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海外のチェーンストアのキャンペーンの仕組み N169

 海外のチェーンストアの仕組みのうまさにはいつも驚かされるが、オーストラリアに関して言うとチェーンストアを外してどうメーカーが市場に入り込む余地があるのか?と思わされるほどバイイングパワーは強い上に流通経路の選択肢がほぼ皆無と言える。だから強いブランドこそ一気にSPAだったりDTCが流行するのがよくわかる。消費者もチェーンストアに飽き飽きしているのだ。  

 そんなオーストラリアのチェーンストアが画一的に皆やっているのが会員カードだ。購入ごとにポイントが貯まるのだが、日々キャンペーンやクーポンがメールで配信されてくる。しかもそのキャンペーンやクーポンはパーソナライズされているのだ。例えば自分が過去に購入した商品の値段が25%オフで売られているとか、過去に購入した商品に関連した商品がレコメンドされるとか、1ヶ月前に購入した商品をそろそろ新しいのが必要では?とリマインドしてくれる。  

 非常に機械的ではあるが、週に2―3通、多いところは1日1通とか2通とかメールで送ってくる。こうなると毎朝の仕事が新聞を読んでから、これらのメールを流し見して消すことからはじまる(きちんと見てしまっている時点でこれらの情報は有用であることを証明してしまっている)。しかも会員になっているチェーンストア(もちろん会費は無料で困ることはメールがひたすら送られてくることくらい)はスーパー1、酒屋2、ドラッグストア1、スポーツ用品チェーン1といったところ。 

 またスーパーの手口は基本的に定価で売りつつもたまに割引をすることを繰り返している。そして各種メーカーのどれかが割引になってそれが集中的に売れるようになっている。例えば500円のチョコレートが5ブランドくらいあって、1つは40%オフ、もう1つが25%オフ、あとは定価のような品揃えだ。自分の好きなブランドがあると定価の時とディスカウントの時で二倍ほど値段が違うので、慣れてくると買いだめをするようになる。が、それはメーカーやスーパーの罠にはまっているのかもしれない。  

 何れにせよ、いってしまえば機械的なシンプルなパターンに沿ってひたすら焼き鳥を焼くようにこまめに回しているようなオペレーションだ。それに比べると日本は会議に次ぐ会議で知恵を絞り出してどう消費者を喚起するか?を追求したキャンペーンを打ってくる。そして少なくとも会議が多すぎるが故に生産性は低くなってしまうのだが、200円のチョコレートをせいぜい180円くらいで販売して利益を上げてくる。  

 ここで大事なのはオーストラリアのチョコレートの定価は500円なのだ。そして半額で売っても250円なのだ。一方日本は定価が200円で値引きを抑えて180円にしているのだが、オーストラリアはもともと物価が高いとはいえ、最初から価格が引っ張られるのを見込んで高く設定しているのではないか?ってこと。そして実際の購入に至るwillingness to payを理解していながら、しばしばロイヤルティのある消費者に高値をつかんでもらって利益を倍増させることを狙っているんじゃないかと考えさせられてしまう。  

 もちろん一方で何も考えてないから価格が上がってしまって、何も考えてない(考えたくもない)から機械に任せて勝手にメール配信して(何も考えない)消費者も来店してしまうってことをやっているのかもしれない。

  この前者であれ後者であれ、日本が学ぶことができるのは実は会議会議を繰り返して考えて考えて考え抜いても、最初のスタート地点が間違っている(この例では定価設定がそもそも間違っている)とか、考えることをしない方がうまくいく(この例ではメールに機械的に丸投げしてしまう)こともあるかもしれないと言うことだ。

  つまり10万円の利益を得るために十人くらいの人を突っ込んで会議してるようなことがしばしば起きているけど、そんなのは機械に任せて1億円くらい利益を出す話に人間は頭を使った方がいいんじゃないかってことだろう。

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