない方法も教えてもらったことだしオレも今日はこの辺で帰るか」

「それがいい。また明日からいつも通り実験頑張ってね。アッ!!!!」

そう言って細胞くんが指さす方向を見た博士。やられた。すぐに細胞くんが元居たところに視線を戻すが、細胞くんは消えた後だった。

「なんで消えるところを見られたくないんだろう?」

博士はバックパックに荷物をつめて家路をたどる。その日はよく眠れなかった。

(つづく)

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