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アクテムラとステロイドパルスのダブル処方でアタック【大学病院ER15日目】

週が明けて。
スター先生の計画通り3日間のステロイドパルス療法を終え、3回目のアクテムラ投与が行われた。

アクテムラは投与の間隔が決まっている。この時の父は1週間に1回。だから金土日とステロイドを点滴して月曜日のアクテムラの日に合わせる形になっていた。

パルスの翌日にアクテムラを投与する意図は何かあったのだろうか?同じ日にステロイドとアクテムラを併用させないように…とか?

スター先生は『タイミングとしてちょうどいいと思います』とおっしゃるだけ。いや、私もその部分を質問していないだけなんだけどね。

こうなったら細かいことはあまり気にしないことにしよう。

Twitterで繋がった方たちから「3回目のアクテムラで効き目が出て来た」といった体験を教えてもらっていた。それにステロイド治療が加わって「ダブルアタック」ということに(風邪薬のCMっぽい)。

今のところステロイドの副作用は不眠だけのよう。このまま良い効果が表れるのを期待しつつ、血液検査の結果とかをもらえたら効果が表れたかどうかを知れるかもしれないと思い、折を見て看護師さんに相談しようと思った。

アクテムラもステロイドも効かなかったら?!

TAFRO症候群は急激に全身炎症が進行するため、治療が遅れると命に関わるケースも多い。この頃は「できるだけ嫌な情報は見ないように」と避けていたけれど、血小板減少により出血傾向が進み脳出血を起こして救命できなくなる可能性については以前の病院でさんざん「最悪のケース」として言われていたし。

それ以外にも、治療薬が合わない・効かない、多臓器不全、呼吸困難や肺炎、さまざまな合併感染症、さらに「診断そのものの遅れ」などで実際に亡くなる方の症例も(見たくなかったけど)知っていた。

スター先生は父が転院してくる前から、いろんな可能性を考慮して治療計画を立ててくださり、私たち家族に説明してくださった。その可能性の一つが「この治療が奏功しなかったら」というものだ。

ステロイド治療はTAFRO症候群の第一選択、そしてトシリズマブ(アクテムラ)が第二選択。父の症状では順序が逆になったけれど、この2つを治療方針とすることは先生からすでに説明があった。

※ちなみに一般的にはシクロスポリン(ネオーラル)という免疫抑制剤を使うのが第二選択らしいのだが、父は透析が必要なほどの腎機能障害があったため選択から除外されていた
参照-キャッスルマン病研究班治療指針

そして万が一効かない場合、次の選択として免疫抑制剤(抗がん剤)の投与や血漿交換などの選択肢も考えていますということも転院初日に聞くことができていた。

これがね、ものすごく心強いんだ。

いつも頭のどこかに「最悪のケース」と併せて「次」もあるのだ。だからすべてをやりきるまでは諦めない。そう言う風に思えるからなんだよね。

父がこうした治療をどのように考えているかはわからなかった。そもそも転院して来た当時は症状が重く意識も混濁し、とても判断できる状態ではなかったようにも思う。

それにまだ病名すら伝えていないのだし。

アクテムラもステロイドも効かなかったら…次はいよいよ父に相談したいなと考えていたけど、スター先生の『まずは、ステロイドの効果を期待しましょう』という言葉に励まされて、少しは冷静に経過を見ていこうと思えたのかなとも思っている。

今、一番つらいと感じる症状

血液のさまざまな数値が正常範囲になければ貧血や倦怠感が襲ってくる。全身の浮腫がひどければ体を動かしにくくなる。腹水が溜まればお腹は妊婦さんのように膨れあがるし、胸水が溜まれば呼吸が苦しくなる。

TAFRO症候群はこういう全身炎症がいくつも重なって起こる病気だ。

病気と付き合いながら日常生活を送っている他の患者さんたちは、こうした「目に見えない」辛さや、再発する恐怖などと闘いながら過ごしていることを患者会の体験談やTwitterを通して知ることができた。

きっと父にも症状はあったと思うんだけど、この時はそうした「目に見えない辛さ」を実感していないように思えた。

いや、実感できなかったと言った方が正しいのかも。

立ったり座ったりすればクラクラしたり怠かったりするのだろう。動こうとすれば体が重く、呼吸が荒くなる。浮腫でパンパンな手足を思うように動かせない辛さもあるだろう。

でもどれも、今の父には「できないこと」ばかりだった。いくつもの管に繋がれベッドに寝たきり、立つ座る動作も身体を動かそうとすることもできない。

この頃の訴えは、ずっと続いている水下痢、おしりの炎症、繰り返し再発する口内炎による喋りにくさ、口の乾きなど、目に見えやすい症状がほとんど。なかでも口内炎は「伝えたいことが伝わらない」ことによるストレスに発展し、一番つらいと感じる症状のように感じられた。

口内炎はこれまでも良くなったり悪くなったりを繰り返してきたのだけど、今回は「滲みて痛くて」薬でうがいをしなかったから、だと?

もう、ウケる。
子供みたいじゃないか、父ちゃん(笑)

いやそれ以上に、これまでさんざん「一喜一憂しない」と決めてきたにもかかわらず、酷くなって喋りにくくなったら…とかちっさいことにいちいち動揺してる長女さん。アンタの方がやっぱり子供だわ(涙)

いつまで経っても成長しないなぁ、自分。

***

いずれにしても、TAFRO症候群による全身炎症が引き起こす症状に変わりない。アクテムラとステロイドのダブルアタックが良い方向に効果が出れば、もう少し身体も楽になれるかもしれない。

そしてもしも効果が見られないとしても、「次」の治療の選択肢だってある。

治療には、待つことも必要な時があるということなんだよね。

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