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アフターコロナのグローバル経済 〜 Neo Bloc economy(新ブロック経済)

 21世紀の歴史の教科書に「コロナウィルスがきっかけとなり世界は恐慌に陥り、ブロック経済化を進めた」と記載される日が来るのではないかと懸念する。まさに世界はブロック経済化に向かうための下地が揃っているのだ。

  一つ目の顕著な動きは内向き志向、ナショナリズムの台頭だ。イギリスのEU離脱、トランプのようなポピュリストの登場だ。自由貿易を推進した結果、先進国と呼ばれている地域の中間層の仕事が他国に奪われた。簡単な組み立て製造業は中国や東南アジア諸国、東欧圏などに奪われた結果、失業をした人々が生まれた。さらには自由貿易に合わせて人の移動にも規制を緩和してきた結果、ヨーロッパはアフリカ化した(最近の米国の#BlackLivesMatterも同じ現象だ)。特にヨーロッパは移民にボトム層の仕事をさせてきたその怒りが爆発をしてテロが至るところで起きるようになってきた。そして先進国世界は多文化多民族主義がかつてのアパルトヘイトや白豪主義のような白人民族主義に振れようとしている。これは白人主権の地域に住んでいると感じてやまない雰囲気だと思う。

  二つ目はEPA(Economic Partnership Agreement)だ。WTOやTPPのような多くの国が利害関係を調整するような協定を結ぶことは個別の損害が大きすぎて成立が困難で個別交渉でEPA/FTAを進める形でこの数年は決着がついたような形だ。ある意味トランプ大統領がTPPをひっくり返したことで世界の流れは決定付けられたと言えよう。まさに調整よりも切った張ったの交渉(Negotiation)の世界に入ったことは間違いないだろう。日本もこの数年で成果を出しつつある。

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 そして三つ目に米中対立である。基本的に米国は世界の発注者(輸入超過の貿易赤字国)である限り1対1の喧嘩であれば米国が絶対に勝つのだ。米国の強みは輸入規模の大きさだけではなく、資源や食料といったエッセンシャルな商品および武器やイノベーション製品(最近は特にソフトウェア)といった高度な技術や製品を他国に依存する必要がないので強気で1対1の喧嘩ができる。実際にトランプ大統領は喧嘩を仕掛けて勝負に勝った。しかしながら他の国はそうゆうわけにはいかないだろう。

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 中国への依存が強い国として中国の輸出入の上位国を見てみると、ドイツ、豪州、ブラジルといった遠方の国々の名前も出てくる。ドイツは高級品や部品、豪州とブラジルは資源を輸出しているが中国と縁を切ることは自国にとって致命的な傷となるだろう。

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  最後にこのコロナ騒動だ。日本政府はコロナの回復が早い国としてベトナム、タイ、オーストラリアといった国から渡航制限の正常化を進めようと交渉を始めた(相手国がどう捉えているかは別問題だが)。だが似たような動きは各国も行うわけで、自国の安全と経済、そして家族の絆(移民や移住者が多い国は考えざるを得ない)を優先的に進められるだろう。すると必然的に文化的な価値観や人的なネットワークなどが牽引力となり新たな世界地図を作り出すことだろう。

  東西冷戦時代はイデオロギーで二分された。だが今回ブロック経済化に進むのであれば、米中対立は大きな軸になるだろうが、もっと複雑で部分的、かつ重複的なブロック経済が生まれるのではないかと個人的に感じる。いってみればネットワーク的な個別接点の複合的な経路からなるブロックだ。インターネットが中央集権的な権力やミドルマンを無効化してきたように経済同盟もネットワーク最適化が優位性を決めることになるのか。アルゴリズムを生み出す人工知能(AI)人材がますます活躍するかもしれない。   

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