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医療費助成と国の指定難病認定-TAFRO症候群の場合(2020年1月時点)

実は私自身も手術と入院を経験したことがある。良性膿腫の摘出でたった1週間の入院だったから、手続き等は全部自分でやっていた。その時の経験がこんな風に役立つとは思わなかったけど、結果「やっててよかった」とちょっと思ったよね。

高額療養費制度

入院といえば「医療保険」がまず浮かぶ。「日帰り入院から対応」という保険会社のCMも印象に残っている人も多いと思う。だけど入院手続きで最初にやるべきことは「健康保険」の手続きの方なのだ。

健康保険に入っていれば通常でも3割負担などになっているけれど、入院は間違いなく外来通院よりもお金がかかる。それを所得に応じた一定の金額のみ自己負担をし、残りの額は「加入している健康保険」が代わりに負担してくれるありがたい制度が【高額療養費制度】

高額療養費とは、同一月(1日から月末まで)にかかった医療費の自己負担額が高額になった場合、一定の金額(自己負担限度額)を超えた分が、あとで払い戻される制度です。医療費が高額になることが事前にわかっている場合には、「限度額適用認定証」を提示する方法が便利です。
引用-全国健康保険協会

会社の健康保険でも、国民健康保険でも同じ制度が利用できる。加入している健康保険組合(国保なら役所など)に申請をして「限度額適用認定証」をもらう。

市町村によっても異なるかもしれないけど、国保の場合は即日発行してくれるところもある。会社の健康保険組合は申請してから数日〜10日くらいかかるところもあるみたい。

適用は「認定されたその月の1日」から開始される。だから入院が分かった時点ですぐに申請して(父のところは1ヶ月前から事前申請が可能だった)認定証をもらったらすぐに病院に提出するのがスタンダード。父のケースのように緊急入院した場合でも「その月中」に認定されれば、入院日に遡って適用されるからご安心を。

もしも月をまたいでしまった場合、また「知らなかった…」と申請が遅くなってしまった場合には、一旦全額(3割負担など)を病院に支払い、後から健康保険より限度額を超えた分を払い戻してもらう手続きを取る。払い戻しには時間がかかるようなので、できれば限度額適用認定証の申請は早い方がいいかも。

また、認定証には期限があるので、期限が切れる前に再度申請をする。父のケースでは期限を1ヶ月/3ヶ月/6ヶ月/1年から選ぶことができた。

救急搬送されたのは11月下旬だったけど、知っていたから急いで手続きをしてなんとか月内に認定が下りた。ICUはベッド代が高額になるのでちょっとヒヤヒヤしていたんだよね(汗)組合も役所も土日祝日は基本的に対応してもらえないので注意が必要かもしれない。

国の指定難病医療費助成制度

「難病」って何を持って定義されるんだろう?と思っていたけれど、原因特定や治療法の確定がされていないこと、慢性化して治療が長引くもしくは完治しないことなどが挙げられるようだ。長期化する治療で経済的にも精神的にも負担が大きくなる難病患者を救済する目的で、国の制度として「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)が成立し、医療費助成の制度が確立されることになった。(参照:国の難病対策|難病情報センター

「難病の患者に対する医療等に関する法律」(平成26年法律第50号)に基づき指定される指定難病について、治療方法の確立等に資するため、難病患者データの収集を効率的に行い治療研究を推進することに加え、効果的な治療方法が確立されるまでの間、長期の療養による医療費の経済的な負担が大きい患者を支援する制度です。医療費助成の相談・申請については、現在お住まいの都道府県の相談窓口(保健所等)にお問い合わせください。
引用-厚生労働省

2020年1月現在、国が指定した難病は333ある。最初に見たときには「え?そんなにあるの?」とものすごくびっくりした。全然知らなかったからだ。こんなに多くの”治らない病気”に苦しむ人がいるんだということを今まで知る機会もなかった。関心を寄せていなかったと言った方が正しいのかもしれない。

基本的には他人事なのだ。そしていざ自分の身に降りかかってきて初めて「自分ごと」になる。仕方がないことだとも思うけど、他人事にも想像力を働かせる意識は大事だなと改めて思った。

時(話)を戻そう(ぺこぱ、笑)
TAFRO症候群がその一部ではないかとも言われている「キャッスルマン病」は、患者会や研究班の働きのおかげで2018年4月に331番目の指定難病に認定されたのだけど、TAFRO症候群については診断基準が定まっておらず、認定までにはまだ年数がかかるらしい。

また、ひとくちに「難病」と言っても一人一人症状が違うし、重症度によって認定されるかどうかも助成額も分かれる。その病名と診断されれば誰でも指定難病の認定を受け、医療費助成されるとは限らないのだ。

例えば父の例で言うと。
キャッスルマン病の診断基準の一つに「リンパ節の腫れ」があり、TAFRO症候群にはリンパ節が腫れるタイプと腫れないタイプの症例があるそう。2019年12月現在では、リンパ節の腫れるタイプのTAFRO症候群の場合は【キャッスルマン病の重症】という形で指定難病の認定を受けられるケースがあるので主治医に相談してみてください、と患者会が教えてくださった。

難病認定と父への告知問題

転院する前の地元の病院で主治医だったグレイ先生は「リンパ節が少し腫れているから」リンパ節生検をするとおっしゃっていた。でも転院時の診療情報提供書には「castleman病の組織像に合致しない」とも書かれていた。

とにかくすぐにスター先生に聞かなくちゃと思ったけれど、その前にまずは妹と父本人に相談してからだと思いとどまった。

原因不明のまま大学病院に転院し、体の辛い症状から意識が混濁することも多かった父には、自分がTAFRO症候群という病気だということをまだ知らせていなかった。難病の認定には先生の判断が必要なのはもちろんだけど、どこかに「それを父が知らないというのはどうなんだろう?」という気持ちがあった。

一方、妹は「難病だなんて知ったら、父が落ち込んでしまわないか?」と懸念していた。病名の告知は急性期を過ぎてからでも遅くないのではという意見だった。

たっぷり迷った。自分だったら間違いなくすぐに知らせて欲しいと思うからだ。自分の体に何が起きているのか、なんの病気でこうなっているのか、知らないままでいるのは嫌だと思うはずだ。

でも、父は?私とほんとうに同じ?妹が言うように落ち込み、気力がなくなってしまったらどうする?

指定難病の認定を受ければ経済的には負担が少なくなる。TAFRO症候群の治療薬も薬価が高いものがあり経済的な理由から治療を諦める患者さんもおられると聞く。それに認定には時間がかかるはずだから申請は早いほうが絶対いい。

だけど急性期の今、父の大きな負担は圧倒的に「症状」なのだ。告知することで精神的な負担を増やすのは避けたい。そもそも父に伝えずに手続きを進める選択だってあるわけで、私がただ「父と一緒に」とか「自分なら相談して欲しい」と思っているだけなのかもしれない。

ぐるぐると迷い、悩む。
それでも答えはやっぱり私が自分で出さなきゃいけないんだよな。

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