見出し画像

対話の手前にある魔物

現在は第2次組織開発(OD)ブームと言われています。
前回の組織開発ブームは1970年から1980年代にかけて盛り上がりましたが、バブルの崩壊と共にいつしか消え去り企業の中に定着することはありませんでした。その後、2000年代に入り組織開発が再燃していきます。


理由は失われた10年とか、20年とか言われている不況の中で、企業はリストラの実施、成果主義への転換、事業ポートフォリオの組み替えによるM&Aなどを盛んに行いました。その副作用として、疲弊した個人や組織を再生する取組みとして組織開発が注目を集めたのです。この時期は個人によりフォーカスが当たっていて、コーチングブームと呼ばれていました。その後、個人へのアプローチの限界から、より組織開発に期待が集まるようになったのです。


そもそも組織開発とはなんでしょうか?
立教大学の中原淳教授の著書「組織開発の探求」によると、組織開発には4つの要素があるそうです。

1.計画的な変革プロセスであるということ
2.行動科学の知識を用いること
3.組織の中で起こるプロセスを対象にすること
4.組織が適応し、革新する力を高めること

少なくともこの4つが包含しているものが組織開発と呼ばれるものです。


僕はその本の中にある一節がシンプルで分かり易くスキです。

組織開発とは、組織をWORKさせるための意図的な働きかけである


そして、組織開発の3ステップが紹介されています。

1.見える化:組織の問題を「可視化」する
2.ガチ対話:可視化された問題を関係者一同で真剣勝負の対話
3.未来づくり:これからどうするかを関係者一同できめる

組織開発を狭義に捉えれば「対話」を通じて新しい関係を構築していくことになります。ただ、この「対話」が中々難しいのです。最近は心理的安全に注目が集まり、組織内での会話の総量を増やしていこうとする動きがあります。特に上司と部下の関係ではいえば、1on1のようなコミュニケーション施策が多くの企業に導入されています。


僕は1on1が良いとも悪いとも思いません。重要なのは目的に照らして、手段としての1on1が合っているかどうかです。そこがズレていると少なくとも目的は達成しません。1on1の副次的な効果として上司部下の情報量が増えることはあっても、それが必ずしも信頼醸成(新しい関係構築)につながるかは別の次元です。


また、1on1については誰がやるか、どうやって進めるかで当然成果も変わってきます。これは研修などで実施されるワークショップも同様で、ファシリテーターの力量がかなり問われます。人と人のコミュニケーションには多くの前提と変数が存在しているため、社内の人が実施したほうが効果的なものや、第3者が実施したほうが受け入れやすいものがあります。社内でやる場合はそもそもファシリテーターに信頼がないとワークしない場合が多いです。


僕が組織開発の中で一番難しいと感じるのは、
一番「対話」すべきテーマが対話されることが少ないという現実です。


原因は一番「対話」すべきテーマは、できればスルーして向き合いたくない、抜き差しならないようなテーマであることが多いからです。関係者が腹をくくり、人と課題に向き合って、対話をするから、その先で新しい関係性が構築できるのです。これにはかなりのストレスがかかります。僕の経験でも「あぁ~、しんどいな~」なんて思いながらも向き合ってきました。


なぜ向き合えるのかというと、今向き合わないと状況はどんどん悪くなることを経験上知っているからとしか言えません。互いの価値観のずれ、認識のずれ、思惑のずれを机上に表出させて話しをすることは胆力のいることなのです。


ゆえにこの手のテーマが「対話」されることは稀なのです。よく「対話」が多いという組織を聞きますが、それ「会話」だよねという場合が多いです。「会話」が悪いわけではありませんが、組織にとって必要なテーマが語られて「対話」は成立します。


大抵はテーマから逃げようとします。「対話」で向き合うことや、その後の影響の予測から、痛みや恐れを伴う本質的なテーマを回避するために、別の論点にすり替えたりしてしまうのです。


この回避行動の裏側にある、痛みや、恐れが、
タイトルにもある「対話の手前にある魔物」です。


チームを持ち、マネジメントに関わる全ての人は、自分の責任範囲の中に自チームや、自組織の組織開発が存在していることをしっかりと認識する必要があります。表層だけの関係性の良さを目指すのではなく、目指す「ありたい組織」を実現するために「ガチ対話」を現場で繰り返すしかないのです。ましてや、マネジメントチーム内でのことであれば尚更です。


時に『HARD THINGS』かもしれません。
しかし、マネジメントはそこから逃げることはできないのです。

こんにちは。最後までお読み頂きましてありがとうございます。このnoteは僕のつたない経営や、インナーブランディングを行う中でのつまづきや失敗からの学びです。少しでも何か皆様のお役に立てたら嬉しいです。サポートはより良い会社づくりのための社員に配るお菓子代に使わせていただきます!