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詩)ヒゲ剃り〜馬鹿な息子を許してくれ、親父

風呂場でヒゲを剃ると
気持ちよさそうに目を閉じ
鼻の下を丸めていた親父

風呂って
いいよなあ
最近 つくづく思う 一人でいられる時間
もう少しゆっくり入りたかったよな 親父
今にして 思う

なんの映画だかは忘れたけれど 昔の映画で
ゾリゾリと男同志ででヒゲを剃り合うシーンがあった。お互いじっくりと ゆっくり ゆっくり剃るんだ。 

人生って、なんてせっかちなんだろう
急いで大きくなろうとして 急いで食べて 悲しいくらい働いて 急いで 急いで生きて
なにもかも急いで 結論ばっかり追いかけて

風呂で真っ直ぐ足をのばして
気持ちよさそうに目を閉じていた親父
あの時は おいおい寝たらダメだって
引きあげてしまったなあ
もう少し ほんの少しでも
ゆっくり入らせてあげればよかった 
今頃 そう思う 
なんて性急で馬鹿な息子だったんだろう。
ごめん

馬鹿な息子を 許してください

親父 あの世の風呂が狭くてイヤなら 一度くらい 我が家の風呂に入りに来てくれ

その時はもう少しゆっくり風呂にも入れて
ゆっくりゆっくりヒゲ剃って
ゆっくりゆっくり背中流して やるよ

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