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20)ミトコンドリアの活性化による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の重症化予防(その2):メラトニン

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術20

ミトコンドリアを活性化して体を若返らせる医薬品やサプリメントを解説しています。

【サイトカインストームがCOVID-19の病状悪化に関連する】

 新型コロナウイルス感染症(Coronavirus Disease 2019:COVID-19)から分離されたコロナウイルスはSARS-CoV-2(Severe Acute Respiratory Syndrome Corona Virus 2)と命名されています。
SARS(Severe Acute Respiratory Syndrome)は日本語では「重症急性呼吸器症候群」と訳されています。つまり、重症の肺炎を引きおこすウイルスです。

SARS-CoV-2に感染しても8割くらいは軽い症状で推移して自然に治癒します。しかし、2割くらいは肺炎を発症し、肺炎に進展した患者のさらに⼀部が、重症化して集中治療や⼈⼯呼吸を要する病状になります。最近増えている変異型ウイルスでは、感染率や重症化率が高くなっていると報告されています。

SARS-CoV-2感染で死亡する場合は、肺と全身で重度の炎症反応が起こって、急性肺損傷、急性呼吸窮迫症候群、敗血症、多臓器不全が起こることが主な原因となっています。これは他のコロナウイルス(SARSやMERS)や新型インフルエンザでも重症例は同じです。

急性呼吸窮迫症候群(Acute Respiratory Distress Syndrome:ARDS)は、肺炎や敗血症などがきっかけとなって、重症の呼吸不全をきたす病気です。さまざまな原因によって肺の血管透過性(血液中の成分が血管を通り抜けること)が進行した結果、血液中の成分が肺胞腔内に移動して肺水腫を起こします。

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図:正常な肺胞はI型とII型の2種類の肺胞上皮細胞で覆われ、表面にはサーファクタントが存在して肺胞が広がりやすくしている(①)。肺胞内にはマクロファージも常在する。ウイルスが感染すると免疫応答が起こり、活性化したマクロファージ(②)やウイルスが感染した肺胞上皮細胞から炎症性サイトカイン(TNF-α, IL-6, IL-1βなど)やケモカインの産生・分泌が亢進する(③)。肺胞内は好中球やマクロファージなどの炎症細胞が増え、炎症細胞から産生される活性酸素などによって肺胞上皮細胞は傷害され、浸出液によって肺胞水腫が発生し、肺胞上皮表面には硝子膜(血漿成分が固まったもの)が形成され、びまん性肺胞傷害が起こる(④)。急性呼吸窮迫症候群(ARDS)はびまん性肺胞障害によって起こり、急激な呼吸不全を起こす(⑤)。肺病変のARDSからさらに全身性病変の敗血症や多臓器不全に移行すると死に至る(⑥)。


体内に細菌やウイルスが侵入すると、体に備わった免疫システムが、これらの病原菌を排除するために働きます。このとき、サイトカインやケモカインというタンパク質が免疫細胞や炎症細胞から産生され、免疫細胞が活性化され、病原菌を排除します。敵(病原菌)が排除されれば、免疫システムは自らオフになるように制御されています。

しかし、一部の人では、炎症反応や免疫応答が過剰に発現し、サイトカインが過剰に産生され、そうしたサイトカインが誤って肺や肝臓など複数の臓器を傷害し、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や多臓器不全を引き起こします。

このようにサイトカインが過剰に産生される状態がサイトカイン・ストーム(cytokine storm)です。ストーム(Storm)は嵐という意味です。

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図:ウイルスは肺胞上皮細胞(①)や肺胞内のマクロファージ(②)に感染し、細胞内で増殖して数を増やし放出される(③)。感染した上皮細胞からサイトカインやケモカインが産生される(④)。マクロファージはT細胞にウイルス抗原を提示し(⑤)、活性化されたT細胞(⑥)や活性化したマクロファージ(⑦)からも炎症性サイトカインやケモカインが産生される。このような炎症応答が過剰に起こりサイトカイン産生抑制の制御が不能な状態になるとサイトカインストームが起こる(⑧)。サイトカインストームは、敗血症や急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を引き起こす(⑨)。


急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や多臓器不全は、究極的には細胞レベルのミトコンドリア呼吸の破綻によるエネルギー・クライシス(energy crisis)によって細胞死が起こるので、全ての細胞のミトコンドリアの酸化傷害を軽減し、ダメージから保護し、ミトコンドリア機能を高めることはARDSや多臓器不全の予防と軽減に有効性が期待できます。ミトコンドリアをダメージから保護する体内成分としてメラトニンが注目されています。メラトニンはミトコンドリアで産生され、強い抗酸化作用と免疫増強作用を有するからです。


【メラトニンは体内時計を制御する】

 生体の生理機能は昼夜常に同じ状態を保っているわけではなく、ほぼ1日を周期として変動する概日リズム(サーカディアンリズム)が存在します。 私達の体の中(脳)にはいわゆる『体内時計』があり、昼夜サイクルの時間を刻みながら、体の多くの機能に活動と休息のリズムを与えています。これをサーカディアンリズム(circadian rhythm)と言います。ラテン語で「サーカ」は「約」、「ディアン」は「1日」という意味で、日本語では「概日リズム」と言います。

メラトニンは睡眠を促すホルモンで、脳のほぼ真ん中にある『松果体』と呼ばれる、松かさに似たトウモロコシ1粒くらいの大きさの器官から放出されるホルモンです。 メラトニンは昼と夜の周期に反応して脳の松果体から分泌され、体の日内リズムを調整しています。
メラトニンは子供の頃は多量に分泌されますが、思春期をすぎると急激に分泌量が減り、年齢とともにさらに減っていきます。子供は夜になると自然に眠り、年寄りは睡眠時間が短くなって不眠症や時差ボケになりやすいのは、メラトニンの量が少ないからだという考えもあります。

メラトニンの体内量が増えれば若返られるのではという議論が起き、マウスで実験したところ30%くらいの寿命が伸びるというデータが出ました。他にもぼけ防止やがん予防効果などの作用が認められ、アメリカでは抗老化ホルモンとしてブームになりました。

メラトニンは、ヒトにおいて、睡眠誘導や日内リズムの制御、抗酸化作用、抗炎症作用、免疫調節、生体防御、神経細胞保護、発がん予防やがん細胞の増殖抑制作用など多彩な作用を発揮します。

米国では、不眠や時差ぼけの改善や抗老化作用を目的としたサプリメントとして人気があり、ドラッグストアーやコンビニで販売されています。
メラトニンは日本ではサプリメントとして許可されていませんが、インターネットで米国から個人輸入で入手できます。

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図:メラトニンは脳の松果体から分泌される。メラトニンは、ヒトにおいて、睡眠誘導や概日リズムの制御、抗酸化作用、抗炎症作用、免疫調節、生体防御、神経細胞保護、発がん予防やがん細胞の増殖抑制作用など多彩な作用を発揮する。


【COVID-19の潜在的な補助療法としてのメラトニン】

 米国のトランプ前大統領が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染した時、医師団は抗ウイルス薬などの標準治療に加えて、メラトニンとビタミンD3のサプリメントも投与しています。 

ビタミンD3の血中濃度が低いほどCOVID-19の発症率や重症化率が高くなることは複数の疫学研究で明らかになっています。ヨーロッパの国を対象に、それぞれの国の国民のビタミンDの平均濃度とCOVID-19の発症数と死亡数の関連を検討すると、ビタミンDの濃度とCOVID-19の発症数および死亡数は逆相関するデータが報告されています。つまり、ビタミンDの血中濃度が低いほどCOVID-19の発症数と死亡数が多いという関係です。
 ビタミンDの補給がインフルエンザとCOVID-19の感染と死亡のリスクを低減できるという報告もあります。この論文では、「感染のリスクを減らすために、インフルエンザやCOVID-19のリスクがある人は、1日に10,000 IU(250μg) のビタミンD3を数週間服用して25-ヒドロキシビタミンD濃度を急速に上げ、その後5000 IU / 日の服用を継続する。目標は、25-ヒドロキシビタミンD濃度を40~60 ng / mL(100~150 nmol / L)より高くすることである」と考察しています。

メラトニンがCOVID-19を含めて様々なウイルス感染症に対する抵抗性を高め、死亡率を減らすことが多くの研究で明らかになっています。例えば、以下のような総説論文があります。

COVID-19: Melatonin as a potential adjuvant treatment(COVID-19:潜在的な補助療法としてのメラトニン)Life Sci. 2020 Jun 1; 250: 117583.
Published online 2020 Mar 23. doi: 10.1016/j.lfs.2020.117583

【要旨の抜粋】
この論文では、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の治療におけるメラトニンの利点をまとめている。
COVID-19の病態には、過剰な炎症と酸化傷害と過剰な免疫反応が寄与している可能性が示唆されている。これは、サイトカインストーム(cytokine storm)を引き起こし、それに続いて、急性肺損傷や急性呼吸窮迫症候群へと進行し、そしてしばしば死につながる。
メラトニンは抗炎症作用と抗酸化作用を有し、ウイルスや他の病原体によって引き起こされる急性肺損傷や急性呼吸窮迫症候群の症状を抑制する。メラトニンは、血管透過性を抑制し、不安感や鎮静剤の使用を減らし、睡眠の質を改善することにより、重症患者の治療に有益である。これは、COVID-19患者の臨床転帰の改善にも役立つ。
特に重要なことは、メラトニンは極めて安全性が高い。メラトニンがウイルス関連疾患を抑制し、COVID-19患者にも有益である可能性が高いことを示す十分なデータがある。


この総説論文では、メラトニンがウイルス感染症に有効であることを示す動物実験の結果などをまとめています。メラトニンがCOVID-19の重症化の予防に効果が期待できる可能性と、そのメカニズムとして「サイトカインストーム」の発生を予防する可能性があることを指摘しています。

つまり、メラトニンはこのサイトカインストームの発生を防ぐ作用によってCOVID-19の重症化を防ぐ効果を発揮するということです(下図)。

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図:コロナウイルスのSARS-CoV-2(①)の感染によって肺炎(COVID-19)が発症する(②)。肺炎は炎症反応を引き起こして多くの炎症性サイトカインの産生を亢進し(③)、活性酸素種や酸化酵素の活性が亢進して酸化ストレスが高まり、細胞や組織の酸化傷害が引き起こされ(④、感染防御に働く免疫応答は低下する(⑤)。このような病的状況が制御できれば病気を回復できる(⑥)。しかし、炎症応答や酸化傷害が過剰になって制御不能になると、肺組織内の感染巣では、炎症性サイトカインやケモカインなどの産生が亢進するサイトカインストームの状況に陥る(⑦)。サイトカインストームは肺組織にダメージを与え、血管内皮細胞の透過性亢進を引き起こして、急性肺損傷や急性呼吸窮迫症候群を引き起こし(⑧)、さらに悪化すると敗血症や多臓器不全を引き起こして死に至る(⑨)。メラトニンは強い抗炎症作用(⑩)と抗酸化作用(⑪)を有し、さらに低下した免疫応答を活性化し(⑫)、サイトカインストームの発生を阻害することによって、COVID-19の重症化を抑制する。(参考:COVID-19: Melatonin as a potential adjuvant treatment Life Sci. 2020 Jun 1; 250: 117583.)


【メラトニンはユニークな性質を有する最強の抗酸化物質】

 メラトニンの抗酸化作用が指摘されたのは1993年です。メラトニンがヒドロキシル・ラジカルの強力な内因性の消去物質であることが以下の論文で報告されました。

Melatonin : a potent, endogenous hydroxyl radical scavenger(メラトニン:強力な内因性のヒドロキシル・ラジカル消去剤)Endocrine Journal (1993)1:57-60

その後多くの研究で、メラトニンが生物最古の抗酸化物質であること、他の抗酸化物質と異なるユニークな性質を有することが明らかになっています。

メラトニンは細菌や藍藻から、真菌や線虫や昆虫や植物やヒトまでほとんどの生物に存在しています。生物が酸素を利用するようになった25億年前から存在していることが指摘されています。

約25億年前に光合成を行うシアノバクテリアが出現し、地球上の大気に酸素の量が増え、酸素を使ってエネルギーを産生する好気性細菌が出現します。このようにして生物が酸素を利用するようになったとき、発生する活性酸素の害を消去する目的でメラトニンが生成されるようになったと考えられています。つまり、メラトニンは生物最古の抗酸化剤です。

そして、生物の進化の過程で、抗酸化作用以外の様々な機能(概日リズムの制御、免疫調節など)を新たに獲得して生物に利用されています。

抗酸化物質としてはビタミンCやビタミンE、グルタチオンなどよりも強力で生物学的に有用な性質を持っています。

通常の抗酸化物質は1分子が1分子のフリーラジカルを消去するのに、メラトニンは1分子が10分子くらいのフリーラジカルを消去します。これは、メラトニンがフリーラジカルと反応して生成する産物が、さらにフリーラジカル消去活性を示すというカスケード反応を示すからです。

メラトニンは、ヒドロキシルラジカル(HO·)、過酸化水素(H2O2)、スーパーオキシド・アニオン(O2-)などの活性酸素、一酸化窒素(NO)やパーオキシナイトライト(ONOO-)などの一酸化窒素ラジカルを消去します。

そして、これらのフリーラジカルと反応して生成するcyclic 3‐hydroxymelatonin (C‐3HOM) 、N1‐acetyl‐N2‐formyl‐5‐methoxy‐knuramine (AFMK), N‐acetyl‐5‐methoxy‐knuramine (AMK)などもフリーラジカル消去活性を有します。 C‐3HOM や AMK はメラトニンよりもフリーラジカル消去活性が強いと言われています。

このようなカスケード反応によって、メラトニン1分子は10分子程度のフリーラジカルを消去することができます。

つまり、活性酸素や一酸化窒素ラジカルや脂質ラジカルなどのフリーラジカルと反応して生成されたメラトニン代謝産物がさらにフリーラジカル消去活性を持つのです。これをメラトニンカスケードと言います。

メラトニンは太古に発生した単細胞生物から現代の哺乳類や高等植物までの全ての生物において、生物を酸化ストレスから守る生体物質と言えます。

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図:メラトニンとその代謝産物によるフリーラジカル消去のカスケード反応(cascade reaction)。R・はフリーラジカルでRHは還元された物質を示す。メラトニンとフリーラジカルが反応してできた代謝産物もフリーラジカル消去活性を持つ。したがって、1分子のメラトニンは10分子におよぶフリーラジカルを消去できる。
AMCC: 3-acetamidomethyl-6-methoxycinnolinone
AMNK: N1-acetyl-5-methoxy-3-nitrokynuramine
(参考:Molecules. 2015 Oct 16;20(10):18886-906. )


【メラトニンはミトコンドリアを保護する】

 地球が誕生したのは約46億年前です。その地球に最初の生命が出現するのは、8億年後の今から約38億年前です。最初の生物は、はっきりした核を持たない(核膜をもった核が無い)原核生物です。これらの生物は、 海の中を漂う有機物を利用し、酸素を使わずに生息していました。
約25億年前に光合成を行う藍藻(シアノバクテリア)が登場します。

それまで地球上には酸素は存在しませんでしたが、そこに、太陽光エネルギーで無機物である二酸化炭素と水からグルコース(ブドウ糖)などの有機物を作り出し、酸素を放出するという光合成を行う真正細菌のシアノバクテリアが出現しました。

それまで無酸素状態だった地球大気に大量の酸素分子が放出され、嫌気性生物の多くが絶滅し、酸素を利用した呼吸をする微生物(α-プロテオバクテリア)も誕生しました。
真核細胞の葉緑体やミトコンドリアは、ある種の細菌が原始真核細胞に取り込まれて共生するようになって形成されたと考えられています。これを「細胞内共生説」と言います。

光合成を行うシアノバクテリアが原始真核生物と共生して葉緑体となりました。葉緑体は植物に存在する細胞内小器官です。光合成が主要な機能ですが、その他に窒素代謝、アミノ酸合成、脂質合成、色素合成など、植物細胞における代謝の中心となっています。

酸素を用いて呼吸を行うα-プロテオバクテリアが原始真核生物に共生してミトコンドリアになったと考えられています。

このような考えは,葉緑体やミトコンドリアが細胞の中で分裂して増殖することや、独自のDNA を持っていることが明らかにされ、定説となっています。

原始真核生物はシアノバクテリアやα-プロテオバクテリアを餌として捕食していたのですが、そのうちに寄生して細胞内小器官へと進化し、共生するようになったと考えられています。(下図)

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図:約20億年前に好気性細菌のα-プロテオバクテリアが原始真核細胞に寄生してミトコンドリアになったと考えられている。嫌気性の原始真核生物(メタン生成古細菌)はα-プロテオバクテリアを餌として捕食していたが、そのうちに寄生して細胞内小器官(ミトコンドリ)へと進化し、共生するようになったと考えられている。これを細胞内共生説と言う。

ミトコンドリアや葉緑体においてもメラトニンが合成されています。これもミトコンドリアや葉緑体が酸素を利用する過程で発生する活性酸素を消去して、細胞を酸化障害から防ぐためです。メラトニンは非常に強い抗酸化作用を有しています。

動物においても、メラトニンはミトコンドリアで合成されて、ミトコンドリアで発生する活性酸素の消去において重要な働きを担っています。最近は、メラトニンがミトコンドリアで合成されることの重要性が議論されています。以下のような論文があります。

Melatonin as a mitochondria-targeted antioxidant: one of evolution's best ideas.(ミトコンドリアを標的とした抗酸化物質としてのメラトニン:進化の最高のアイデアの1つ。)Cell Mol Life Sci. 2017 Nov;74(21):3863-3881.


【要旨】
 メラトニンは古代の抗酸化物質である。バクテリア(細菌)での最初の発達の後、それは進化を通して保持されたので、存在したすべての種において存在する可能性が高い。生物進化による種の多様化を通じて維持されてきたにもかかわらず、メラトニンの化学構造は決して変化していない。したがって、現在生きている人間に存在するメラトニンは、数十億年にわたって地球上に存在しているシアノバクテリアに存在するものと同一である。
 哺乳類の全身循環中のメラトニンは、細胞が酸化ストレスの高い状態にある場合、細胞による取り込みのために、血液から急速に消失する。
 メラトニンの細胞内分布の測定は、ミトコンドリア内のメラトニンの濃度が血液内の濃度を大きく上回ることを示している。メラトニンは、おそらくオリゴペプチド輸送体のPEPT1およびPEPT2を介してミトコンドリアに入る。したがって、メラトニンはミトコンドリアにおける最強の抗酸化剤として機能すると思われる。血液中から取り込まれることに加えて、メラトニンはミトコンドリアでも生成される可能性がある。
 進化の過程で、ミトコンドリアはメラトニン形成細菌が祖先の原核生物によって食物として飲み込まれたときに発生した可能性がある。時間がたつにつれて、飲み込まれた細菌はミトコンドリアに進化した。これは、ミトコンドリア起源の細胞内共生説として知られている。
 細胞内で共生した後も、ミトコンドリアはメラトニンを合成する能力を保持した。したがって、メラトニンは血液中からミトコンドリアに取り込まれるだけでなく、ミトコンドリアは、他の多くの機能に加えて、おそらくメラトニンも生成している。メラトニンが高濃度に存在することと、メラトニンの抗酸化物質としての複数の作用は、大量のフリーラジカルにさらされているミトコンドリアに強力な抗酸化保護を提供している。


酸素を使ってエネルギーを産生する好気性細菌は、自身でメラトニンを産生し、活性酸素によるダメージを防いでいます。そして、好気性細菌を祖先にもつミトコンドリアは、活性酸素によるダメージを防ぐ目的でメラトニンを産生し、使用しているということです。

COVID-19感染症における急性呼吸窮迫症候群や多臓器不全の発生においてミトコンドリアの酸化傷害による機能低下が重要だと考えられているので、メラトニンを多めに摂取する根拠は高いように思います。1日に10mgから40mgくらいを服用します。服用すると眠気が出るので、就寝の1時間くらい前に服用します。

米国では、1994年から1995年にかけて「メラトニ ンフィーバー」と呼ばれるような社会現象が起こりました。メラトニンの抗老化作用や寿命延長作用も誇大広告気味に宣伝されていました。
このようなメラトニンフィーバーに対して、メラトニンの効能に対して懐疑的な意見も多く発表されています。

しかし、25億年くらい前に生物が酸素を利用するようになったときに、活性酸素による酸化傷害から生命体を守るためにメラトニンが生成されるようになったこと、細菌から人間まで存在すること、動物と植物のミトコンドリアで生成され、ミトコンドリアを様々なストレスや傷害から保護していること、さらに免疫機能や炎症反応の調節や概日リズムの調節など、多彩な生理機能にメラトニンが関わっていることが明らかになり、メラトニンの健康作用や抗がん作用がさらに注目されるようになっています。

体がみるみる若返るミトコンドリア活性化術 記事まとめ

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