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モンテナポレオーネ通りの秘密 〜 イタリア人の審美眼

 アルマーニ、プラダ、グッチといった世界的なファッションブランドに何故イタリア発祥が多いか?という秘密を紐解いてみたい。

 マイケルポーターの「国の競争優位」によるとその国に大きな市場があり、商品力を伸ばしてくれる審美眼を持ったお客様がいることが1つの要因であると述べられている。つまり世界で最もおしゃれな通りであるモンテナポレオーネ通りこそイタリアが世界的ファッションブランドを生み出す源泉であるということだ。

 もちろん1つの通りが全てではない。イタリア人のファッション好きは筋金入りだ。実はイタリアにはセレクトショップが存在する。しかもセレクトショップは比較的小規模が多いがかなりの数で存在する。彼らは固定客を持ち固定客のためのファッションを調達するらしい。有名なブランドに限らず最先端の若手デザイナーのおしゃれブランドからナポリの老舗まで幅広くセンス良く調達をしている。そしてイタリア人は自分の通いのお店を持っているとミラノ人の友人は教えてくれた。その人の話では複数ではなく1つ持つらしい(が全員がそうかは分からない)。

 実際街ゆく人は誰もがおしゃれだ。親は子供にファッションセンス(審美眼)を教えるらしく生まれてすぐに高級ブランドを身につける。私がショッキングだったのは幼児用のモンクレールのダウンが山積みで売っていたこと。幼児用も大人用もあまり値段に差はなく10万円弱の値段だった(5年前の価格で)。しかしイタリア人は躊躇なくそれを購入していた。1-2年で着れなくなることはわかっている前提で。

 もう1つショッキングを受けた話でいうと、ファッションマーケティングの教授(プラダの顧問アドバイザーをしている)が教室に現れた時、あまりのキラキラ感に学生の一人が全身おいくら万円ですか?と興味本位で聞いたところ、フェラーリ1台分と即答した。そもそもフェラーリが1台いくらかは知らないが、相当なお金がかかっていることは間違いない。このような気が違ったような国民性こそファッションを育てる土壌を生むということだというのが身に染みてわかった経験だった。

 ファッション好きの国民を持つという内的要因を持つ一方で、外的な要因もイタリアをファッション王国に仕立て上げた。もともとフランスの方がファッション王国で特にテキスタイルはフランスの方が品質は高かったそうだ。しかし戦後からはじまるヨーロッパ統合(その結果が今のEU)プロセスの過程において、自国が比較優位になる産業を育てるため政府が戦略的にファッションやテキスタイルを伸ばす努力をしている(実際は消去法でテキスタイルになってしまったとイタリアの国際経済学の教授は皮肉って言っていた。イタリアはオリベッティやフィアットなど競争力ある企業が揃っていた)。

 ということで内実ともにイタリアはファッション王国になった。先日、イタリアで商売をされたことがある方と話をしていて、イタリア人はモノを見る眼があるとおっしゃっていたが、素材の質からデザインまでを見極めて価値を見抜く力はローマの頃から育まれた歴史の積み重ねで出来上がったものだろうと私は感じる。

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