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【社長コラム】2025年 日本国際博覧会に向けた日本の都市デザイン

1. 都市デザインのトップランナー  大阪

 GKデザインは1970年に開催された前回の大阪万博において、屋外環境デザイン全般を担当(※注1)した実績を通して「都市環境の道具システム化・新機能主義の道具による新風景の創出」を理念とした「道具環境論」を確立した。また、これを原点として都市環境デザイン領域を軸足としたGK設計が産声を上げることができた。

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「道具(※注2)は単位の集合によるシステム性、個体としての機能的完結性、改変可能な仮設性、場所を選ばぬ可動性、複製可能な量産性という特性を持っている。また、形態に「秩序の美」を見いだす姿勢は、モダンデザインの基本とも言える。

※注1   1970年大阪万博ストリートファニチュア計画:GKの榮久庵憲司をディレクターとし、剣持勇デザイン研究所、トータルデザインアソシェーツ、GKインダストリアルデザイン研究所の共同でデザインされた。博覧会場の屋外に設置される、案内や守衛のための有人のブースから、休憩所のシェルターやベンチ、水飲みやゴミ箱、電話ボックスや自動販売機、案内サインなど、様々なストリートファニチュアを対象とした。また、タカラビューテーパビリオンの設計は黒川紀章建築都市設計事務所によるもので、GKインダストリアルデザイン研究所はカプセル装置を担当した。
※注2 道具:GK創業者の一人、故栄久庵憲司会長が提唱した道具論で示したGKのデザイン活動の基調「モノは美によって道を得て道具となり、人は道具を得てその道を悟る」から発し、生活小物から都市に至るまでを道具という概念で通貫して捉えようという思想から生まれた。


GK設計はこれらの道具的特性とモダニズムの美意識をもって、都市に対して常に新しい環境のあり方を提案してきた。その後も国内で行われた数々の国際博覧会にも関わり、道具としての、またモダンデザインとしての時代の到達点を表現してきた。

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 しかしながら、これからの都市デザインのあり様を考えるとき、多様で力強い日本のソフトパワーによって創出され、国内はもとより世界中の人々が共有するに至った「日本を見たい、楽しみたい」という衝動をいかに受け止め、その欲求にどう応えるのかという課題に対して、われわれは単なる形態の美しさや機能性の向上にとどまらない回答を用意すべき時代を迎えたのではないだろうか。

2025年に大阪で開催される日本国際博覧会は第一級の文化イベントとして行われることは確かだが、根本的には安全で快適、かつ深くて多様な歴史と文化を内包する世界でも稀有な都市大阪」に行って楽しみたいという人々の思いが結実して実現したものであるとも言える。まさに大阪は、これからの都市デザインを考える上での最先端の答えを求められるトップランナーとなったのである。


2. インフラ(都市基盤)をつくる時代から、それを使って楽しむ時代へ

 大阪は極めて仮設性と流動性の高い都市である。ヨーロッパであれば300年、400年も使い続けることが当然の都心部の建築でさえ、大阪では30年や40年で建て替え、更新される例も多く見られる。

 GK設計が主な領域としてきた都市環境デザインの世界はどうなっていくだろうか。社会資本に対する投資の減退の中にあって、大量消費を前提とした「フロー型インフラ(都市基盤)」から、真に価値あるものをつくりあるいは残し、長く大切に使っていく「ストック型インフラ」へと移行し始めていると言われている。

確かにインフラは建築と違って簡単には更新できないし、長期的な展望と理念が無ければ現代の技術革新スピードに対応できなくなってしてしまう。だからこそ、インフラ上に展開される都市環境デザインの分野においては、ただ造って終わりではなく、時とともに変化し更新できるような持続可能性をもつ時間的概念を含んだ仮設性や可動性が重要になるといえる。

その意味で今後の都市デザインは、これまで必要に迫られてつくり続けてきたインフラを、いかに有効に活用して都市生活の質を向上させ、楽しめる街にするかが主眼をなっていくだろう。

道路や広場などの空間をかたちづくる要素全てを量産可能なユニットにより構成し、形態の数学的整合性を持ちながらも多様な活用要求に対して仮設性、可動性を持って応えようとする、モダンデザインを基盤とした創造集団であるGK設計の「道具環境論」に基づく視点こそが求められているとも言える。

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【追加情報】 2021年2月1日 富山駅北口「ブールバール広場」のリニューアル計画発表:ブールバール広場は「緑の都市空間」をコンセプトに、可動性を持った道具を組み込んだ居心地良く歩きたくなるウォーカブルな空間を計画しています。http://www.gk-design.co.jp/sekkei/news.html  (GK設計HP)

3. 自由に移動でき、どこでも楽しめる街を目指して

 そうした考え方に基づいて、既存のインフラをうまく活用しながら「自由に移動でき、どこでも楽しめる街をつくる」をキーワードに、2025年に向け進行している幾つかの取り組みを紹介したい。

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 2021年4月に本格運行予定の神戸Port Loop は神戸市の都心部と臨海部を結ぶ新しい公共交通機関である。連接車両のバスは運行の定時性と速達性を確保し、もって利用者の利便性と快適性を確保する公共交通システムを目指しており、神戸の象徴として都心と港を繋ぎ、人々に新鮮なライフスタイルと活力を与えてくれるだろう。

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GK設計はこの新たな交通システムのトータルデザインを担当している。成熟した都市に「動く道具」である連接バスを差し込み、都市を自由に移動できる機能を付加させ、街を楽しむための「道具」として、利用者が乗りたいと思った時から降りるまで、一貫したデザインサービスを受けられるように、トータルな視点でデザイン展開を構築した。

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 一方、近年の少子高齢化や自動車減少社会に向けた、道路空間やオープンスペースの最構築に対する要求も高まってきている。国の施策においてもこれらのニーズに対応した規制緩和など様々な施策の展開が図られており、民間でも企業や商店街等との連携のもと、エリアマネジメントを中心とした様々な道路・オープンスペース利用が盛んに試行されている。

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また昨年発生した新型コロナ感染症の拡大とともに、屋外での交流や飲食の安全性が注目され、ウィズコロナの時代にはなくてはならない空間装置としてその地位を確立するのではないだろうか。その一環として、屋外公共空間を生かした新たな賑わいの創出と空間活用拡大の社会実験として行われた 『Shinjuku Share Lounge & TOKYO』や『富山市に賑わい実証実験』において、GK 設計は、まちづくりイベントとして多様なプログラムを受け入れられる装置の展開と、道路で快適にくつろぐことのできる空間づくりを目指し、可動式の仮設ストリート・ファニチャーのデザインを行った。

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 これまで我が国において、道路空間での楽しみにつながる活動は極めて規制が多く限定的であった。しかし今後の自動車減少社会を見据えたとき余剰となるであろう道路空間をいかに活用していくかは喫緊の課題であり、これらの取り組みはそのプロトタイプとなるだろう。 

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3. 2025が残すべき大阪のレガシー

 今、日本の経済指数を表す多くの表やグラフは、ほとんどが現状維持か減少傾向のさえない状況の中にあって、ひときわ異彩を放つ見事な右肩上がりの数値を誇るのが、日本を訪れるインバウンド(外国人の入国者数)の年次推移である。2011年の東日本大震災の年は620万人まで落ち込んだが、その後文字通り急上昇で伸び続け、なんと2016年は年次途中で2200万人を突破し、政府目標の「2020年に2000万人」を軽くクリアしてしまった。コロナ禍により2020年は大幅に落ち込んでしまったが、この数字はまだまだ延びしろがあるとされ、2025年の大阪万博の時には大きく回復し、多くの外国人が日本を訪れると予想されている。

 万博開催都市である大阪も相当の混雑が予想される。これまでの概念を超えて人々の活動領域を広げて考える必要があるし、効率的に移動できる公共交通も必要になる。

大阪は世界有数の水辺の都市でもある。しかし、明治以降の鉄道の発展や道路交通の拡大、大阪湾への産業の立地などにより水の都らしさが失われていったが、そうした反省を踏まえ、水都大阪をテーマに様々な取り組みが行われている。

かつて舟運の基軸であった川や掘割の交通機能は車社会の進展とともに衰退したが、そこに再び光を当て、公共交通の基盤とした舟運ネットワークの再生による水上交通網の復権も重要なテーマとなる。こうした水辺再生の取り組みを2025年の万博を契機に次世代へ受け継ぐ大阪のDNAとして再度見直すきっかけができないか、トータルデザインとして捉えることが必要になるだろう。

先進国となった日本の中で、最も成熟した都市のひとつである大阪は、もはやインフラ整備を誇るのではなく、人々のアクテビティのためにインフラに何ができるかを提示すべき都市になったのである。

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まとめ

 私たち都市環境デザイナーは、真に美しい空間やモノを提供することは当然として、都市と人々の間に強い結びつきを想起させるとともに活動を触発し、丁寧に時間をかけて育てていくプログラムやしくみづくりをデザインするという役割を求められるようになった。

 こうした、都市を楽しみたい、都市を自由に移動したい、都市に何かを働きかけたいという人々の欲望に対してこそ、「道具環境論」はより一層の効果を発揮すると信じている。われわれは単なるスクラップアンドビルドによる都市開発では見いだすことができない大阪という都市の美しさや奥深さという価値を、時間概念を含んだ「道具」を関与させる事によって具現化していきたい。それこそが2025年の大阪が未来に示すレガシーとなるのではないだろうか。(須田武憲)


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● GKの関連プロジェクト紹介

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● GKグループ紹介

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GKグラフィックス 
GKダイナミックス 
GKテック 
GK京都 
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