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詩)親父の命日《ルビ付》

かぶと被りかぶり 新聞紙の刀しんぶんしのかたな
弟と二人で斬将八落ちゃんばらごっこ
親父が写真かめらで追いかける
僕らはそれこそ ふりちんで燥ぐはしゃぐ

凧揚げたこあげといえば のり長い脚ながいあしをつけ
親父が走って手を放す
ふらふらと凧はさ迷いたこはさまよい
とんとんと 角を引きずりかどをひきずりあらら 糸こん絡がるこんがらがる
親父 糸解すいとほぐす
またやり直し

少し大きくなって 自転車に乗る為じてんしゃにのるため
親父は補助輪を外しほじょりんをはずし 後ろで押さえてるからな
そう言って手を離した
蹌踉よろよろ 八の字を描いて ばたんと空に舞いくうにまい
親父は挫いた肘をくじいたひじを摩ってさすってくれた

ついて回る弟 あっちこっちの草っ原くさっぱらで 呼ばれるまで秘密基地ひみつのかくれがだの 
なんだの
男は野球だ 親父に野球手袋ぐろーぶを買ってもらって 飽きることもなく 毎日 キャッチボール
巨人 大鵬 卵焼ききょじんたいほうたまごやき
巨人の星の星飛雄馬きょじんのほしのほしひゅうまじゃないけれど

札幌麦酒さっぽろびいる大瓶おおびん上州屋じょうしゅうやさんにケースで配達してもらい
煙草たばこはハイライト テレビは野球
台風が来ると言えば 物置ものおきとびら打ち付けて補修しうちつけてほしゅうし
九州へふるさと帰る時は一人で運転し

親父は親父らしかった
家族の真ん中で 
俺は遂に親父らしくはなれなかった

僕ら兄弟がはしゃぎ回っていた頃
若い親父はどんなにか楽しかったんだろう

今日は親父の命日






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