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必勝なき新たな道を 地層を重ねて進め:Galapagos Supporters Book⑬(前編)

シリーズAで累計13億円の資金を調達したAIR Designのガラパゴス。
そこには株主や顧問、社外取締役という形でガラパゴスを支える、たくさんの支援者の存在があります。
ガラパゴス・サポーターズブックでは、そのような外部の支援者と、ガラパゴス代表・中平の対談を通して、ガラパゴスとAIR Designの魅力をお伝えしていきます。

第13弾は、ガラパゴスに社外取締役としてご参画いただいている、新規事業開発のプロフェッショナルである守屋さんです。

■ 守屋実 プロフィール
株式会社守屋実事務所 | 代表
1992年ミスミ入社、新規事業開発に従事。2002年新規事業の専門会社エムアウトをミスミ創業者の田口氏と創業、複数事業の立上げ・売却を実施。2010年守屋実事務所を設立、新規事業創出の専門家として活動。ラクスル、ケアプロの立上げに参画、副社長を歴任後、多数企業の取締役や、内閣府有識者委員、山東省人工知能高級顧問を歴任。2018年にブティックス、ラクスルを、2か月連続で上場に導く。

聴く人を感化させるほどの熱量と自信

ーー最初に自己紹介をお願いします。

守屋:新規事業家の守屋と申します。大学生の時に初めて事業を立ち上げ、大学発ベンチャーに参画してからおおよそ30年間、新規事業しかやったことがないんですね。「新規事業の道を歩む人間」という意味で、新規事業家を名乗っています。

中平:どれくらいの新規事業を手がけて来られたんですか?

守屋:年齢の数しかやっていないのでいつでも明確で、現在は53歳なので53個です。来年の5月1日には54個になる予定です。

中平:守屋さんの経歴としては、大学発ベンチャーの後にミスミに入社されて、ミスミ創業オーナーの田口さんと新規事業専門会社であるエムアウトを創業。その後独立、という流れですよね。初めてお会いしたのは、確か2010年ぐらいでした。

守屋:そのくらいだよね。本郷を一緒に歩いていた記憶があるな。

中平:そう、当時ガラパゴスのオフィスがあった本郷で、立ち上げに参画されていたラクスルの話などを伺っていた記憶があります。そこから8年ほど空いてしまうんですけど、2019年6月、「B-SKET」というアクセラレーションプログラムの最終ピッチの際、会場で守屋さんをお見かけして。「あれっ?守屋さんですよね、覚えてますか、ガラパゴスの中平です!」と声をかけました。

守屋:もちろん覚えてたよ。全く変わらないところと、別人になったところがあって驚いた。

中平:演説みたいなプレゼンにびっくりしたと仰ってましたね(笑)

守屋:「あれ?この人政治家だったっけな」って(笑)僕の記憶だと事業家だったはずなんだけど、肩にたすきをかけているのが見えたよね。

中平:noteをご覧の皆さまはぜひ動画を見てください(笑)

同時期2019年9月のICCサミット スタートアップ・カタパルトでのピッチ

守屋:「随分と選挙慣れされてますね~」って感じになってて、衝撃だったよ。

中平:ピッチの経験があまりなかったので、色々な政治家の動画を見て「演説とはこういうもの」という、正しいのか間違っているのかよくわからない情報をインプットして参加していましたから。

守屋:でも、そこにいた誰よりもメッセージが伝わったことを憶えてる。テクニカルなことも大事だけど、腹の底からちゃんと声が出ていたからすごく自信を感じたよ。

中平:あの時は、まだ何もなかったですが自信だけは確実にありました。

守屋:最初であればあるほど、事業家の本気度合いに惹かれるものだからね。走り始める前だから、トラフィック(効果/実績)よりも人物が魅力的なのか、感化されてしまうほどの高い熱量を持っているのか。そういう意味で、出場者の中でもずば抜けていた。

中平:自信の根源は何かというと、事前に50人ぐらいにインタビューして、「間違いない」という感覚を掴んでいたんです。

守屋:なるほど。

中平:ペインはある、マーケットもある。「できるでしょ、俺たちだったら」と思っていました。

守屋:メンツ的にも、インクスでの実績をもとに「なぜできるのか」明確な根拠を持って説明できるメンバーだしね。

中平:そうなんですよ。そういえばあの時、ものすごく練習したので会場に目を向ける余裕もあったのですが、守屋さんがゲラゲラ笑って見てくれているのが心強かったです。

守屋:うん、拍手ものだったよ。

「人にしかできない」思い込みの天井が抜けた瞬間

中平:そこから味をしめてピッチコンテストにたくさん出始めました。次の日、休日で家族旅行に出かけたのですが、移動中に突然直感が働いて、「守屋さんに仲間になってもらいたい」と思ったんです。「一緒にやりませんか」と、条件をできる限り書いて送ったら、熱い返信をいただいて。

守屋:そこからの展開は早かったよね。

中平:6月に再会、8月にスタート、くらいのスピード感でした。僕たちにとって初めての顧問、初めての外部協力者です。

守屋:嬉しいね、第1号か。

中平:完全に第1号でした。AIR Design立ち上げ直後の何もないところから、守屋さんの過去のお話、例えば某R社とはどう関係を作っていったのか、とか。具体的な事例を聞いては「すごい、すごい」と、驚きの連続だったことを憶えてます。あの当時、ガラパゴスのことをどんな風に見ていたんですか?

守屋:2つの観点を持って見ていたかな。1つは、ガラパゴスという会社に対する個人的な目線。もう1つは、ラクスルの守屋として。前者に関しては、純粋に「面白い」と思っていたよね。印象に残っているのは「ロゴ」の話。実際人が多大な手間や工数をかけて作っているけれど、それが本当に価値がある工数かというとそんなことはない、と。

中平:はい。

守屋:それをAIにより自動化したら生産性が1,200倍になったという話で。それを聞いた時点で勝ちだと思った。もちろん、ロゴだけで天下を取れるとは思わなかったけど、ロゴだけで終わってしまうわけがないとも思っていたから。解像度が高いとはいかないまでも、パンと天井が抜けてるような未来が見えた。あとは、創業メンバーがインクス、つまり「金型の匠の技を可視化した」会社出身だということが信頼につながったんだよね。製造業の現場にいる親父たちは、きっと「俺のやっていることを可視化できるもんならやってみろ」って言うと思うんだけど、それを本当にしちゃった、みたいな世界でしょ。人間にしかできないというのは思い込みで、AIに任せられるということが実感できた時に、天井が抜けたなと思いました。

中平:嬉しいです。

守屋:それから、後者のラクスルを知る守屋、という立場から。ラクスルのビジネスでもある、チラシやテレビCMまで含めた広告を全自動で作ることができると考えたら、ものすごく相性が良いなと感じた。会社としても、事業としてもね。そんな2つの目線ですごく興味深く見ていた、そんな感じですね。

中平:AIR Designが始まった直後の2019年くらいだったと思うのですが、1度ラクスル社内でディスカッションしようという話になったんですよね。当日、守屋さんは同席されなくてこちらは僕1人だけだったのですが、いきなりボスキャラみたいな方が数人出てきて...。「機械学習ってどうやってんの?」とか、めちゃくちゃ詰められたのを憶えてます。

守屋:なぜか圧迫面談だったんだよね(笑)

中平:楽しい機会でした(笑)僕も負けずに応戦していくうちに良い関係ができていきましたね。

守屋:ラクスルの最初のサービスである印刷物って、紙にインクを載せるという基本価値はあるんだけど、結局反応がないと意味がないからね。マテリアルを乗せるだけなら材料価値しかない。そこにクリエイティブが入ってこそ本当にチラシの意味が生まれる。しかもそれは、担当者が最も効果的なものを作れるとは限らなくて、外注した方が良い場合もある。

中平:そうですよね。

守屋:それを実感してもらうには、たとえば、注文をもらった分は当然印刷して普通に納品する。でもそのときに、我々のクリエイティブ力を発揮した「チラシデータ」もあわせて納品してしまう。チラシをたくさん刷っている会社はチラシの効果を気にしているはずだから、我々のクリエイティブをみて可能性を感じてくれるかもしれない。追加のチラシ受注につながるし、将来的には「テレビCMデータ」もあわせて納品するとか、滑らかなアップセルも期待できる。「これはいい」と思ったよ。

中平:カバーできること、できないこともよくわかったので、ラクスルさんとの取り組みは本当に良い経験になりました。

守屋:僕が役員で入っているサウンドファンもAIR Designを利用しているわけだけど、LP(ランディングページ) 以外に、テレビ CM との連動なども含めてノバセル(ラクスル社のサービス)とガラパゴスでサポートするという話になって。その時はうちの強さを実感する場面があってよかったよね。

売れた勢いにまかせて聞く耳を失わないこと

中平:サウンドファン社の事例も同じくらいのタイミングかと思いますが、サービスが2019年の9月に立ち上がって、翌年の4月に初めての資金調達をしました。そこまで守屋さんには毎月壁打ちの機会をもらって、サービスを磨きあげて。ようやく資金調達ができたと思った矢先にコロナがやってきて、どうなることかと思ったものの、インターネットへの広告出稿量が増えたことで結果的に追い風になりました。そして2020年8月に役員の体制を整備する中で、守屋さんに社外取締役へご就任いただきました。

守屋:1年間の選考期間を経て(笑)ようやく採用してもらえました。

中平:その時期、資金調達直後ではあるものの、伸び悩んでる感覚があったんです。「ICC」というカンファレンスに参加して周りのスタートアップ陣のピッチを聞いている中で、「うちのサービス、解約率が高いんじゃないか」と実感したんですよね。ちょうどその時、守屋さんとのミーティングがあって、怒られました。「お前らの価値って何なの?」って...

守屋:ちょっと大袈裟だよ(笑)

中平:受け手としては、それくらいの感覚で言葉が響きました。「そうだよな、そもそも俺たちの価値って何なんだろう」って。サービスを立ち上げて1年だったので、それを考えるには良いタイミングだったとも思います。

守屋:最初にがむしゃらに売るというのは良いとして、売って一巡した後に顧客が離反しているなら、その現実に向き合わないといけない。それなのに「売れているから俺たちはすごい」みたいな考えを持っているとまずい。穴の空いたバケツに水がたまるわけないんだから。でもそれはどこの会社も通る道なんだけどね。ミスミも、ラクスルも同じ。

中平:そういう時って、意外と本人たちがよく分かってないんですよね。「お試しで買ってくれたけど、価値を感じてないからやめるだけ」という話なんですけど、そんな単純なことにすら気づいていなかったんです。

守屋:同じ内容を、当時も話していた記憶があるな(笑)

中平:サービスが持つ「そもそもの価値」について再定義するための議論を、1年ぶりくらいにしました。そこから徐々に回復していって、継続率も売上もぐっと上がったんですよね。次の資金調達につながる良い流れだったと思います。

守屋:うちの会社って、少なくとも当時は思いっきり「男子校」だったじゃない?

中平:はい、完全にそうですね。

守屋:気心が知れた同年代で事業を始めると、勢いがある時は集中力と突進力があるんだけど、悪く言うと聞く耳を持たない事も多い。そういう意味では、聞く耳を持ってくれたことは嬉しかった。

中平:あぁ、なるほど。

守屋:聞く耳を持たない間にだいたい何かこじらせるんだよ。顧客が離れていることに向き合わずに「俺達は大丈夫だ」とか言ってると、早い段階で注目してくれたお客さんがどんどん離れていく。その代償は大きい。

中平:僕たちの場合は、「このままではいけない」という直感もあったし、真剣にアドバイスを聞いてなんとか改善に向けた道筋を見つけようと必死でした。

支援の初期から「俺たち・私たち」と一人称で考え、伴走いただいている守屋さん。
厳しくも熱いサポートがガラパゴスの成長を支えています。

後編に続く(リンクは以下)


<ガラパゴスでは、一緒に働くメンバーを募集中です!>

(文責:武石綾子・髙橋勲)