スーパーで知る日本の牛肉文化 N170
日本人が牛肉を日常的に食べることになったのは明治時代のすき焼きがはじまりというのが通念だ。もちろんそれより昔にも食べることもあったらしいが一般に普及したのがその頃ということだ。この牛肉食の文化は西洋の影響ということができるだろうが、その西洋とは食べ方が著しく異なる。
一般的にキリスト教圏のスーパーでは薄切り肉は売っていない。基本的にステーキの形で売っている。もしくはブツ切り、あるいはミンチだ。だから海外ですき焼きだったりしゃぶしゃぶだったりをやろうとすると肉を手に入れることができない。
ある程度海外に住んでいると慣れてきてお願いをすると薄切り肉にしてくれる肉屋を見つけて常連化したり(手間がかかるので常連になると薄切りにしてくれる肉屋が多かったりする)、自分で肉のスライサーを購入して自由自在に薄切り肉をこしらえるようになってくる。
つまりしゃぶしゃぶやすき焼き、牛肉の野菜炒めとか、薄切り肉を使う料理は日本独自の食文化、あるいは牛肉の調理方法なのだ。たしかにアジア圏で薄切り肉料理を食べた記憶があるがどちらかというと日本文化の影響を受けた食事だ。タイのタイスキとか。また韓国の焼肉は日本と同じだが、本当の韓国焼肉は豚肉を食べ、ハサミで豚肉の塊をカットして食べる。
また霜降り肉が大好きなのも日本特有の現象で海外では赤身の方が一般的だ。ワギュウとして日本の牛の起源の肉も普及しているが、やはり赤身がベースだ。だからこの薄切り肉が調理方法を広げているというか、生み出していると考えても外れてはいなそうだ。
食文化研究家の永山久夫によると箸文化が薄切り肉を生んだとのことだが、その他の橋文化圏で薄切り肉の普及度合いを見ると、ステーキ型はたしかに少ないが必ずしも薄切りではない(ブツ切り、サイコロ、細切り(中国でよく見るやつ)などなど)。
したがってこの薄切り肉を文化となった土壌に日本人の本質があるはずと考えるのだ。今日はまだそれが何かわからないけど。