見出し画像

ASDは雑談の本当の役割を知らない?

ASDの方は雑談が苦手な傾向があると思います。単刀直入に本題から入ったり、雑談は無意味と思っている人も多いはずです。

「どのように雑談をするか」という技法以前に、そもそも雑談とは何かということを理解できていないのだと思います。

世の中の多くの人々は雑談などのコミュニケーションをとって生きています。しかし、なぜそのようなコミュニケーションが重要なのか誰も教えてはくれません。

雑談の意味が何かを理解することができれば、コミュニケーションに対する見え方が変わっていくと思います。そしてどのように雑談をするのかというスタートラインに立てると思います。

私自身、ASDの上に場面緘黙症も併存疾患していたために、人とコミュニケーションは全く取れませんでした。まだ今でも雑談が難しいと思う時もあります。

一朝一夕で良くなるものではありませんが、このポイントを押さえることができれば自分のコミュニケーションの何が問題か少し見えてくることでしょう。

雑談は「コト」より「意味」

ASDは、雑談は無意味に聞こえるかもしれません。例えば、次のように友人が話しかけてきたらあなたはどう思うでしょうか。

「昨日、映画見に行ってきたんだ。」

きっと、読者の中には少なからず「で?」と思った方がいるのではないかと思います。

相手は映画に行ってきたことをあなたに話すことで何を伝えたいのでしょうか。それはいくつかあると思いますが、ただその事実を伝えたいだけではありません。

相手は「意味」「気持ち」をあなたに伝えたいのです。

人は「理解されたい」という欲望があります。例えば、あなたはASDを理解してくれる社会になったらいいなと思うことはありませんか?

そして、ASDである辛さを誰かに理解してほしいと思ったことはありませんか?

あなたがASDであることで「辛い気持ち」になった経験があるように、みんなそれぞれ「色々な気持ち」があって理解されたいと思っています。

そして、「気持ち」を分かち合うことで人間関係が深めていきます。

「出来事」からどのようなことを思ったのかを話すことで少しづつ「気持ち」を理解していくのが雑談なのです。

簡単に図示すると次のようになります。

「事実」→「意味」

この意味を理解しようということが会話にとって重要なのです。
パーソンセンタード・アプローチで有名な臨床心理学者カール・ロジャーズは人の話を聴く際の基本的な態度を3つ挙げています。

・共感的理解

・無条件の積極的関心

・自己一致(※簡単に言えば、相手が思った気持ちをありのまま受け取ること)

この3つを中核3条件と言います。
なぜこの3つの態度が重要かというと、相手の気持ちや意味を理解することに直結するからです。

意味を汲み取るトレーニング法はゆっくり歩くこと

ご自身も発達障害を持つ社会学者宮台真司さんはナンパ師としても有名でした。その宮台先生がナンパの訓練法として挙げていたのが「ゆっくり歩き、人を観察すること」です。

「この人はどこにいくのだろうか」

「どんな家族構成なのだろうか」

「茶色い服を着ているから茶色が好きなのかな?」

このように街行く人を匿名者ではなく、一人の人間として想像力を働かせながら観察することが、文脈(意味など)を読み取る力になります。これは会話をする際の「関心を持って質問する」訓練になります。

雑談のタネは「関心」からです。ゆっくり歩きながら観察することで積極的関心を育てていくというのは簡単な方法だと思います。まずは観察することから初めて見るのも良いかもしれません。


記事作成の励みになります。