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【まとめ】&【参考文献】いちにちわんケルト
こんにちは。吟遊詩人の妙遊と申します。
10月1日より、毎日一話、ケルトの神話伝説を4ツイートでお届けする #いちにちわんケルト をやっております。
いちにちわんケルトのお話については、わたしが知っているケルトのお話を思い出して書いております。
つまりいろんな本を読んで蓄えられた知識の入った私の脳みその中が一次資料です。
ただ記憶違いで、大筋から思いきりずれたりしてはいけない……(細部は語り手によって変わるのが神話伝説の当然なので当然としています。たとえば桃太郎を語ったら、語る人みんなセリフ回し違うと思うのです。でも犬猿雉がライオンやクマやゴリラにならないのと同じように、大筋は変わらない。そういう確認です。もちろん変えたら変えたで楽しいですけども、それはみんなが既知の物語に対してやるのがいいのであって、みんなが知らないケルト神話にはちょっと早い)ということで、参考文献にはあたっております。
それをズラーッとあげております。
お話をフルで読んでみたいなあ、という方の読書案内になりましたら幸いです。
第一話
ルグという神がいた。
— 妙遊 (@ginyumu) October 1, 2022
ルグはまだ若かった。
ルグはまだ認められていなかった。
ある日のこと。
ルグは神々の宴会にいった。
ルグは門番に止められた。
門番
「なにか特技のある方しか入ることはできません」#いちにちわんケルト 1/4
『ケルトの神話 女神と英雄と妖精と』井村君江著 ちくま文庫
『ケルトの神話・伝説』フランク・ディレイニー著 鶴岡真弓訳 創元社
アイルランドの異教的伝承「マグ・トゥレドの戦い」⑥(¶52~¶69) ケルト神話翻訳マン https://note.com/p_pakira/n/n251854bfcd7b
第二話
ケルトの英雄、クー・フーリン。
— 妙遊 (@ginyumu) October 2, 2022
のちに大軍相手に一人で戦った大英雄。
しかし初陣のときは、大英雄も初々しかった。
むろん初陣じたいは勝利に終わった。
猛き戦士どもをみごとに倒した。
クー・フーリンは、じぶんの王のいる都に帰ってきた。
事件はそこで起こった。
1/4#いちにちわんケルト
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン訳 栩木伸明重訳 東京創元社
『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』ローズマリー・サトクリフ 灰島かり・金原瑞人・久慈美貴訳 ちくま文庫
第三話
ケルトの英雄フィン。
— 妙遊 (@ginyumu) October 3, 2022
フィンの父はフィアナ騎士団の騎士団長だった。
その父を殺し、騎士団長になったのがゴルだった。
今のハロウィン、古代のサウィンのとき。
若きフィンは、アイルランドで最も地位のたかい上王の宮殿にやってきた。
宮殿は宴のまっさいちゅう。
1/4#いちにちわんケルト
『ケルト 口承文化の水脈』中央大学人文科学研究所編 中央大学出版部
『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』ローズマリー・サトクリフ 灰島かり・金原瑞人・久慈美貴訳 ちくま文庫
第四話
甘く速く竪琴奏でる騎士トリスタンの話をしよう。
— 妙遊 (@ginyumu) October 4, 2022
アイルランドにドラゴンが出現した。
アイルランド王は「ドラゴンを倒したものは王女イゾルデと結婚させる」とのふれをだした。
それを知り、海の向こうから騎士トリスタンはやってきた。
1/4#いちにちわんケルト
『トリスタンとイゾルデ』ゴットフリート・フォン・シュトラースブルク著 石川敬三訳 郁文堂
『トリスタン・イズー物語』ベディエ編 佐藤輝夫訳 岩波文庫
第五話
海底の都イスのおはなし
— 妙遊 (@ginyumu) October 5, 2022
ダユーという王女がいた
王はダユーを溺愛していた
王はダユーのために
海の見える土地に
イスという都をつくった
イスは低地で洪水に弱く
水門を開け閉めして
調節していた
大事な水門の鍵は
王が首からぶら下げていた
1/4#いちにちわんケルト
『図説 ケルト神話物語』イァン・ツァイセック著 山本史郎/山本泰子訳 原書房
『ブルターニュ古謡集 バルザス=ブレイス』ラ・ヴィルマルケ編 山内淳監訳 大場静枝/小出石敦子/白川理恵訳
第六話
神ダグザの竪琴がうばわれた。
— 妙遊 (@ginyumu) October 6, 2022
魔族フォウォレにうばわれた。
ダグザとルグとオグマの三神は、
竪琴をとりかえしに、
魔族のところへとやってきた。
魔族は広間で宴のまっさいちゅう。
竪琴は壁にかけてあった。
ダグザは竪琴に呼びかけた。
1/4#いちにちわんケルト
『アイルランド音楽入門音楽 ダンス 楽器』ダイアナ・ブリアー著 守安功訳 音楽之友社
『ケルトの神話 女神と英雄と妖精と』井村君江著 ちくま文庫
2010年2月7日 辺見葉子「アイルランド神話における竪琴とシャーマニズム」 (国際シンポジウム宗教部会、10年1月23日)
http://mono-gaku.la.coocan.jp/happyou6.htm#57
第七話
同じ師匠の元に
— 妙遊 (@ginyumu) October 7, 2022
敵国同士の弟子がいた
コナハトのフェルディアと
アルスターのクー・フーリン
ふたりは親友だった
あるとき
たがいの国が
戦争になった
フェルディアはクー・フーリンと戦いたがらなかった
コナハト国の女王は
戦わないフェルディアを嘲った
1/4#いちにちわんケルト
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン訳 栩木伸明重訳 東京創元社
第八話
フィアナ騎士団の騎士オシーンは
— 妙遊 (@ginyumu) October 8, 2022
とてもすてきな騎士だった。
あまりにすてきな騎士だったので
妖精の国の王女様が
白馬に乗ってむかえにきた。
「わたしの夫になってください」
「はい」
オシーンはともに白馬にのって、
妖精の国へ。
1/4#いちにちわんケルト
『妖精Who's who』キャサリン・ブリッグズ著 井村君江訳 ちくま文庫
『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』ローズマリー・サトクリフ 灰島かり・金原瑞人・久慈美貴訳 ちくま文庫
第九話
イングランドの王が死んだ。
— 妙遊 (@ginyumu) October 9, 2022
魔術師マーリンは予言した。
「クリスマス、奇跡が起こるだろう」
クリスマス。
ロンドンの最も大きな教会に
大きな石が現れた。
大きな石のまんなかには鉄床があり
美しい剣が切っ先を下にして
つきささっていた。
1/4#いちにちわんケルト
『アーサー王の死 中世文学集Ⅰ』トマス・マロリー著 厨川文夫/厨川圭子訳 ちくま文庫
第十話
むかしオルフェオ卿という
— 妙遊 (@ginyumu) October 10, 2022
竪琴の上手な王さまがおりました。
オルフェオ卿の竪琴を聴くと、
みんな天国にいるようなきぶん。
さてオルフェオ卿には、
ヘロディスという王妃がおりました。
ふたりはとても仲良しでした。
ある日、妖精王がヘロディスを誘拐しました。
1/4#いちにちわんケルト
『英国中世ロマンス』大槻博訳 旺史社
第十一話
トゥレンという男に
— 妙遊 (@ginyumu) October 11, 2022
3人の息子がいた。
その3人の息子たちが
光の神ルグの父を殺した。
ルグは怒りに怒る。
しかし3人の息子たちはルグと同じ一族。しかも一族は敵と激戦をくりひろげたばかり。
一族内で内輪もめしている場合ではない。
ルグはつぐないを要求した。
1/4#いちにちわんケルト
『ケルト神話の世界 下』ヤン・ブレキリアン著 田中仁彦・山邑久仁子訳 中公文庫
『ケルト 魔法民話集』小辻梅子訳編 現代教養文庫 社会思想社
第十二話目
美しく強い英雄クー・フーリンは
— 妙遊 (@ginyumu) October 12, 2022
エウェルという娘を
妻にしようときめていた。
エウェルの父は結婚に反対だった。
クー・フーリンは、
エウェルのいるところへ
乙女たちの集会の場へ
戦車をはしらせる。
美しく賢きエウェルが
でむかえる。
美しい声でエウェルが言う。
1/4#いちにちわんケルト
アイルランドの異教的伝承「エウェルへの求婚」(アルスター物語群)③:¶18~27
https://note.com/p_pakira/n/n7531dda20412
アイルランドの異教的伝承「エウェルへの求婚」(アルスター物語群)⑤:¶42~55
https://note.com/p_pakira/n/n32ed771e3c99
アイルランドの異教的伝承「エウェルへの求婚」(アルスター物語群)⑧:¶80~92
https://note.com/p_pakira/n/ne5cef1f71d21
十三話
進撃の炬火(たいまつ)
— 妙遊 (@ginyumu) October 13, 2022
怒れる獅子
そううたわれた男の話をしよう。
フィアナ騎士団の騎士
片眼のゴル・マックモーナの話を。
あるとき
フィアナ騎士団が狩りをした。
だが狩りをした地は妖精の領域。
領域の主が怒った。
主が怒ってさしむけたのは
主の3人の娘たち。
1/4#いちにちわんケルト
フィアナ伝説:ケシュコランの魔法の洞窟|日月日
https://note.com/al_batross/n/n3d9dcb512101
『アイルランドの神話伝説II 世界神話伝説大系41』名著普及会 八住利雄
十四話
冒険中の
— 妙遊 (@ginyumu) October 14, 2022
円卓最強の騎士ランスロット、
とある館の
門の上の部屋に泊まった。
真夜中
門をどんどん叩く音が。
ランスロットは
窓からひょいと下をみる。
同じ円卓の騎士ケイが、
三人の騎士に攻撃されていた。
「一対三とは卑怯な」
ランスロットは窓から外へ。
1/4
#いちにちわんケルト
『アーサー王物語』ジェイムズ・ノウルズ作 金原瑞人編訳/佐竹美保絵 偕成社文庫
『アーサー王物語 Ⅰ』トマス・マロリー著 オーブリー・ビアズリー絵 井村君江訳 筑摩書房
第十五話
ブリテン島を三つの災厄が襲う。
— 妙遊 (@ginyumu) October 15, 2022
王はおそろしく頭のきれる弟に
相談することにした。
頭のきれる弟は
その才能で
フランスで王をやっていた。
兄王は艦隊を編成して
フランスへ向かう。
弟王は驚いて
大艦隊を編成して
兄王を待ちかまえた。
1/4#いちにちわんケルト
『ウェールズ語原典訳マビノギオン』(「スリーズとスレヴェリスの冒険」より) 森野聡子訳 原書房
『マビノギオン―中世ウェールズ幻想物語集』中野節子訳 JURA出版局
第十六話
王はある朝、
— 妙遊 (@ginyumu) October 16, 2022
王城の城壁の上から、
あたりをながめていた。
すると
ボイン川の方から
見知らぬ戦士がやってきた。
戦士は
黄金のリンゴ3個つきの銀の枝を
持っていた。
王は言う。
「銀の枝をくれないか」
戦士は言う。
「代わりに3つのものをくれるなら」
1/4#いちにちわんケルト
『ケルトの神話伝説』フランク・ディレイニー作 鶴岡真弓訳 創元社
第十七話
あるとき
— 妙遊 (@ginyumu) October 17, 2022
王は詩人の宴にやってきた。
宴のさなか、
ギャアァァァ!
妊婦のお腹から叫び声が響きわたる。
予言者がこう言った。
「お腹の子は
その美しさのため
戦士たちの血の海を招くだろう」
王は言った。
「ならばわしの妻にすれば、
いさかいなど起こるまい」
1/4#いちにちわんケルト
「デアドラの物語」における悲劇の構築―W. B. イェイツ,グレゴリ夫人,J. M. シングの場合
https://edo.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_view_main_item_detail&item_id=569&item_no=1&page_id=13&block_id=21
『ケルトの神話伝説』フランク・ディレイニー作 鶴岡真弓訳 創元社
第十八話
あるときのこと。
— 妙遊 (@ginyumu) October 18, 2022
巨大な怪物馬にくっついた
16人のフィアナ騎士団の騎士たち
怪物馬は騎士たちをくっつけたまま
海のむこうへきえていった。
フィアナ騎士団の仲間たちは
ひっしであとを追いかけた。
たどり着いたのは断崖絶壁
この上に仲間が囚われている!
1/4#いちにちわんケルト
『ケルト魔法民話集』小辻梅子訳編 現代教養文庫
第十九話
ブリテン島に
— 妙遊 (@ginyumu) October 19, 2022
にせものの王さまがいました。
王家のものではないのに
うまい手をつかって
まんまと王座を手にしたのです。
ついに
王家の血筋と王子ふたりが
たたかいをいどんできました。
にせものの王さまは
まもりをかためるため
塔をたてることにしました。
1/4#いちにちわんケルト
『西洋中世奇譚集成 魔術師マーリン』ロベール・ド・ボロン著 横山安由美訳 講談社学術文庫
なお、第十五話のマビノギオンのお話とのつながりについては中野節子先生の↓にございます。
赤ドラゴンと白ドラゴンの別のバージョンについてのお話も出てきます。
『マビノーギ』研究(8) : 「スィッズとセヴェレスの物語」をめぐって
https://otsuma.repo.nii.ac.jp/index.php?action=repository_view_main_item_detail&item_id=2978&item_no=1&page_id=29&block_id=56
コーンウォールの猪についてもマーリンが言及しているのが↓です(他にもありますが、キリがないのでこのあたりで……)。
『アーサー王物語』ジェイムズ・ノウルズ作 金原瑞人編訳 佐竹美保絵
第二十話
7つの地をおさめる
— 妙遊 (@ginyumu) October 20, 2022
領主のプイス。
ある日
プイスは狩りにでた。
そこで
赤い耳に白い体、
光り輝く猟犬たちに出会う。
みしらぬ輝く猟犬たちは
えものの鹿をたべていた。
プイスは
輝く猟犬をどかせ
自分の猟犬に鹿をたべさせた。
そこへ異界の王があらわれた。
1/4#いちにちわんケルト
『マビノギオン 中世ウェールズ幻想物語集』中野節子訳 JURA出版局
第二十一話
主神ダグザは
— 妙遊 (@ginyumu) October 21, 2022
弟の妻が好きになった。
ダグザは弟に
遠くへでかける用をいいつけた。
弟は言う。
「一昼夜でかえってくるよ」
弟が出かけてから
ダグザは大魔法を行使する。
夜をはらいのけ、
昼が9ヶ月つづくようにした。
1/4#いちにちわんケルト
ダグザ様、美男説はコチラ↓
『ケルト神話の世界 上』ヤン・ブレキリアン著 田中仁彦・山邑久仁子訳 中公文庫
The Wooing of Etain
Yellow Book of Lecan
http://www.ancienttexts.org/library/celtic/ctexts/etain.html
The Taking of the Sid
De Gabáil in t-Sída
Book of Leinster
Translated by John Carey
https://sejh.pagesperso-orange.fr/keltia/version-en/taking-sid.html
第二十二話
ある夜
— 妙遊 (@ginyumu) October 22, 2022
コナハト国の女王メーヴは
たいへん心外なことばを聞いた。
「わたしと結婚したから
お前は裕福になったのだ」
夫のことばだった。
女王メーヴは言う。
「あら、ちがうわ。あなたがわたくしの富をあてにしているのよ」#いちにちわんケルト
1/4
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン英訳 栩木伸明日本語訳 東京創元社
第二十三話
フィアナ騎士団長のフィンは
— 妙遊 (@ginyumu) October 23, 2022
いつものように
狩りをしていた。
すると
フィンの猟犬2匹が
であった小鹿にじゃれついた。
えもののはずの小鹿だったが
フィンは殺さずに
じぶんの砦につれてかえった。
その夜
小鹿は
金髪の乙女に変身した。
「わたくしは妖精のサーバ。
1/4#いちにちわんケルト
『妖精Who's who』キャサリン・ブリッグズ著 井村君江訳 ちくま文庫
『ケルトの神話』井村君江著 ちくま文庫
『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』ローズマリー・サトクリフ 灰島かり・金原瑞人・久慈美貴訳 ちくま文庫
第二十四話
アーサー王の騎士ランスロット卿が
— 妙遊 (@ginyumu) October 24, 2022
行方不明になったとき。
アーサー王の宮廷に
敵国の騎士がやってきた。
「ランスロットと決闘する約束だが。
なぜ影も形もみえぬ?」
敵国の騎士が
王につめよってくる。
かたわらで聞いていた
ガウェイン卿が
すっと立ちあがった。#いちにちわんケルト
1/4
『フランス中世文学集2 愛と剣と』訳 新倉俊一 神沢栄三 天沢退二郎 白水社(クレチアン・ド・トロワ著「ランスロまたは荷車の騎士」より)
第二十五話
たたかいのとき以外は
— 妙遊 (@ginyumu) October 25, 2022
処女のひざのうえに
自分の足を置かなければならない。
そんなふしぎ体質の領主がいた。
さてそんな
ふしぎ体質の領主の甥、
ギルヴァエスウィ。
あろうことか
領主の足おきの処女に
恋をした。
ギルヴァエスウィは
恋わずらいで
げっそり。
1/4#いちにちわんケルト
『マビノギオン 中世ウェールズ幻想物語集』中野節子訳 JURA出版局
はなはだしく理解の難しいお話なので、以下の中野節子先生の論文と、現代小説になったマビノギオン物語を参考にされると、理解がすすむかと存じます。
『マビノーギ』研究(4) ー「マソヌウイの息子マース」の物語をめぐってー
中野 節子
https://www.jstage.jst.go.jp/article/yeiwatandai/22/0/22_KJ00000727832/_article/-char/ja/
『強き者の島 マビノギオン物語4』エヴァンジェリン・ウォルトン著 田村美佐子訳 創元推理文庫
第二十六話
ケルトの英雄クー・フーリンが
— 妙遊 (@ginyumu) October 26, 2022
じぶんと御者の二人きりで
おおぜいの敵軍相手に
たたかっていたとき。
敵軍のまんなかを
まるで無人の荒野をいくよう
歩いてくる男がいる。
御者が言う。
「黄色のまき毛、男前。
敵軍のだれも気づいちゃいない。
なにものですかね?」
1/4#いちにちわんケルト
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン英訳 栩木伸明日本語訳 東京創元社
第二十七話
ある日
— 妙遊 (@ginyumu) October 27, 2022
少女ネスのまえを
祭司がとおりがかった。
ネスはたずねる。
「きょう、いま、このとき、
なにをするのがいいかしら?」
祭司は言う。
「きょう、いま、このとき、
女王が王を妊娠するのに
ふさわしいときでございます」
1/4#いちにちわんケルト
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン英訳 栩木伸明日本語訳 東京創元社
The Tain
From the Irish epic Tain Bo Cuailnge
Translated by Thomas Kinsella
OXFORD UNIVERSITY PRESS
別バージョン
The Tidings of Conchobar son of Ness
The Book of Leinster
http://www.maryjones.us/ctexts/conchobar2.html
第二十八話
ボイン川のほとりに
— 妙遊 (@ginyumu) October 28, 2022
賢者フィンネガスが
すんでいました。
ボイン川には
「食べると
世界のすべての知識が手にはいる
知恵の鮭」がいたのです。
知恵の鮭をつかまえようと
賢者フィンネガスは
がんばりました。
けれども
つかまえられずに
7年間がすぎました。
1/4#いちにちわんケルト
The Boyhood Deeds of Finn mac Cumhaill http://www.maryjones.us/ctexts/f02.html
フィアナ伝説:フィンの少年的武勲 日月日
https://note.com/al_batross/n/n26e78710c02d
『ケルト 口承文化の水脈』中央大学人文科学研究所編 中央大学出版部
『ケルトの神話』井村君江著 ちくま文庫
『夜ふけに読みたい 数奇なアイルランドのおとぎ話』 長島真以於監修 加藤洋子、吉澤康子、和爾桃子訳 アーサー・ラッカム絵 平凡社
『神の文化史事典』松村一男、平藤喜久子、山田仁史編 白水社
第二十九話
雪原の大地に
— 妙遊 (@ginyumu) October 29, 2022
アーサー王が天幕をはっていたとき。
王の執事騎士が
大怪我をしてかえってきた。
執事騎士は
雪原で物思いにふける
見知らぬ若い騎士に、
「王のもとへ一緒に来い。
来ないならひどい目にあわすぞ」
と声をかけ、
逆に馬から突きおとされたとのこと。
1/4#いちにちわんケルト
『フランス中世文学集2 愛と剣と』訳 新倉俊一 神沢栄三 天沢退二郎 白水社(クレチアン・ド・トロワ著「ペルスヴァルまたは聖杯の物語」より)
第三十話
とある丘の上にすわると
— 妙遊 (@ginyumu) October 30, 2022
あやかしがでる……
家臣から噂をきいた
領主プイスは
さっそくいってみることにした。
領主プイスと家来たちで
やってきたとある丘の上。
さっそく
すわってみた。
すると
あらわれたのは
きれいな白馬に乗った
輝く美しい衣装をまとう貴婦人。
1/4#いちにちわんケルト
『マビノギオン 中世ウェールズ幻想物語集』中野節子訳 JURA出版局
『ウェールズ語原典訳 マビノギオン』森野聡子編・訳 原書房
第三十一話
愛の神アンガスには
— 妙遊 (@ginyumu) October 31, 2022
それはうつくしい養い子がいた。
その名は
ディルムッド。
まるで
たったひとりの息子のように
それはそれは大事に育てていた。
大きくなったディルムッドは
強き騎士集う
フィアナ騎士団に入る。
騎士団の者からも
ディルムッドは
とても愛された。
1/4#いちにちわんケルト
『ケルト幻想民話集』小辻梅子訳編 教養文庫
第三十二話
王はある日、
— 妙遊 (@ginyumu) November 1, 2022
鍛冶屋のクランの宴に
まねかれた。
王は出かけるまえに、
試合をしている
少年たちをみにいった。
甥っ子セタンタと
3かける50は150人の少年たち。
セタンタがひとりで
圧勝している。
王は言う。
「よくやったセタンタ、
いっしょに宴にゆこう」
1/4#いちにちわんケルト
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン英訳 栩木伸明日本語訳 東京創元社
第三十三話
元日1月1日。
— 妙遊 (@ginyumu) November 2, 2022
アーサー王の宮廷に
全身緑の騎士が
やってきて言う。
「わしの首を切ってみせよ。
そして1年後
わしの首を切ったやつの首を
わしが切る。
この挑戦を受けるものがあるか」
王が受けようとするのを止め。
王の騎士ガウェインが
挑戦を受けた。
1/4#いちにちわんケルト
『中世イギリスロマンス ガウェイン卿と緑の騎士』菊池清明訳 春風社
第三十四話
フィアナ騎士団に
— 妙遊 (@ginyumu) November 3, 2022
うらみをもつ他国の王子が、
フィアナ騎士団の騎士たちを
ワナにかけるため
ナナカマドの宮殿をたてた。
さらに
宮殿をたてた大地に
血の呪いをかけた。
いちどすわったら
にどと立ちあがれない。
フィアナ騎士団の騎士たちは
まんまと呪いにかかった。
1/4#いちにちわんケルト
『ケルト魔法民話集』小辻梅子訳編 現代教養文庫
第三十五話
魔女ケリドウェンは
— 妙遊 (@ginyumu) November 4, 2022
みにくいむすこを産んだ。
みにくいむすこに
生きていく術をあたえなければと
飲めば
予言の力をさずかる薬を
大鍋でグツグツ煮てつくる。
自分は薬草を集め
男に大鍋をかきまぜさせた。
1年と1日がたった日
沸騰した鍋のなかみが
3滴とびだした。
1/4#いちにちわんケルト
お話については(輝く額のみ別参考文献)
『ウェールズ語原典訳 マビノギオン』森野聡子編・訳 原書房
タリエシンさんの現存する詩の訳については
『ケルティック・テクストを巡る』「ケルティック・テクスト研究チーム」小管奎申 松村賢一 三好みゆき 大澤正桂 北文美子 木村正俊 真鍋晶子 盛節子 訳 中央大学出版部
タリエシン=輝く額としたことについて、
ケリドウェンがケレスに関連する、
については
『神の文化史事典』編者 松村一男 平藤喜久子 山田仁史 白水社(タリエシン、ケリドウェンの項目執筆 渡邉浩司)
タリエシンがアーサーと冒険する、
については
『アーサー王と中世騎士団』ジョン・マシューズ著 日本語版総監修 本村凌二 原書房 p.166からの「アンヌーンの略奪」
タリエシンとマーリンが滔々と会話している、
については
『マーリンの生涯』ジェフリー・オブ・モンマス 瀬谷幸男訳 南雲堂フェニックス
第三十六話
英雄クー・フーリンが
— 妙遊 (@ginyumu) November 5, 2022
結婚をもうしこんだ姫は
結婚の条件に
すさまじい戦闘力をもとめてきた。
そこで
クー・フーリンは
おそろしくつよいと有名な
女戦士に弟子いりすることにした。
クー・フーリンは
はるかなる地にある
女戦士の砦へと旅だった。#いちにちわんケルト
1/4
CUCHULAIN OF MUILTHEEMNE
LADY GREGORY
Global Grey ebooks
アイルランドの異教的伝承「エウェルへの求婚」(アルスター物語群)⑥:¶56~66
https://note.com/p_pakira/n/n13944083e964
アイルランドの異教的伝承「エウェルへの求婚」(アルスター物語群)⑦:¶67~79
https://note.com/p_pakira/n/n9c25978930bb
ルグ、太陽神、車輪について
『神の文化史事典』編者 松村一男 平藤喜久子 山田仁史 白水社(ルグの項目執筆 渡邉浩司)
このときの戦士がルグ説をとっている作品
『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』ローズマリー・サトクリフ 灰島かり・金原瑞人・久慈美貴訳 ちくま文庫
第三十七話
あるとき
— 妙遊 (@ginyumu) November 6, 2022
アイルランドの尊き王は
やぶってはならない禁忌を
たくさんやぶってしまった。
そして
王は敵に
襲撃された。
しかし
王の武力すさまじく、
敵は王に武力でかなわなかった。
敵は
王に魔術をかけた。
王は
喉がかわいてかわいて
どうしようもなくなった。
1/4#いちにちわんケルト
『ケルティック・テクストを巡る』「ケルティック・テクスト研究チーム」小管奎申 松村賢一 三好みゆき 大澤正桂 北文美子 木村正俊 真鍋晶子 盛節子 訳 中央大学出版部
第三十八話
アイルランドでいちばん位の高い
— 妙遊 (@ginyumu) November 7, 2022
上王が死んだ。
上王の子が、上王になった。
あたらしい上王は
フィアナ騎士団がきらいだった。
かつては昔の上王が
いまの騎士団長フィンを
フィアナ騎士団長にえらんでやった。
だがいまや
フィアナ騎士団は
上王をおびやかす勢力。
1/4#いちにちわんケルト
『アイルランドの神話伝説Ⅱ』世界神話伝説大系41 名著普及会
第三十九話
ブリテンの王アーサーのもとへ
— 妙遊 (@ginyumu) November 8, 2022
ローマ皇帝ルキウスから
使者がきて
手紙がとどけられた。
「我が敵アーサー王よ。
貴様らは
我らから土地を奪った。
貴様らは
貢物を我らにおさめない。
ローマに出頭せよ。
我らが土地を返せ。
貢物をおさめよ」
1/4#いちにちわんケルト
『フランス中世文学名作選』松原秀一/天沢退二郎/原野昇 編訳 篠田勝英/鈴木覺/瀬戸直彦/福本直之/細川哲士/横山安由美 訳 白水社
第四十話
アーサー王の騎士
— 妙遊 (@ginyumu) November 9, 2022
見目うるわしきランヴァル卿には
秘密の恋人の姫がいる。
姫は言う。
「わたくしとの関係は
だれにも言ってはいけませんよ」
この世のものとは思えぬほど
姫は美しかった。
姫の侍女ですら
アーサー王の妃より美しく、
姫はさらに美しかった。
1/4#いちにちわんケルト
『十二の恋の物語 マリー・ド・フランスのレー』月村辰雄訳 岩波文庫
第四十一話
神々の王ヌァザ。
— 妙遊 (@ginyumu) November 10, 2022
ヌァザは戦争で
腕をうしなった。
腕をうしなったことで
王の座をおりることになった。
かわりに王座についたのは、
神の一族の母と
魔族の父をもつ
うつくしきブレスだった。
このブレスが
とんでもない王だった。
税をしぼりとる
王だったのだ。
1/4#いちにちわんケルト
アイルランドの異教的伝承「マグ・トゥレドの戦い」①(¶1~¶14)〜終わりまで
ケルト神話翻訳マン
https://note.com/p_pakira/n/n8de2330aaf19
第四十二話
ある日
— 妙遊 (@ginyumu) November 11, 2022
少年クー・フーリンは
少年たちに取り囲まれた
祖父カスヴァズが、
予言をねだられているのを
見ていた。
「今日はなにをするのに
いい日ですか?先生!」
カスヴァズは言った。
「王から武器をさずかり、
大人の戦士の
仲間入りをするのにいい日じゃ。
1/4#いちにちわんケルト
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン英訳 栩木伸明日本語訳 東京創元社
是非読み比べをおすすめしたいのが↓です。
サトクリフの悲壮感ただようクーフリンの理由が眠っています。
『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』ローズマリー・サトクリフ 灰島かり・金原瑞人・久慈美貴訳 ちくま文庫
第四十三話
フィアナ騎士団長の母の妹、
— 妙遊 (@ginyumu) November 12, 2022
トゥレンは
非常に美しい女性でした。
トゥレンが夫に選んだのは
となりの国の戦士でした。
騎士団長は
トゥレンの結婚に
きみょうな条件をつけました。
「トゥレンが不幸せそうなら
すぐこちらに返していただく」
というものでした。
1/4#いちにちわんケルト
『夜ふけに読みたい 数奇なアイルランドのおとぎ話』 長島真以於監修 加藤洋子、吉澤康子、和爾桃子訳 アーサー・ラッカム絵 平凡社
第四十四話
とある国で
— 妙遊 (@ginyumu) November 13, 2022
騎士が腕をきそう、
馬上槍試合がひらかれた。
試合に参加した
ランスロット卿とディナダン卿。
ディナダン卿は
ランスロット卿と仲が良い。
ディナダン卿は
まあまあ強い騎士ではあるが、
最強のランスロット卿には
かなわないていどの強さだった。
1/4#いちにちわんケルト
『アーサー王物語 3』トマス・マロリー著 井村君江訳 オーブリー・ビアズリー絵 筑摩書房
第四十五話
五人の王子がいた。
— 妙遊 (@ginyumu) November 14, 2022
ある日、五人の王子は
狩りにでかけた。
のどがかわいたので
ひとりの王子が
水をさがしにいった。
王子は
井戸をみつけたが、
井戸には
鬼婆の番人がいた。
吐き気がするような
醜いみための鬼婆だった。
1/4#いちにちわんケルト
『千の顔をもつ英雄 上』ジョゼフ・キャンベル著 平田武靖 浅輪幸夫 監訳 人文書院 p.137,138 p.240
Silva Gadelica STANDISH H. O'GRADY KESSINGER PUBLISHING p.370-373
第四十六話
人が
— 妙遊 (@ginyumu) November 15, 2022
いがみあい
ののしりあい
もめているのを見るのが大好き
そんなタチの悪い
毒舌のブリクリウという男。
あるとき
ブリクリウは
「最高の戦士はだれか」
そんな争いをおこすことにした。
主役は
我が国の戦士三人
英雄クー・フーリン
勝利のコナル
栄光のロイガレ#いちにちわんケルト
1/4
アイルランドの異教的伝承「ブリクリウの饗宴」①(¶1~7)〜終わりまで
https://note.com/p_pakira/n/n36e40efb0b
『炎の戦士クーフリン/黄金の騎士フィン・マックール』ローズマリー・サトクリフ 灰島かり・金原瑞人・久慈美貴訳 ちくま文庫
第四十七話
黄金の髪かがやく
— 妙遊 (@ginyumu) November 16, 2022
騎士団長フィンのおはなし。
ある日
フィンの前に
二人の妖精の姉妹があらわれた。
二人は言った。
「私たちは
あなたを愛しています」
姉妹の一人が言った。
「私の夫になる方は
けっして白髪になんて
なりはしないでしょう」
1/4#いちにちわんケルト
・The Feast at Conan's House
http://www.maryjones.us/ctexts/f12.html
"I will tell you the truth about that," said Fionn, "One day, as I chanced to be engaged〜の部分
・『アイルランドの神話伝説Ⅱ』 八住利雄編 名著普及会 p.59
こちらの本では微妙にバージョンが違いました。「アシインによって書かれた物語詩」ということでしたが、手元にあるのがシルバガデリカくらいのもので(シルバガデリカの索引で探したもののうまく見つからず)。原典がよくわからず。
もしこのお話(乙女が若返りさせてくれるバージョン)の原典ご存知の方がいらっしゃればコメントやメッセージなどでお教えいただければ幸いです。できれば英訳されたネットのページがありましたら助かります……!!
・『ケルト神話』池上正太著 新紀元社
こちらは若返りさせるのが姉妹のもう一人の方なので、さらに違いました。こちらのバージョンご存知の方もいらっしゃれば……!!
・・"A DICTIONARY OF Celtic Mythology"
JAMES MACKILLOP
OXFORD
Cuilenn及びCulann及びAine2の項
あと姉妹のパパのCuilennさん、鍛冶屋のクランがダーナの一族の神として現れていると書いてある(『アイルランドの神話伝説Ⅱ』)んですが、事典を調べるとクー・フーリンの名前の由来の鍛冶屋クランCulannさんとは別の項に載っていて、同一人物との指摘もなかったんですよね。ただAineの項になんかsmithと書いてあったのでCuilennさんは妖精王兼鍛冶屋な…の…か??クーさんのところのクランさんとは別なのか?一緒なのか?ようわからんのか?……謎です。論文とかご存じの方いらっしゃいましたらお教えいただければ幸いです。
第四十八話
アーサー王と円卓の騎士ご一行が
— 妙遊 (@ginyumu) November 17, 2022
マルク王の城に泊まった。
マルク王も妃も
アーサー王と円卓の騎士ご一行も
城の大広間に
ベッドを並べてご就寝。
さて、
円卓の騎士トリスタンと
マルク王の妃イゾルデは恋仲だった。
トリスタンは
イゾルデのところに忍んでいく。
1/4#いちにちわんケルト
『トリストラントとイザルデ』小竹澄栄訳 国書刊行会
第四十九話
デリの花
— 妙遊 (@ginyumu) November 18, 2022
バナディルの花
エルウァインの花
3つの花から
素晴らしい腕の魔法使い二人が
美しく香る乙女をつくった。
乙女の名は
ブロダイウェズ。
魔法使いたちは
「お前の夫だ」と、
ブロダイウェズに夫をあてがった。
恋も知らない
何も知らない
ブロダイウェズに。
1/4#いちにちわんケルト
『マビノギオン 中世ウェールズ幻想物語集』中野節子訳 JULA出版局
ブロダイウェズの解釈が素晴らしく、このお話に興味を持ったきっかけの中野節子先生の論文https://www.jstage.jst.go.jp/article/yeiwatandai/22/0/22_KJ00000727832/_article/-char/ja/
第五十話
アーサー王の騎士ガウェイン卿は
— 妙遊 (@ginyumu) November 19, 2022
王の生命とひきかえに
醜い妻ラグネルと
結婚した。
初夜。
口づけをもとめるラグネルに
口づけ以上のことをしようと
きめたガウェイン卿。
ふと
ふりかえると。
妻は
醜い妻から
美しい妻になっていた。
1/4#いちにちわんケルト
『試訳:中英語ロマンス The Wedding of Sir Gawain and Dame Ragnelle』玉川明日美 立教大学文学部英米文学科「立教レヴュー」第48号 St.Paul's English Review,No.48
第五十一話
かつて
— 妙遊 (@ginyumu) November 24, 2022
神々と魔族の
たたかいがあった。
魔族のうち
もっとも恐ろしいのは、
ひとにらみで即死する
邪眼の巨人、バロール。
邪眼は
生まれつきではなかった。
幼いバロールが
窓からふと見た、
魔術師たちが儀式をおこない
大釜がぐらぐら沸いているようす。
1/4#いちにちわんケルト
アイルランドの異教的伝承「マグ・トゥレドの戦い」⑩(¶121~¶138) ケルト神話翻訳マン https://note.com/p_pakira/n/n687dd0ab7726
『ケルト神話・伝承事典』木村正俊著 論創社
(バラルの項)
『神の文化史』白水社 編者 松村一男 平藤喜久子 山田仁史(バラルの項)
『アイルランドの神話伝説Ⅰ』八住利雄 名著普及会
第五十二話
ある冒険中。
— 妙遊 (@ginyumu) November 25, 2022
美しい城に
騎士ガウェインは
数日泊まることになった。
城主が言う。
「ガウェイン殿は城の中で休む。
私は城の外で狩りをする。
夜は双方、
その日に獲得した獲物を交換。
こういうお約束は
いかがですかな?」
ガウェイン卿は同意した。
1/4#いちにちわんケルト
『サー・ガウェインと緑の騎士』J.R.R.トールキン現代英語訳 山本史郎日本語重訳 原書房
『ガウェーンと緑の騎士』瀬谷廣一訳 木魂社
『ガウェイン卿と緑の騎士』菊池清明訳 春風社
第五十三話
レンスター王には
— 妙遊 (@ginyumu) November 26, 2022
ご自慢がふたつある。
ひとつめは
一年間宴を開けるほどの大きな豚。
ふたつめは
国土全土を守るほどの強い猟犬。
特に
猟犬は、
ほかの国からほしがられた。
特に
ほしがったのが、
アルスター国とコナハト国。
1/4#いちにちわんケルト
『ケルトの神話・伝説』フランク・ディレイニー著 鶴岡真弓訳 創元社
第五十四話
仲間をさがして
— 妙遊 (@ginyumu) November 27, 2022
崖をのぼった戦士ディルムッド。
崖のうえは
花咲く平原できもちよかった。
あるいていくと、
たちならぶ柱石の輪の
まんなかに井戸がある。
のどがかわいていた
ディルムッドは
水を飲もうとかがみこむ。
すると、
軍勢がこちらへ
やってくる音がした。
1/4#いちにちわんケルト
『ケルト魔法民話集』小辻梅子訳編 教養文庫
第五十五話
まったく眠らない王がいた。
— 妙遊 (@ginyumu) November 28, 2022
眠らないときは
だれかに物語をかたらせていた。
あるとき
ナントという土地にやってきた。
金細工師をよび、
物語をかたらせようとした。
金細工師は言う。
「なんにもお話できません。
ほとんどなにも知らないもので」
王は怒る。
1/4#いちにちわんケルト
『中世ブルターニュ妖精譚』関西古フランス語研究会
第五十六話
あるとき窓辺で
— 妙遊 (@ginyumu) November 29, 2022
アーサー王と王妃が語らっていた。
ふと
窓の外のテムズ河に
黒の船がながれてくる。
アーサー王が騎士に命ずる。
「見てまいれ」
騎士が報告する。
「船の中には
世にも美しい女性のなきがらが」
アーサー王は王妃の手をとり言う。
「見にゆこう」
1/4#いちにちわんケルト
『アーサー王の死 中世文学集Ⅰ』サー・トマス・マロリー著 厨川文夫・厨川圭子訳 ちくま文庫
第五十七話
攻めてくる敵にそなえ、
— 妙遊 (@ginyumu) November 30, 2022
勇将クフーリンが
味方をよぶ。
「血色よいカーバッドはどこだ
戦勝の長ドゥホマルはどこだ
りりしいフェルグスはどこだ」
フェルグスだけが来て、
悲しげに言った。
「カーバッドを葬りました。
ドゥホマルもうめてきました」
1/4#いちにちわんケルト
『オシァン(ケルト民族の古歌)』中村徳三郎訳 岩波文庫
第五十八話
あるとき
— 妙遊 (@ginyumu) December 1, 2022
フィアナ騎士団長フィンが
騎士団の皆を宴にまねいた。
前騎士団長のゴルが言う。
「不足のない、よい宴だな」
フィンが言う。
「そうだな。
だが……詩が足りない!」
詩人が
フィンの一族を讃える詩をうたう。
フィンは
詩人にたっぷり褒美をあたえた。
1/4#いちにちわんケルト
『夜ふけに読みたい神秘なアイルランドのおとぎ話』 長島真以於監修 加藤洋子+吉澤康子+和爾桃子編訳 アーサー・ラッカム挿絵 平凡社
第五十九話
獅子の騎士イウェインのもとへ、
— 妙遊 (@ginyumu) December 2, 2022
少女が駆けこんできた。
「わたくしの親友が
実の姉に財産を
すべて奪われようとしています。
そのため
かわりに戦ってくださる騎士を
おさがししていました。
しかし
わたくしの親友は
病気にたおれてしまいました。
1/4#いちにちわんケルト
『獅子の騎士 フランスのアーサー王物語』
クレティアン・ド・トロワ作 菊池淑子 平凡社
第六十話
騎士ガラハッドは
— 妙遊 (@ginyumu) December 3, 2022
聖杯をさがして
冒険をしていた。
あるとき
ふしぎな舟をみつけた。
帆も櫂もない。
誰もいるようにはみえない。
舟に乗りこむと
世界中のすべてのいい香りがした。
おなかがいっぱいになり、
すべてが手にはいったような心地。
「ようこそ、騎士殿」
1/4#いちにちわんケルト
『聖杯の探索』天沢退二郎訳 人文書院
第六十一話
騎士ボールス卿は
— 妙遊 (@ginyumu) December 4, 2022
ふたつの選択をせまられていた。
目の前のふたつの道に
助けをもとめる人がいる。
ひとつめの道には
兄のライオネル卿。
兄は、
両手を縛られ
馬に乗せられ、
二人の騎士に茨のムチで叩かれ、
血まみれになっている。
ふたつめの道には
みしらぬ乙女。
1/4#いちにちわんケルト
『聖杯の探索』天沢退二郎訳 人文書院
第六十二話
きらめく季節
— 妙遊 (@ginyumu) December 5, 2022
四月の朝。
サヨナキドリの
声を聴こうと、
円卓の騎士ロロワは
身なりをととのえ、
馬に乗り
森へと駆けてゆく。
すると
髪にリボンを編みこみ、
かぐわしい薔薇の花冠をかぶり、
白馬に乗った
美しい80人の乙女たちが見えた。
1/4#いちにちわんケルト
『中世ブルターニュ妖精譚』関西古フランス語研究会
第六十三話
湖の騎士ランスロットは
— 妙遊 (@ginyumu) December 6, 2022
愛しの姫にこんな話を聞いた。
「ある騎士が
森にはいったときに、
巨大な怖いドラゴンと
であったそうですわ。
ドラゴンは人語で
『キスをください』
と言うのだそう。
あなたは絶対に
ドラゴンのところへ
ゆかれませんように」
1/4#いちにちわんケルト
『湖の騎士ランツェレト』ウルリヒ・フォン・ツァツィクホーフェン著 平尾浩三邦訳・注釈・論考 同学社
第六十四話
騎士ベイリンは
— 妙遊 (@ginyumu) December 7, 2022
自分と弟が最強と思っていた。
しかし
アーサー王に軽々と負かされた。
騎士ベイリンは心を入れかえ
アーサー王宮廷で修行する。
アーサー王の宮廷では
アーサー王妃は気高く、
また、
騎士ランスロットが
最高の騎士とされていた。
1/4#いちにちわんケルト
『全訳 王の牧歌 十二巻』アルフレッド・ロード テニスン作 清水あや訳 ドルフィンプレス
第六十五話
生まれて三日で姿をけした
— 妙遊 (@ginyumu) December 8, 2022
マボンをさがす冒険に、
アーサーの家来、
カイとベドウィルたちが出発した。
むかしむかし
おおむかしから生きている、
動物たちに
マボンについてたずねてみる。
黒ツグミ、雄ジカ、
フクロウにワシ。
みんなマボンをしらなかった。
1/4#いちにちわんケルト
『マビノギオン中世ウェールズ幻想物語集』中野節子訳 JULA出版局
『ウェールズ語原典訳 マビノギオン』森野聡子編・訳 原書房
第六十六話
アーサー王妃と家令が
— 妙遊 (@ginyumu) December 9, 2022
敵にさらわれた。
王妃奪還にむかった
騎士ランスロット卿。
ランスロット卿は敵と戦い、
馬を殺される。
しかたなく
ランスロット卿は歩いてゆく。
そこへ
荷車をうごかす小人が言う。
「王妃がどうなったか
知りたければ荷車に乗れ」
1/4#いちにちわんケルト
『フランス中世文学集2 愛と剣と』訳 新倉俊一 神沢栄三 天沢退二郎 白水社
第六十七話
女は不幸でした。
— 妙遊 (@ginyumu) December 11, 2022
女は塔に
とじこめられていました。
女は罪は
なにもおかしていません。
ただ、夫が
嫉妬深かったのです。
女は若く美しく、
夫は年老いた富裕な領主でした。
嫉妬のために
自由をうばわれたのです。
女は毎日泣きました。
死をのぞむほどでした。
1/4#いちにちわんケルト
『中世ブルターニュ妖精譚』関西古フランス語研究会
私が参考にしましたのは↑ですが、入手困難ですので、入手しやすいものですと↓になります。
『十二の恋の物語 マリー・ド・フランスのレー』マリー・ド・フランス著 月村辰雄訳 岩波文庫
第六十八話
メーヴ女王が
— 妙遊 (@ginyumu) December 12, 2022
となりの国を攻めるとき。
ほかの三国からも
軍があつまった。
ずらりとあつまった四国連合軍。
ぐるりとみてきたメーヴ女王。
メーヴ女王は言う。
「ガレーイン族 3000人は
連れていきたくないわね」
夫が言う。
「なぜ
ガレーイン族を見下す?」
1/4#いちにちわんケルト
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン英訳 栩木伸明日本語訳 東京創元社
第六十九話
強者の島の王に
— 妙遊 (@ginyumu) December 13, 2022
エヴニシエンという弟がいた。
エヴニシエンは
争いをおこす天才だった。
ある日
エヴニシエンは馬をみにいった。
従者が言う。
「この馬は
御妹君と結婚された
アイルランド王のものです」
エヴニシエンは言った。
「俺はなにもきいていない!」
1/4#いちにちわんケルト
『マビノギオン 中世ウェールズ幻想物語集』中野節子訳 JULA出版局
『スィールの娘 マビノギオン物語2』エヴァンジェリン・ウォルトン著 田村美佐子訳 創元推理文庫
第七十話
あるとき。
— 妙遊 (@ginyumu) December 14, 2022
ガウェイン卿とケイ卿と司教が、
鹿を追いかけていたら迷子になった。
司教が言う。
「近くに城がある。
泊めてもらおう。
殺されかける
歓迎をうける城らしいが」
ケイが言う。
「そんなら城主をめったうちにして
泊まったらいい」
1/4#いちにちわんケルト
『パーシィ 古英詩拾遺 下巻』(「カーライルのカルル」より)境田進訳 開文社出版
『サー・ガウェンとカーライルの無骨城主』試訳 柴田良孝
東北學院大學論集. 英語英文学 = Tohoku Gakuin University review. Essays and studies in English language and literature (75), p1-37, 1984-11
東北学院大学学術研究会
二つのバージョンが微妙にことなるため、適宜どちらかから選択して採用しました。
第七十一話
騎士団長の妻となる
— 妙遊 (@ginyumu) December 15, 2022
グラーニャ王女は、
年老いた騎士団長と
結婚するのをいやがった。
騎士団の一員の
美しいディルムッドにグラーニャは、
呪いとも命令ともいえる
絶対に守らなければならない
禁忌ゲッシュを課した。
ゲッシュの内容は
「私をつれて逃げること」
1/4#いちにちわんケルト
『トリスタン伝説』佐藤輝夫 中央公論社p.64-70 ディルムッドのバラードは15世紀『リズモア司祭の書』から。バラードは1番4行で10番まで、この本に訳出されています。いちにちわんケルトにはごく一部をまとめて再構成してあります。「そなたはわたしを破滅に堕した おゝ グラーイネよ」というリフレインがずっと入っています。
第七十二話
アーサー王は雪の中
— 妙遊 (@ginyumu) December 16, 2022
とある騎士をさがすため、
円卓の騎士たちと旅にでていた。
天幕をはり
アーサー王は王妃と
すやすや眠っていたところ。
小姓が大声でさけんだ。
「侵入者!
侵入者がいます!」
王と王妃は
まだまだ熟睡中。
1/4#いちにちわんケルト
『パルチヴァール』ヴォルフラム・フォン・エッシェンバハ著 加倉井粛之 伊東泰治 馬場勝弥 小栗友一 共訳 郁文堂
すきっ腹の死者については↓
『アーサー王神話大事典』フィリップ・ヴァルテール著 渡邉浩司 渡邉裕美子 訳 原書房
第七十三話
王と美貌の王子コンラが
— 妙遊 (@ginyumu) December 17, 2022
丘に行ったときのこと。
不思議な衣装をまとう
美女があらわれコンラに言った。
「わたくしは
罪も死も労働も戦もない
宴たのしむ丘の民」
コンラが何もないところを
じっと見ているのに
王は気づく。
王は言う。
「誰かいるのか?」
1/4#いちにちわんケルト
ケルトの古歌『ブランの航海』序説―補遺 異界と海界の彼方 松村賢一著 中央大学出版部
第七十四話
アーサー王宮廷にて食事の直前、
— 妙遊 (@ginyumu) December 18, 2022
小姓が告げた。
「館の下の
水に浮いた岩に
豪華な剣が
刺さっております」
王と騎士たちが見にゆくと
剣の柄にこうある。
「我の所有者以外
抜いてはならぬ。
我を抜く者
世界一の騎士なり」
王は言う。
「ランスロットだな。
抜いてみよ」
1/4
『聖杯の探索』天沢退二郎訳 人文書院
第七十五話
フィアナ騎士団のみなが
— 妙遊 (@ginyumu) December 19, 2022
話し合いをしてるまっさいちゅう。
一本足で三本手の
ふしぎな生き物があらわれた。
騎士団長が問う。
「何者か?!
そして何用か!!」
その者は答えた。
「我はルーン。
我は鍛冶屋。
我は妖精の一族。
そなたたちに誓約を課す。
1/4#いちにちわんケルト
『アイルランド 自然・歴史・物語の旅』渡辺洋子著 三弥井書店
第七十六話
ブリテンの王女アンナは、
— 妙遊 (@ginyumu) December 20, 2022
ノルウェー王の甥ロットと恋をした。
結婚しないうちに
アンナは妊娠した。
アンナは病気のふりをして
こっそり子を産んだ。
金銀財宝たんまりと
身元を証明するものをそえて、
アンナは金持ちの商人に
赤子をゆだねた。
1/4#いちにちわんケルト
『中世ラテン騎士物語 アーサーの甥ガウェインの成長記』瀬谷幸男訳 論創者
第七十七話
かがやく美貌の女が、
— 妙遊 (@ginyumu) December 21, 2022
体格すぐれ
顔立ちは上品
空の虹のような
青年フェルデを好きになった。
女は夫に言った。
「あなたはくだらない人だから
わたしはここを出ていきます。
あなたの財産の牛を半分わけて」
そこで
牛の分配役に、
勇将クフーリンが指名された。
1/4#いちにちわんケルト
『オシァン(ケルト民族の古歌)』中村徳三郎訳 岩波書店 p.181-184
第七十八話
さらわれた
— 妙遊 (@ginyumu) December 22, 2022
アーサー王妃をとりもどす冒険
まっさいちゅうのランスロット卿。
とある乙女と
一緒に道をすすんでいた。
石段のところで
みごとな櫛(くし)をみつけた。
乙女がほしがったので、
ランスロットは櫛をひろいあげる。
1/4#いちにちわんケルト
『フランス中世文学集2 愛と剣と』訳 新倉俊一 神沢栄三 天沢退二郎 白水社
第七十九話
女王メーヴは
— 妙遊 (@ginyumu) December 23, 2022
これから大戦をおこす。
隣国アルスターを
攻めるのだ。
祭司に予言を聞きにいく。
祭司は、
メーヴ自身は
生きて大戦から帰還すると言った。
それだけ?
そう、それだけ。
女王メーヴは
帰る道すがら、
ひとりの女に出会った。
1/4#いちにちわんケルト
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン・訳 栩木伸明・日本語訳 東京創元社
第八十話
アーサー王の騎士ガウェイン卿は、
— 妙遊 (@ginyumu) December 24, 2022
新年の朝
「首に一撃を受ける」という、
約束をはたしに
約束の地をさがしていた。
約束したはいいが
約束の地「緑のチャペル」が
どこにあるかわからなかったのだ。
11月2日から
さがしにさがした、
12月24日
クリスマスイヴまで。
1/4#いちにちわんケルト
『サー・ガウェインと緑の騎士』J.R.R.トールキン現代英語訳 山本史郎日本語訳 原書房
第八十一話
ブリーンたち三兄弟は
— 妙遊 (@ginyumu) December 25, 2022
世界中の宝物をさがしていた。
おつぎの獲物は
海底の島フィンカラの
好戦的な女たちの焼き串。
フィンカラ島の女たちは
3かける50は150人。
女1人で
優秀な3人の戦士分も強いという。
ブリーンは
ウェットスーツを着て
水晶のヘルメットをかぶる。
1/4#いちにちわんケルト
『ケルト魔法民話集』小辻梅子訳編 現代教養文庫
第八十二話
ガウェイン卿は
— 妙遊 (@ginyumu) December 26, 2022
とじこもっていた。
ランスロット卿との不義の恋により
王妃の死刑が決まったからだ。
ガウェイン卿は
アーサー王に黙認せぬよう訴えた。
だが王は
ガウェイン卿の話を
聞いていなかった。
ガウェイン卿は
とじこもった。
王妃様の
死刑など見たくない。
1/4#いちにちわんケルト
『フランス中世文学集4 奇蹟と愛と』訳 新倉俊一 神沢栄三 天沢退二郎 白水社
第八十三話
フィアナ騎士団長フィンは
— 妙遊 (@ginyumu) December 27, 2022
狩猟犬のブランをつれて
巨人の国へやってきた。
巨人の国の王さまは
小さなフィンとブランを
愛玩動物のようにかわいがった。
王さまは言う。
「でっかい化物が
娘と結婚したがっていてな。
わしは毎晩そいつと
闘って追いかえしとる」
1/4#いちにちわんケルト
『ケルト幻想民話集』小辻梅子訳編 教養文庫
第八十四話
騎士であるトリスタン卿は
— 妙遊 (@ginyumu) December 28, 2022
ライバルの騎士のパロミデス卿と、
ある墓の前で
決闘をする約束をした。
その墓が
いわくつきの場所だった。
かの高名な予言者マーリンが、
こう予言したのである。
「アーサー王の御代に
最も優れた騎士である二人、
1/4#いちにちわんケルト
『アーサー王物語 Ⅲ』トマス・マロリー著 井村君江訳 オーブリー・ビアズリー絵 筑摩書房
第八十五話
騎士になりたてのガウェイン卿に
— 妙遊 (@ginyumu) January 4, 2023
白い鹿をつかまえよ、と
王命がくだった。
ガウェイン卿は
弟を従者として冒険へ。
ガウェイン卿は3匹の犬に
白い鹿を追わせる。
犬たちは鹿をとある城に追いこみ、
殺してしまった。
城にいた騎士が言う。
「よくも俺の大事な鹿を!」
1/4#いちにちわんケルト
『アーサー王物語 Ⅰ』トマス・マロリー著 オーブリー・ビアズリー絵 井村君江訳 筑摩書房
第八十六話
夏もちかづくぬくいとき
— 妙遊 (@ginyumu) January 5, 2023
騎士ランスロット卿は、
いとこの騎士と
冒険にでた。
ぽかぽかしてねむくなり
大きなりんごの木が見えたので、
ランスロット卿は
お昼寝することにした。
ぽかぽかぐっすり
ランスロット卿はねむりこんだ。
1/4#いちにちわんケルト
『アーサー王物語』ジェイムズ・ノウルズ作 金原瑞人編訳 佐竹美保絵 偕成社文庫p.132-p.139
第八十七話
「強き者の島」と隣国が戦争をした。
— 妙遊 (@ginyumu) January 6, 2023
「強き者の島」は勝利した。
しかし生きのこれるほど
元気な男は七人だけ。
「強き者の島」の王様は
毒槍できずつけられて虫の息。
虫の息の王様は
七人の男にこう言った。
1/4#いちにちわんケルト
『マビノギオン 中世ウェールズ幻想物語集』中野節子訳 JULA出版局
『ウェールズ語原典訳 マビノギオン』森野聡子編・訳 原書房
第八十八話
王が戦死した。
— 妙遊 (@ginyumu) January 7, 2023
勝利した王の甥が
つぎの玉座についた。
前王の子を
みごもっていた女性は逃げた。
女性は
ケシュの洞窟近くの
井戸のそばで馬車を止めた。
そして女性は
男の子を産んだ。
女性はつかれて
ねむりこんだ。
めざめたとき、
男の子は姿を消していた。
1/4#いちにちわんケルト
『絶滅したオオカミの物語 イギリス・アイルランド・日本』志村真幸・渡辺洋子著 三弥井書店
第八十九話
アーサー王妃がさらわれ、
— 妙遊 (@ginyumu) January 8, 2023
敵のメレアガン王子のもとに
囚われていたときのおはなし。
朝、
メレアガン王子は
アーサー王妃のところにやってきた。
なぜか王妃のベッドのシーツが
血にぬれていた。
メレアガン王子は
血眼になり原因をさがした。
1/4#いちにちわんケルト
『フランス中世文学集2 愛と剣と』訳新倉俊一 神沢栄三 天沢退二郎 白水社(クレチアン・ド・トロワ作「ランスロまたは荷車の騎士」より)
第九十話
7つの地を治める領主プイスに
— 妙遊 (@ginyumu) January 9, 2023
待望の息子が生まれた。
領主の奥方リアンノンは
つかれてぐっすり眠っていた。
お世話役の6人の侍女も
真夜中みんな眠りこんでしまう。
雄鶏が鳴いて侍女たちがめざめると
なんと息子の姿は消えていた。
1/4#いちにちわんケルト
『マビノギオン 中世ウェールズ幻想物語集』中野節子訳 JULA出版局
第九十一話
ご主人様は角笛をふく。
— 妙遊 (@ginyumu) January 10, 2023
猟犬たちがあつまってくる。
でもご主人様ご自慢の
優秀な猟犬ゲラートはこなかった。
いつも
元気にはしってくるのに。
その日は
獲物はなんにもとれなかった。
ご主人様はご立腹。
それもこれもゲラートのせいだ!
1/4#いちにちわんケルト
ウィリアム・ロバート・スペンサー、山中光義訳「猟犬ベス・ギーラットの墓」英国バラッド詩アーカイブ
2023.1.10参照
https://literaryballadarchive.com/ja/27-balladists-s-u/134-william-robert-spencer-1769-1834.html
第九十二話
アーサー王は
— 妙遊 (@ginyumu) January 11, 2023
ある日の狩猟から後、
ずっと落ちこんでいました。
アーサー王に忠実な
ガウェイン卿はたずねました。
「御身を心配しております。
陛下、なにがあったのですか」
アーサー王は言いました。
「やさしいガウェインよ。
あの狩猟の日のことだ。
1/4#いちにちわんケルト
「試訳:中英語ロマンス The Wedding of Sir Gawain and Dame Ragnelle」玉川明日美
立教大学文学部英米文学科「立教レヴュー」第48号
第九十三話
英雄クー・フーリンが
— 妙遊 (@ginyumu) January 12, 2023
メーヴ女王ひきいる軍勢と戦い、
毎日一人の戦士と
決闘していたころのこと。
クー・フーリンと親しい
ルギズという男が、
翌日の対戦相手を
告げにきた。
「あしたの君の対戦相手は
馬鹿でいばってて乱暴な奴。
ラーリーネという男だ。
1/4#いちにちわんケルト
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン英訳 栩木伸明邦訳 東京創元社 p.126-127
第九十四話
それは婚礼の宴の時。
— 妙遊 (@ginyumu) January 13, 2023
アルスター国の王妹にして
今日の婚礼の花嫁デヒティレは、
カゲロウ入りのワインを
飲みほした。
デヒティレは
五十人の侍女をつれて、
ひだまりの広間へゆき
まどろんだ。
デヒティレの夢に
光の神ルグがあらわれ言う。
「あのカゲロウは私だ。
1/4#いちにちわんケルト
『ムルセヴネのクーフーリンVOL.1』原作グレゴリー夫人 翻訳ケイロカミオカ 絵zen kindle
別バージョン
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン英訳 栩木伸明邦訳 東京創元社
第九十五話
ランスロット卿の元に
— 妙遊 (@ginyumu) January 14, 2023
手紙が届いた。
ランスロット卿は
元アーサー王の円卓の騎士だ。
アーサー王の王妃と恋に落ち
それを糾弾され、
ランスロット卿は
円卓の騎士たちを多数
殺すことになってしまった。
問題は
ガウェイン卿の弟ガレスまで
殺してしまったこと。
1/4#いちにちわんケルト
『アーサー王物語 5』トマス・マロリー著 井村君江訳 オーブリー・ビアズリー絵 筑摩書房
『アーサー王の死』サー・トマス・マロリー著 厨川文夫・厨川圭子訳 ちくま文庫
第九十六話
海を渡ったフランスで
— 妙遊 (@ginyumu) January 15, 2023
ランスロット卿と戦をしていた
アーサー王の元に知らせが届いた。
"留守居のモードレッド卿が叛逆。『アーサー王はランスロットとの戦で死んだ』と嘘をばらまき、自分が王位についた。結婚を迫られた王妃は拒絶して、ロンドン塔に立て籠り。"
1/4#いちにちわんケルト
『アーサー王の死』サー・トマス・マロリー著 厨川文夫・厨川圭子訳 ちくま文庫
第九十七話
アーサー王の軍勢と、アーサー王に叛逆したモードレッド卿の軍勢がぶつかった。
— 妙遊 (@ginyumu) January 16, 2023
戦いのはてに
死体の山が築かれた。
生き残ったのは、アーサー王側はアーサー王とルーカンとベディヴィアの三人。
モードレッド側はモードレッドのみ。#いちにちわんケルト
1/4
『アーサー王の死』サー・トマス・マロリー著 厨川文夫・厨川圭子訳 ちくま文庫
第九十八話
クー・フーリンは
— 妙遊 (@ginyumu) January 17, 2023
アルスター国の戦士。
フェルディアは
コナハト国の戦士だった。
ふたりは共に
女戦士スカサハのもとで修行した、
とても
仲の良い
兄弟弟子だった。
しかしアルスターとコナハトは
戦争になり、
二人は
決闘することになった。
1/4#いちにちわんケルト
『トーイン クアルンゲの牛捕り』キアラン・カーソン英訳 栩木伸明日本語訳 東京創元社
第九十九話
アルスター国とコナハト国が戦い、
— 妙遊 (@ginyumu) January 18, 2023
アルスター国が勝利した。
見事にアルスター国を守った
戦士クー・フーリンを、
敗北したコナハト国の女王メーヴは
許しはしなかった。
クー・フーリンに
親兄弟を殺された者たちに、
クー・フーリンに復讐せよと
けしかけた。#いちにちわんケルト
1/4
『図説ケルト神話物語』イアン・ツァイセック著 山本史郎・山本泰子訳 原書房
『ムルセヴネのクーフーリンVOL.5』原作グレゴリー夫人 翻訳ケイロカミオカ 絵zen 監修ケルト神話翻訳マン kindle
第百話
騎士をめざす若者ガレスと
— 妙遊 (@ginyumu) January 19, 2023
従者の二人は、
アーサー王の都キャメロットの城の
すそに広がる平原に立つ。
はるか彼方のキャメロットに
銀色の朝霧がかかる。
王城建つ山に
煙が巻きあがった。
高き城市の
頂点がきらきらと輝き閃く。
尖塔や小塔が
靄を突いて姿を現す。
1/4#いちにちわんケルト
『全訳 王の牧歌 十二巻』アルフレッド・ロード テニスン作 清水あや訳 ドルフィンプレス
第百一話
神の一族といわれるダーナの一族。
— 妙遊 (@ginyumu) January 20, 2023
ダーナの一族の魔法を
打ちやぶったのは、
ミレシアンの一族の
詩人アマーギン。
詩人アマーギンが
アイルランドの地におりたったとき、
作った詩がある。
「わたしは海をわたる風。
わたしは大海の波。
わたしは波のささやき。
1/4#いちにちわんケルト
アマーギンの詩については↓
『アイルランドの神話伝説〔Ⅰ〕世界神話伝説大系40』名著普及会
四つの町と財については↓のふたつを参考にしました。
『ケルトの神話』井村君江著 ちくま文庫
『A DICTINNARY OF Celtic Mythology』JAMES MACKILLOP OXFORD UNIVERSITY PRESS
浮き沈みはげしき吟遊詩人稼業を続けるのは至難の業。今生きてるだけでもこれ奇跡のようなもの。どうか応援の投げ銭をくださいませ。ささ、どうぞ(帽子をさし出す)