マガジンのカバー画像

基山瑣末のその他諸々

7
短編でも駄文でもないものを雑多にまとめたよ。
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩】崖下の先

【詩】崖下の先

突き放される感覚が欲しい
崖際で背を押される
それではつまらない

刷毛で以て一息に塗り上げた
濃紺の夜空
その真中へ仄黄色く蟠る月
陳腐な感傷的風景
そこへ風のふっと流れ込んだかと思うと
夜幕の端から竜が躍り出た
ごう
と吠え嘶く
私の鼓膜は粉々に砕け
全くの森閑に感じる
空気の震え 肌の痺れ
ただその一声の
勇猛たる残滓に酔い溺れる

秋の夜長の風物は
押し並べて物悲しい
まさしく愁い
そよぐ

もっとみる
【詩】それだけ

【詩】それだけ

残念だなあ
お前さんも
引くに引けないってツラをしてる
かなぐり捨てることも
抛つことも
全てをほっぽり出して
なくなることもできやしない

皆そう言う
目が言ってる
ツラが言ってる

誤魔化すように
繕うように
目を逸らすように
覆い隠すように繰り返す
その大義は   理由は
はてさてそんなに頼れるもんかい
この先の全てそいつに委せて縋って
なんとかなるほど丈夫なもんかい
いつか折れるんじゃない

もっとみる
【詩】繰り言

【詩】繰り言

何をしているのだろう
何をしていたのだろうと
振り返っては惑うばかりです
紙の上に結果だけがあって
その言葉を生んだ私は
先程の私で
それを読んで狼狽えているのが
今の私
川辺で石を拾っても
水の流れの一部始終は察せない
それと同じ
こんなもので何が伝わるというのか
愚昧も極まれば冷笑を買って終い

真ん中の大事な部分を撫で透かして
表層だけを削ぎ重ねた
駄言の継ぎ接ぎミルフィーユ

つまらない

もっとみる
【詩】スミメガワによろしく

【詩】スミメガワによろしく

いつも通りに翻っている
脆くなったこと
たいそう阻むこと
そういうことにかかずらって
進取を謳う
それを拝みに来たというのに

軟膏をもらっていいいかな
とびきり辛いやつ
舌に染みて
全く蟠るやつ

針の穴に
注連縄を通した気がする
放埒至極に存じて挙句
地の利を失った感覚
それだけ残ってる

「コーヒーを飲んで
苦さを噛み締めて
過去に追憶を馳せ
感傷に浸った」
やめとけ
その先には何もない

もっとみる
【詩】ムサシグン

【詩】ムサシグン

星が帳に貼り付いて
ちかちかしている
砂浜へ散らばるガラス片と
そうも違うまい
ムサシグンへ行こう
手の届くか否かの
大切を晒しに

ロールケーキは
クリームをケーキへ押し込んだのか
ケーキをクリームの周りへ巻いたのか
ムサシグンには分かるまい
あいつは飽きあぐねている
押し並べて倦んでいる

絵を見た
写真の方が上手いと
ナナメを衒った
視界がギュッと遠のいて
洋々とムサシグンで溢れた

ムサシ

もっとみる
【詩】夏の眠り

【詩】夏の眠り

ぼうッと
真っ暗な中へ点を打つ
蚊取線香を蝕む灯

のたり   くらり   ふわり
寝つけず   うねる
煙のように
あるいは
煙を浴びた蚊の
眩暈に喘ぐように

渦巻の
灰に尽きた分だけ
いたずらに
時間をとろとろと
ふやかしている

日が昇り
火が消え
陽が射す
いよいよ微睡める頃に

這う
撫でる
からかう
羽音

【しゅーるなしょうへん】荷物

【しゅーるなしょうへん】荷物

 宅配員の持つその箱に、私は全く覚えがなかった。懸賞などに応募した記憶も、通販で何かを注文した記録もなかった。ただ、宛名には、確かに私の名があった。
 私はまず、その箱の重さに驚いた。宅配員から受け取った時に思わずよろめく程であった。この1辺約30センチの立方体に、ずっしりと、岩か何かの隙間なく詰まっている様子が容易に想像できた。
 また、私は差出人を訝しんだ。この箱は「揚鶯斜美ら海」という人物か

もっとみる