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3分で読める眠りにつく前の話

『惹かれる』

映画「君の膵臓をたべたい」を見た。
原作を読んだこともないし映画が公開された時もスルーしたが、ツタヤで目に入りなんとなく借りてみたのだ。命に関わる病があって、恋愛があって、悲しみは消えないけど前を向いて生きていく、よくある良い話だと思った。

でも、画面に映るたび、目が離せないものがあった。
それは出演していた浜辺美波さんだ。正確にいえば、彼女の輝く笑顔である。
その晩、夢にまで彼女が現れ、自分の執心っぷりに驚いた。
ところが、後日テレビCMで彼女を見つけて驚いた。髪型や衣装、体型や役作りの効果もあるだろうが、それが誰だかわからず、全く惹かれなかった。ピンポイントにいえば彼女の八重歯がなくなっていたのである。私は彼女の美しさを否定したいわけではない。圧倒的で確固たる美貌だ。しかし、その完璧とも言える美しさからは、私を強烈に惹きつけた何かが無くなった。

数年前に「ひまわりの約束」で大ブレイクした秦基博のアコースティックアルバムが発売された。ガラスの歌声、と賞賛される美声とギターの調べのみで曲が構成されている。勇んで買って聞くと、初めはうっとりしたが、すぐに飽きてしまった。しかし、他のアルバムはいまだに車に積んであり、頻繁に聞いている。曲は同じなのに、何が違うのだろうか。

二つの出来事から、必要な要素だけを選び取ったものは洗練されているが、惹かれない、という自分の嗜好を理解した。美しく愛らしい顔に添えられた歯のわずかな不整合。混在する音の中でも響き渡る歌声。歪さを抱え、なおも光り輝く美しさにこそ、私は惹かれる。

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