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Record.11 二人目のドリームマスター

プロローグ~お話を読む前に~



21歳。桜の夢をまた見た。

細くて綺麗な川。小高い緑の土手。

小さな橋がかかっていて、向こう側は桜の木が沢山並んでいて満開に咲いている。

下は桜の花びらで敷き詰められている。

とても綺麗だけど、そこでとても悲しい事件があったのが分かる。

でも気にならないくらい、『あの夢と同じ場所だー!』とはしゃぐ私。

橋の向こう側に、男の人が一人立っていた。

そんな夢だった。

⚫意識の狭間で逢う


四ツ井さんのお別れを惜しむ間もなく、森さんのバンドに出会って衝撃を受けたその時期から、四ツ井さんの代わりかのように森さんが度々夢に現れるようになっていた。

長くて説明しずらい個性的な内容ばかりだった。

雪が積もる中、浮き世離れした人達に追いかけられ、二人で逃げる夢とか……。

最初は森さんのバンドにかなり影響を受けていたので、それで夢に出るんだろうと思っていた。

だけどそれは序章で、森さんが本格的に夢に現れ始めたのは22歳から。

四ツ井さんの時とはまるで違う体験を、ある日した。


夜、寝ようと目を閉じた。

ちょっとしないくらいの間、眠りに落ちる時の感覚が一切ない状態の時。

気づいたら私は土手にいて、木の下で男の人と話していた。

前からずっと話してるみたいに、話の途中から始まった。

『………でさ、………だよねぇ………』

ハハハハ、と談笑していて、男の人が私にこう言った。

『遠い遠いって言うけどさ、こんなに近くにいるのにね。ここじゃいつも近くにいるのになんで忘れちゃうのかねぇ』



私は『いや、本当にそうだよね!』そう言った。

自分で言ってて、この人と会って話しているのが当たり前だという感覚。

いつもここにいて私たち話してる。

だから、忘れてしまうのを二人でめっちゃ不思議がった。


『でも何でか戻ったら、やっぱり遠いって思っちゃうんだよねぇ。忘れちゃうんだよ。不思議よね~』


と、しみじみ言ってる自分の意識から、

突然視界が引き始めて、トンネルの向こうにその自分を置いたまま、逆再生みたいにどこかに引き戻された。

気付いたら、布団の上で『はっ!(゜ロ゜)』となる。

あれ?わたし今寝てないよ?

なんだ今の?!意識めっちゃハッキリあった!!

男の人とめっちゃ話してた!!あの人…………森さんやった………!!

わたし、毎日会っとるわ!!

………………???

ところが、意識がこちらにハッキリフォーカスするにつれ感覚が速攻ぼやけた。

いや、夢だな。うん、森さんと知り合いじゃないし、遠いし。

そう思い直して、寝たのだった。


⚫ライブの夢



その次の日にも、森さんは夢に出て来た。

私は、宙に浮いて森さんのライブを見ていた。

そして、ギターを弾いてる森さんになろうとしていた。

時々、森さんの目から客席を見ていた。

お客さんがなぜか『生徒』という認識だった。

生徒たちは大事な事を忘れている。

帰ろうとしている人。

意識が変わろうとしている人。

森さんを見ている自分。

自分が森さんになっててギターを弾いて、皆の意識を変えてやる!と思ってる。


ステージに立つ森さんが見ている人達に向かって『お日様掴まえようぜ!!』と、叫ぶのを私は宙に浮いてそれを見てる。

そして、森さんの覚醒した眼光の目の中を見ている。

ふっと客席の方を見て何かに目を奪われて笑った森さん。

森さんの視線を辿り、客席を見ると、

そこには『私』がいた。

そこで私は目が覚めたのだった。

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