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THE 離婚 トーキョー NO.1 夫が海外赴任中に現地の女性と浮気をした場合?

夫が海外赴任中に現地の女性と浮気をした場合?

 夫は日本の大手商社アメリカ支店で勤務しています。子供はもう高校生で手が離れていますが、日本で母子ともに暮らしています。子どもは、父の不倫に気づいていて、とても傷ついています。夫とは離婚をするべきか真剣に悩んでいるのですが、現地アメリカ人女性から賠償金はとれないのでしょうか?夫の自宅にまで何度も通い詰めているようです‥

ある日の相談より抜粋

 この場合、アメリカ人女性に対する不法行為責任の追及をすることが可能なのか、国際裁判管轄、という問題を検討する必要が生じます(旦那さんには日本の民法の規定により、当然不法行為責任が生じます)。これについて、東京地方裁判所平成26年9月5日判決は、不法行為地の裁判籍が日本にあることによる国際裁判管轄について、以下のように述べています。

 被告と原告太郎の交際は平成二一年一〇月に始まり、不貞行為は平成二二年五月から九月までの間にニューヨークで行われ、上記一(1)イ(エ)及びウ(カ)のとおり、原告花子は、その大半をニューヨークで過ごし、原告ら夫婦は、原告太郎がニューヨークに住む原告花子の所に赴く形で共同生活を営んでいたから、婚姻共同生活の平和を害する結果はニューヨークで生じている。したがって、不法行為地はニューヨークであるから、甲事件のうち不貞行為に係る損害賠償請求につき、不法行為地の裁判籍の規定に依拠して日本の裁判所の国際裁判管轄を肯定することはできない。

東京地方裁判所平成26年9月5日判決より抜粋

 本件では、不貞行為の結果発生地はニューヨークであるから準拠法は同州法となると指摘しています。これは、日本の裁判所の国際裁判管轄を肯定するためには、原則として、被告が日本においてした行為により原告の法益について損害が生じたとの客観的事実関係が証明されれば足りると解するのが相当であると述べた最高裁判決を踏襲しています。
 しかし、本件についてあてはめをしてみると、不貞行為は平成二二年五月から九月までの間にニューヨークで行われ、上記一(1)イ(エ)及びウ(カ)のとおり、原告花子は、その大半をニューヨークで過ごし、原告ら夫婦は、原告太郎がニューヨークに住む原告花子の所に赴く形で共同生活を営んでいたから、婚姻共同生活の平和を害する結果はニューヨークで生じている。したがって、不法行為地はニューヨークであるから、甲事件のうち不貞行為に係る損害賠償請求につき、不法行為地の裁判籍の規定に依拠して日本の裁判所の国際裁判管轄を肯定することはできないと述べています。

若干の検討?日本の法律を使う余地について



 本件は、夫婦の実質的な居住地が、ニューヨークでした。原告が日本人在住である場合はどうでしょうか。日本の法律を使い、慰謝料請求をする余地が生じます。東京高等裁判所令和元年9月25日判決は、ニューヨークと日本とで、不貞行為が生じていたケースです。
 平成25年10月から平成27年12月までの約2年3か月間がニューヨーク州に居住し、平成28年1月から令和元年7月12日までの3年6か月間は日本であることを指摘したうえで、結果発生がニ国にわたる場合には、 結果発生地が複数ある場合には,最も重大な結果が発生した地を結果発生地とし,結果発生地間の結果の軽重を決し難いときには最初に結果が発生した地を結果発生地とすべきと述べています。
 交際の内容や期間、その連続性を確認していくことによって、日本の裁判所を用いたうえでの責任追及を図ることは十分考えられるのです。



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